【ことわざ】
学問に王道なし
【読み方】
がくもんにおうどうなし
【意味】
学問を身につけるのに安易な近道はなく、だれであっても必要な過程を一つずつ経なければならないということ。


【英語】
・There is no royal road to learning.(学問に近道はない)
【類義語】
・幾何学に王道なし(きかがくにおうどうなし)
「学問に王道なし」の語源・由来
「学問に王道なし」は、古代ギリシャの数学者エウクレイデス、すなわちユークリッドにまつわる話に由来することわざです。王であっても、学問を楽に身につける特別な道はなく、順を追って学ぶほかないという考えを表します。
この話のもとになった形は、「幾何学に王道なし」という言い方です。ここでいう「幾何学」は、図形や空間の性質を筋道立てて学ぶ数学の分野を指し、ユークリッドの代表的な著作『原論』と深く結びついています。
ユークリッドは、紀元前4〜3世紀ごろの古代ギリシャの数学者で、エジプトのアレキサンドリアで活動した人物として伝わります。古い伝承では、エジプトを治めたプトレマイオス1世の時代に生き、アレキサンドリアにおける数学の学びを支えた人物として語られています。
『原論』は、幾何学を中心にした数学の内容を体系的にまとめた書物です。定義、公理、命題を順に積み重ねていく構成をもち、学ぶ者が一段ずつ筋道をたどるように作られています。
このことわざの背景には、プトレマイオス王がユークリッドに、幾何学をもっと簡単に学ぶ方法はないかと尋ねたという話があります。ユークリッドはそれに対して、幾何学には王のための特別な道はない、という趣旨で答えたと伝わります。
この話を伝える重要な古い文献として、5世紀の哲学者プロクルスが『原論』に付けた注釈があります。そこには、プトレマイオスが『原論』を学ぶより容易な道はないかと尋ね、ユークリッドが「幾何学に王道なし」と答えたという趣旨の話が出てきます。
「王道」という言葉は、日本語では「正しい道」「すぐれた定石」という意味で使われることもあります。しかし、このことわざの「王道」は、王だけが通れる平らで特別な道、つまり特権によって苦労を避ける安易な道という意味合いで使われています。
そのため、「学問に王道なし」は、学問の世界では身分や権力があっても学ぶ過程を飛ばせない、という点に大切な意味があります。王であっても、庶民であっても、理解するには基礎から積み重ねなければなりません。
英語では、同じ考えを There is no royal road to learning. と表します。英語の古い成句集にも、ユークリッドがアレキサンドリアで数学を教え、プトレマイオス王に対して「学びに王道はない」と答えた話として載ります。
日本語では、もとの「幾何学に王道なし」から、学問全体に広げた「学問に王道なし」という形で定着しました。幾何学だけでなく、語学、歴史、理科、技術、芸術など、どの分野でも基礎と努力を避けて本当の力を得ることはできない、という教えとして使われます。
現在では、「経営に王道なし」「ダイエットに王道なし」のように、学問以外の分野にも広げて使うことがあります。ただし、基本の意味は、簡単な抜け道を探すよりも、必要な手順を一つずつ積み重ねることが大切だというところにあります。
「学問に王道なし」の使い方




「学問に王道なし」の例文
- 受験勉強では、要点だけを丸暗記しても応用力はつかず、学問に王道なしを実感する。
- 語学の上達には毎日の音読と復習が欠かせず、学問に王道なしという言葉がよく当てはまる。
- 研究者は失敗を重ねながら実験を続け、学問に王道なしの姿勢で成果に近づいた。
- 数学の公式を使いこなすには意味を理解する必要があり、学問に王道なしを忘れてはならない。
- 短期間で楽に成績を上げようとしても限界があり、学問に王道なしという教えに立ち返るべきだ。
- 先生は、基礎を飛ばして難問だけを解こうとする生徒に、学問に王道なしと諭した。
主な参考文献
・円満字二郎編『 故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・小学館国語辞典編集部編『デジタル大辞泉』小学館。
・E. Cobham Brewer, Dictionary of Phrase and Fable, 1894.
・Proclus『ユークリッド『原論』第一巻注釈』5世紀。























