【ことわざ】
蛙は口から呑まるる
【読み方】
かえるはくちからのまるる
【意味】
余計なことを言ったために、自分で災いを招くことのたとえ。


【類義語】
・口は禍の門(くちはわざわいのかど)
「蛙は口から呑まるる」の語源・由来
このことわざは、蛙が鳴くと、その声によって居場所を知られ、蛇に呑まれてしまうという姿をもとにしています。人の場合も、黙っていれば起こらなかった災いを、余計な発言によって自ら招くことがあります。そのため、蛙の「口」は鳴き声を出す口であると同時に、人の不用意な言葉を表すものとなりました。
古い記録としては、俳諧(はいかい)の書『毛吹草(けふきぐさ)』(寛永15年〔1638〕序・江戸時代前期、松江重頼編)に、このことわざが収められています。『毛吹草』は七巻五冊からなる書物で、ことわざや当時の言い回しを伝える資料でもあり、「蛙は口から呑まるる」は、江戸時代の早い時期にはすでに、言葉を慎む戒めとして扱われていたことが分かります。
その後、『御前義経記(ごぜんぎけいき)』(元禄13年〔1700〕刊・江戸時代前期、西沢一風作)には、「蛙(カハヅ)は口ゆゑ蛇にのまるる」とあります。「蛙」を「かはづ」と読み、「口から」を「口ゆゑ」と言い換え、さらに「蛇に」と相手を明らかにした形です。蛙が鳴くことを原因として蛇に呑まれるという、ことわざのもとの場面が、はっきりと示されています。
ここでいう「口ゆゑ」は、蛙にとっては鳴き声を出したために危険を招くことを表します。しかし、人に当てはめれば、言わなくてもよいことを言ったために、自分の立場を悪くしたり、思いがけない災難にあったりすることを表します。具体的な動物の姿から、人の言葉づかいを戒める意味へと移して用いるところに、このことわざの分かりやすさがあります。
江戸時代後期になると、十返舎一九の洒落本(しゃれぼん)『素見数子(ひやかしかずのこ)』(享和2年〔1802〕序)に、「言(いは)ずともよいことを放言(しゃべり)過し〈略〉、ほんの蛙(カイル)はくちからと」とあります。言わなくてもよいことをしゃべりすぎた人物に対して、「蛙は口から」と短く言うだけで、その失敗の意味が通じる場面です。
この用例では、「蛇に呑まれる」という後半をすべて言わず、「蛙は口から」と縮めた形で使っています。それでも、余計な発言がわざわいを呼ぶという意味が伝わっているため、このころには、ことわざの教えが広く理解されていたことがうかがえます。
「蛙は口から呑まるる」には、「蛙は口ゆえ蛇に呑まるる」「蛙は口から蛇に呑まるる」「蛙は口から」といった形もあります。「呑まるる」は、現在の言い方では「呑まれる」に当たります。形に多少の違いはあっても、鳴いた蛙が身の危険を招く姿に重ねて、余計な言葉は自分を苦しめるもとになると戒める意味は変わりません。
「蛙は口から呑まるる」の使い方




「蛙は口から呑まるる」の例文
- 友だちの秘密を軽々しく話して信用を失った彼は、蛙は口から呑まるるという言葉を身にしみて知った。
- 驚かせるはずの誕生日会を自分で漏らしてしまい、蛙は口から呑まるるの結果となった。
- 未発表の計画を会議の前に話して問題を起こすとは、まさに蛙は口から呑まるるである。
- 家族の内緒話を近所で口にして騒ぎになり、母は蛙は口から呑まるるだと弟を戒めた。
- 軽い冗談のつもりで人を傷つけ、謝ることになった彼女は、蛙は口から呑まるるを思い出した。
- 不用意な一言が交渉をこじらせたため、担当者は蛙は口から呑まるるを教訓として胸に刻んだ。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』全3巻、小学館、2005〜2006年。
・現代言語研究会著『日本語を使いさばく 故事ことわざの辞典』あすとろ出版、2007年。
・松江重頼編『毛吹草』寛永15年(1638)序。
・西沢一風『御前義経記』元禄13年(1700)刊。
・十返舎一九『素見数子』享和2年(1802)序。























