【ことわざ】
石臼を箸に刺す
【読み方】
いしうすをはしにさす
【意味】
不可能な無理難題を言うこと。また、できるはずのないことを求めて、相手を困らせること。


【英語】
・ask the impossible(不可能なことを求める)
・make an unreasonable demand(無理な要求をする)
・demand the impossible(実現不可能なことを要求する)
【類義語】
・石臼を田楽(いしうすをでんがく)
・石臼を楊枝に刺す(いしうすをようじにさす)
・豆腐を藁でつなぐ(とうふをわらでつなぐ)
・無理難題(むりなんだい)
【対義語】
・道理にかなう(どうりにかなう)
・理にかなう(りにかなう)
・分相応(ぶんそうおう)
「石臼を箸に刺す」の語源・由来
「石臼を箸に刺す」は、石でできた重く硬い臼を、細い箸で突き通すことはできない、という具体的な不可能さから生まれたことわざです。
石臼は、穀物や豆などをすりつぶすために使われた石の道具です。日常生活に身近でありながら、重くて硬いものの代表として思い浮かべやすい存在でした。
一方、箸は食べ物をつまむための細い道具です。石を突き通すための道具ではなく、石臼に向けても役に立ちません。
この「硬く重い石臼」と「細く弱い箸」の取り合わせによって、無理なことが一目で分かるたとえになっています。説明を長くしなくても、聞いた人が「それはできない」とすぐ感じられるところに、このことわざの強さがあります。
古い用例としては、江戸時代中期の雑俳集『軽口頓作/家の風』(1709年・宝永6年刊、雲鼓編)に関わる形が知られています。この書は俳諧に属する雑俳の本で、ことわざ的な言い回しや当時の口語表現を知る手がかりになります。
そこには、「何成と石臼箸にさすが親」という形の実例が伝わっています。これは、親が子に対して、何であれ無理なことを言い出す、という調子の一句として読むことができます。
この古い用例では、現在の表記に見られる「を」「に」がすべて整った形ではなく、「石臼箸にさす」というつながりで出てきます。口に出して分かりやすい雑俳の中で、無理を言うことのたとえとしてすでに使われていたことが分かります。
「石臼を箸に刺す」という形では、「石臼を箸で刺す」と言い換えて理解できます。「に」は、現代語の感覚では少し古風ですが、ここでは箸を手段として石臼を刺そうとする、という意味に受け取ると分かりやすくなります。
同じ発想をもつ表現に、「石臼を楊枝に刺す」「石臼を田楽」などがあります。楊枝や田楽串のような細いものでは石臼を刺せないため、どれも不可能な要求を言うたとえとして近い意味を持ちます。
また、「豆腐を藁でつなぐ」も近い言い方です。やわらかい豆腐を藁でしっかり結びつけることが難しいように、性質から考えて成り立ちにくいことを表します。
このことわざが表すのは、単に「難しいこと」ではありません。努力すればできる課題ではなく、道具、条件、相手の力から見て、最初から実現の見込みがない要求です。
そのため、使う場面では、相手を責めすぎないよう注意が必要です。冗談めかして「それは石臼を箸に刺すようなものだ」と言うこともできますが、本来は、無理な要求やだだをこねる態度を戒める言葉です。
現在では、仕事、学校、家庭、友人関係などで、どう考えてもできないことを求められたときに使われます。身近な道具の対比から、無理難題の理不尽さを分かりやすく言い表すことわざです。
「石臼を箸に刺す」の使い方




「石臼を箸に刺す」の例文
- 明日の式までに一人で体育館全体の飾りを作れというのは、石臼を箸に刺すような話だ。
- 三日で十年分の会計資料をすべて点検しろとは、石臼を箸に刺す無理難題だ。
- まだ習っていない漢字ばかりの古文を小学生に全部訳させるのは、石臼を箸に刺すような要求だ。
- 一人暮らしの祖母に大きな家具を一日で全部動かせというのは、石臼を箸に刺すに等しい。
- 予算も人手もないのに町の祭りを例年どおり開けと言われ、担当者は石臼を箸に刺すような思いをした。
- 壊れたパソコンから消えたデータを何の記録もなしに完全に戻せと言うのは、石臼を箸に刺すようなものだ。























