【ことわざ】
いつも柳の下に泥鰌は居らぬ
【読み方】
いつもやなぎのしたにどじょうはおらぬ
【意味】
一度うまくいったからといって、同じ場所や同じ方法で、また同じように幸運を得られるとは限らないというたとえ。


【英語】
・There are no birds in last year’s nest(去年の巣に鳥はいない)
【類義語】
・柳の下にいつも泥鰌はいない(やなぎのしたにいつもどじょうはいない)
・二匹目の泥鰌(にひきめのどじょう)
・株を守りて兎を待つ(かぶをまもりてうさぎをまつ)
・朔日ごとに餅は食えぬ(ついたちごとにもちはくえぬ)
【対義語】
・一度ある事は二度ある(いちどあることはにどある)
・二度あることは三度ある(にどあることはさんどある)
「いつも柳の下に泥鰌は居らぬ」の語源・由来
このことわざは、柳の木の下で一度泥鰌を捕まえたからといって、そこにいつも泥鰌がいるとは限らない、という身近なたとえから成り立っています。川べりの柳、泥の中にすむ泥鰌、たまたま得た獲物という組み合わせによって、「偶然の幸運を、毎回くり返せるものと思うな」という戒めを表します。
言い回しとしては、「柳の下にいつも泥鰌はおらぬ」「柳の下にいつも泥鰌はいない」「いつも柳の下に泥鰌は居らぬ」などの形があります。語順や文末は少し違っても、どれも、一度成功した場所や方法をそのまま当てにしてはいけない、という意味を共有しています。
この表現のもとにある発想は、生活の経験に根ざしています。泥鰌は水田や小川、泥のある場所にすむ魚ですが、同じ柳の下に必ずいると決まっているわけではありません。そこで、「前にここで捕れたから、また捕れるはずだ」と考える人の甘さを、だれにも分かりやすい風景で表したのです。
近い形の用例として、『文学の根本問題』(1958〜1959年、中島健蔵著)には、「いつも柳の下にどじょうはいないから」という表現が出てきます。ここでは、一度得られたものをまた同じように得ようとして、むやみに文学をあさるようになるかもしれない、という文脈で使われています。
また、『にんげん望遠鏡』(1979年、森繁久弥著)には、「柳の下にどじょうは二匹はいなかった」という形が出てきます。一つの歌が評判になったあと、同じようにいくつも作詞をしてみたものの、同じ成功は続かなかったという文脈で用いられ、現在の意味とよく重なります。
「二匹目の泥鰌」という言い方も、このことわざと結びついています。「二匹目の泥鰌」は、「柳の下にいつも泥鰌は居ない」から生まれた言い方で、他人の成功した行為や作品をまねることを指します。一度うまくいった型をまねても、同じ成果が得られるとは限らない、という考えが、短い別表現として広がったものです。
中国古典に由来する「株を守りて兎を待つ」とも、意味の方向が近くなっています。『韓非子』五蠹に出てくる話では、宋の農夫が、切り株にぶつかって死んだ兎を偶然手に入れたあと、畑を耕すのをやめ、また兎が来るのを待ち続けます。しかし兎は手に入らず、農夫は笑い者になります。これは「いつも柳の下に泥鰌は居らぬ」と同じく、偶然の成功を必然のように思いこむ危うさを示しています。
現在では、このことわざは、仕事、商売、勉強、創作、勝負ごとなど、広い場面で用いられます。一度の成功を大切な経験として学ぶことは必要ですが、そのまま同じ方法をくり返すだけでは十分ではありません。状況を見直し、新しい工夫を加えるべきだという教訓が、「いつも柳の下に泥鰌は居らぬ」という言葉に込められています。
「いつも柳の下に泥鰌は居らぬ」の使い方




「いつも柳の下に泥鰌は居らぬ」の例文
- 前回の企画が偶然当たったからといって、同じ内容をくり返すのは、いつも柳の下に泥鰌は居らぬというものだ。
- 一度テストで山が当たったからといって勉強をしないのは、いつも柳の下に泥鰌は居らぬを忘れた考えだ。
- 人気商品をまねただけでは売れないこともあり、いつも柳の下に泥鰌は居らぬと分かった。
- 兄は前の大会で成功した作戦にこだわったが、いつも柳の下に泥鰌は居らぬで、今回は通用しなかった。
- 同じ場所で何度も写真を撮ればよい作品になるとは限らず、いつも柳の下に泥鰌は居らぬと心得るべきだ。
- 去年の祭りで出した店が大人気だったからといって、今年も同じ売り方でよいとは限らない。いつも柳の下に泥鰌は居らぬ。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・中島健蔵『文学の根本問題』未来社、1958〜1959年。
・森繁久弥『にんげん望遠鏡』日本放送出版協会、1979年。























