『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』講談社より出版。詳細はコチラ!

【敵の家でも口を濡らせ】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語)

敵の家でも口を濡らせ

【ことわざ】
敵の家でも口を濡らせ

【読み方】
かたきのいえでもくちをぬらせ

【意味】
たとえ敵の家であっても、出された飲食物には少しでも口をつけるのが礼儀だということ。どんな場合にも礼儀を守るべきだという教え。

ことわざ博士
敵の家でも口を濡らせは、嫌いな相手や気まずい相手のもてなしでも、礼を失ってはならないことを表すことわざだよ。
助手ねこ
「口を濡らす」は、口の中をうるおす、少しばかり飲み食いするという意味で、このことわざでは湯茶や酒などに少し口をつけることをいうニャン。

【類義語】
・親しき仲に礼儀あり(したしきなかにれいぎあり)
・門に入らば笠を脱げ(もんにいらばかさをぬげ)

【スポンサーリンク】

「敵の家でも口を濡らせ」の語源・由来

ことわざを深掘り

「敵の家でも口を濡らせ」は、敵対する相手の家であっても、出された飲食物には少し口をつけるべきだという礼儀の考えから生まれたことわざです。「敵」はここでは「かたき」と読み、争いの相手や恨みのある相手を指します。

このことわざで大切なのは、相手を好きか嫌いかではなく、場に応じた礼を守るという点です。相手と仲が悪くても、もてなしを受けたなら、まったく手をつけずに帰るのは失礼にあたる、という生活上の心得を表しています。

「口を濡らす」という言い方は、もともと広く飲食に関わる表現です。『再昌草』(1527年・室町時代後期)には「芳飯に口をぬらさばまひらばや身をば湯づけによしなさずとも」という用例があり、少しばかり飲み食いする意味で使われています。

この「口を濡らす」は、のちに「やっと暮らしを立てる」という意味にも広がりました。ただし、「敵の家でも口を濡らせ」では、生活を立てる意味ではなく、出された湯茶や酒などに少し口をつけるという、もとの飲食の意味が働いています。

このことわざに近い形として、「敵の内に来ても口を濡らさずには帰るな」という言い方があります。これは、出された湯茶や酒などは必ず飲むべきだという意味で、「敵の家でも口を濡らせ」と同じ考えを表します。

古い用例として、人情本(にんじょうぼん)の『毬唄三人娘』(1862〜65年・江戸時代末期、松亭金水編次)に、「お心急でもありませうが、敵の家へ来ても、口を濡らさずには、帰るなとか云ひますから」とあります。急いでいても、相手の家で出されたものに少しは口をつけるべきだ、という場面で使われています。

『毬唄三人娘』は、江戸時代末期の人情本で、早稲田大学所蔵本では松亭金水編次、一恵斎芳幾画と記されています。出版事項には、江戸の文永堂、慶応元年ごろとあり、近世末の小説の中でこの言い方が用いられていたことが分かります。

この古い用例では、「敵の家でも」という形そのものに近い「敵の家へ来ても」という言い方が出てきます。ここでの「敵」は、戦場の敵というより、気まずい相手、好ましく思わない相手という日常の人間関係に近い意味で受け取ることができます。

「口を濡らせ」は、たくさん飲み食いせよという意味ではありません。ほんの少しでも口をつけることで、相手のもてなしを無にしないという意味です。ことわざとしては、飲食の作法を通して、意地や感情よりも礼儀を優先することを教えています。

また、このことわざには、利益になることなら意地を張らず、その機会をつかめという意味もあります。相手を嫌っているからといって、受けてよいものまで拒むのは賢明ではない、という世渡りの知恵にもつながっています。

現在では、文字どおり敵の家で飲食する場面だけでなく、苦手な相手からの招待や、気が進まない場でのもてなしにも使えます。感情に流されず、最低限の礼を守ることが、人と人との関係を乱さないために大切だという意味で用いられます。

「敵の家でも口を濡らせ」の使い方

健太
昨日けんかした拓也くんの家に、班の打ち合わせで行くことになったんだ。
ともこ
気まずいね。でも、お母さんがお茶を出してくれたら、ちゃんと少し飲んだほうがいいよ!
健太
敵の家でも口を濡らせってことだね。けんかしていても、礼儀は守らないと。
ともこ
うん。そうしたら、仲直りのきっかけにもなるかもしれないね。
【スポンサーリンク】

「敵の家でも口を濡らせ」の例文

例文
  • 苦手な相手の家に招かれても、出されたお茶に手をつけないのは失礼で、敵の家でも口を濡らせというものだ。
  • 会議で対立した相手から昼食に誘われたが、敵の家でも口を濡らせと思い、礼を尽くして席についた。
  • いくら気まずい訪問でも、敵の家でも口を濡らせというように、もてなしを無視してはならない。
  • 昔から敵の家でも口を濡らせと言い、相手への好き嫌いと礼儀は分けて考えるべきだ。
  • ライバル校で出された飲み物を断り続けるより、敵の家でも口を濡らせの心で受け取るほうがよい。
  • 意地を張って好機を逃すのは損だから、敵の家でも口を濡らせという教えを思い出した。

主な参考文献
・現代言語研究会著『日本語を使いさばく 故事ことわざの辞典』あすとろ出版、2007年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・小学館『日本大百科全書』小学館、1994年。
・松亭金水編次『毬唄三人娘』文永堂、1865年頃。





『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』(講談社)発売中♪

マンガでわかる ことわざ図鑑

◆試験に出ることわざを網羅
ことわざは小学、中学、高校、大学、さらに就職試験の問題になっています。ことわざの試験対策としてもオススメの一冊。

◆マンガで楽しみながらことわざを知る! 憶える!
本書では、マンガで楽しくわかりやすくことわざを解説し、記憶に定着させます。