【ことわざ】
櫛が通りにくいときは雨
【読み方】
くしがとおりにくいときはあめ
【意味】
髪に櫛が通りにくいときは、空気中の湿度が高く、雨が近い兆しだということ。


「櫛が通りにくいときは雨」の語源・由来
髪は、乾いた空気の中では比較的まとまりやすいものの、湿度(しつど)が高くなると、空気中の水分を取り込み、長さや形がわずかに変わります。そのため、髪が伸びたり、うねったりして毛束どうしが絡みやすくなり、櫛の歯が滑らかに通らないことがあります。
このことわざは、そのような髪の変化と、その後に雨が降った経験とを結び付けたものです。科学的な天気予報がなかったころ、人々は、空の色、雲の形、動物の動き、物の湿り方など、身の回りに現れる小さな変化から、これからの天気を予想していました。
櫛は、毎朝の身支度に使う身近な道具です。空を注意深く見なくても、髪を整えるときに普段との違いが手に伝わるため、「今日は櫛が引っかかるから、雨が近いかもしれない」という生活上の知恵が、短いことわざとして受け継がれたと考えられます。
1960年代に全国から集められた多数の天気に関することわざの中には、「櫛の通りが悪いと雨が降る」という形が記録されています。これは、雨が近づいて湿度が上がると毛髪(もうはつ)が伸び、その変化によって櫛が通りにくくなるという内容です。
現在は、「櫛が通りにくいと雨」「髪に櫛が通りにくいと雨」「櫛が通りにくいときは雨」など、少しずつ異なる形で使われています。「ときは」を加えた対象語の形は、櫛が通りにくい状態と雨の予想との関係を、条件として分かりやすく言い表したものです。
髪が湿度に応じて伸び縮みする性質は、毛髪湿度計(もうはつしつどけい)にも利用されてきました。これは、湿度が高くなるほど毛髪が長くなる性質を利用し、そのわずかな変化を器械によって大きくし、空気の湿り具合を測るものです。
雨をもたらす低気圧(ていきあつ)や前線(ぜんせん)が近づくと、湿った空気が入り、湿度が高くなることがあります。その変化を髪が先に受け取れば、雨が降り始める前から櫛の通りが悪くなるため、このことわざには、気象の仕組みに合う部分があります。
ただし、湿度は、季節、土地、室内の環境などによっても変わります。髪の状態だけで雨を正確に予報できるわけではなく、あくまで天気の変化に気付くための一つの手掛かりです。天気に関することわざには、その土地ではよく当てはまっても、別の季節や地域では外れるものもあります。
このように、「櫛が通りにくいときは雨」は、毎日の身支度で分かる髪の変化から、空気が湿り、雨が近づいていることを読み取ったことわざです。人々が、体や道具を通して自然の変化を細やかに捉えてきたことを伝える、暮らしに根差した表現といえます。
「櫛が通りにくいときは雨」の使い方




「櫛が通りにくいときは雨」の例文
- 祖母は櫛が通りにくいときは雨と言い、出かける前に傘を持たせてくれた。
- 遠足の朝、髪がうまくまとまらなかったので、櫛が通りにくいときは雨という言葉を思い出した。
- 櫛が通りにくいときは雨というとおり、その日の昼過ぎから静かな雨が降り始めた。
- 父は庭仕事を始める前に、櫛が通りにくいときは雨だから早めに片付けようと言った。
- 理科の授業では、櫛が通りにくいときは雨ということわざと、毛髪が湿度によって変化する性質を学んだ。
- 櫛が通りにくいときは雨を思い出した母は、洗濯物を外に干さず、室内に掛けることにした。
主な参考文献
・大後美保『新説ことわざ辞典』東京堂出版、1966年。
・大後美保『天気予知ことわざ辞典』東京堂出版、1984年。
・福岡義隆・吉野正敏「健康と病気に関する天気俚諺とその季節性」『地球環境』第17巻第1号、2012年。
・気象庁秋田地方気象台『ことわざ・手作り気象測器のページ』。
・Met Office National Meteorological Library & Archive, “Hair Hygrometer.”























