【ことわざ】
腐れ縁は離れず
【読み方】
くされえんははなれず
【意味】
長く続いている好ましくない関係は、断とうとしてもなかなか断ち切れないということ。


【類義語】
・悪縁契り深し(あくえんちぎりふかし)
・業縁腐れ縁(ごうえんくされえん)
「腐れ縁は離れず」の語源・由来
「腐れ縁は離れず」は、「腐れ縁」という言葉の性質を、「離れず」と重ねて強く言い表したことわざです。「腐れ縁」とは、離れようとしても離れられない好ましくない関係を指し、その関係を批判したり、自分たちの間柄を自嘲的に語ったりするときに用います。
「腐れ」という部分には、関係が傷み、好ましくなくなったという意味合いがあります。それと同時に、鎖を意味する「鏈(くさり)」の響きも重ねられています。つまり、悪くなった縁でありながら、鎖につながれたように切れないという、二重の意味をもつ言い方です。
「腐れ縁」の古い用例は、『寒紅丑日待(かんのべにうしのひまち)』(1816〜1826年刊・江戸時代後期、振鷺亭主人著)に出てきます。この作品には、「ぶら吉といふ仕事しにくっつき、置ながしのくされ縁」とあり、ある者にくっついたまま続いている好ましくない関係を、「くされ縁」と表しています。
この用例では、単に仲が悪いというだけではなく、望ましくない相手や境遇と結び付いたまま、関係を解けずにいることが表れています。江戸時代後期にはすでに、「腐れ縁」が、長く続いて切れない悪縁を表す言葉として使われていたのです。
明治時代の風刺雑誌『団団珍聞(まるまるちんぶん)』第五百十八号(1885年)には、「錆ついて腐り縁とぞ成にける」という用例があります。ここでは「くさりえん」と読み、「錆つく」という言葉と組み合わせることで、鎖のようにつながった縁という意味が、よりはっきりと表されています。
この「くさりえん」という読み方は、現在も「腐れ縁」の別の読みとして残っています。「腐れ」と「鎖」の両方を思わせる音が、傷んでいるのに切れないという、この言葉独特の意味を支えています。
その後、「腐れ縁」は、男女や身近な知人の間だけでなく、社会的な関係にも広く使われるようになりました。松本清張の『ある小官僚の抹殺』(1958年)には、「政界や官僚との腐れ縁は絶えない」とあり、組織や立場によって結ばれた、断ち切りにくい好ましくない関係を表しています。
「腐れ縁は離れず」という形は、もともと「離れられない」という意味を含む「腐れ縁」に、さらに「離れず」を添えたものです。同じ内容を重ねることによって、悪い関係ほど不思議に長く続き、本人が断とうとしても簡単には切れないという経験則を、覚えやすい一文にまとめています。
日常では、長年付き合っている幼なじみなどを、親しみを込めて「腐れ縁」と呼ぶこともあります。しかし、このことわざの本来の意味は、単に仲のよい二人が長く結ばれていることではありません。好ましくない困った関係であるにもかかわらず、なかなか離れられないという点に重みがあります。
このように、「腐れ縁は離れず」は、傷んだ縁と切れない鎖とを重ねた「腐れ縁」から生まれ、悪い関係ほど、かえって断ち切りにくいという人間関係の不思議を表すことわざとして定着しました。
「腐れ縁は離れず」の使い方




「腐れ縁は離れず」の例文
- 何度別れても元の関係に戻る二人を見て、周囲は腐れ縁は離れずだとあきれた。
- 問題を起こす仲間から離れたいと言いながら付き合いを続ける彼には、腐れ縁は離れずという言葉が当てはまる。
- 長年もめ続けながら取引をやめない両社は、まさに腐れ縁は離れずの関係にある。
- けんかの絶えない幼なじみがまた一緒に旅行すると聞き、腐れ縁は離れずだと思った。
- 政界とその団体との関係は、批判を受けても解消されず、腐れ縁は離れずの様相を呈していた。
- 腐れ縁は離れずというが、互いに害を与える関係なら、勇気をもって距離を置くことも必要だ。
主な参考文献
・公益財団法人日本漢字能力検定協会編『漢検 漢字辞典 第二版』日本漢字能力検定協会、2014年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・現代言語研究会著『日本語を使いさばく 故事ことわざの辞典』あすとろ出版、2007年。
・振鷺亭主人『寒紅丑日待』1822年。
・『団団珍聞』第五百十八号、1885年。
・松本清張『ある小官僚の抹殺』1958年。























