【ことわざ】
送る月日に関守なし
【読み方】
おくるつきひにせきもりなし
【意味】
月日は少しも滞ることなく、驚くほど早く過ぎてゆくということ。


【英語】
・Time flies(時は驚くほど早く過ぎる)
・Time and tide wait for no man(時は人を待たない)
【類義語】
・光陰矢の如し(こういんやのごとし)
・歳月人を待たず(さいげつひとをまたず)
「送る月日に関守なし」の語源・由来
「関守(せきもり)」は、昔の関所を守り、そこを通る人や荷物を調べた役人です。旅人であれば関守に呼び止められることがありますが、月日の進む道には、その歩みを止める関守がいません。この対照から、年月が一度も立ち止まることなく過ぎてゆくことを表します。
「送る」には、人や物をどこかへ移すという意味のほかに、「時を過ごす」という意味があります。そのため、「送る月日」は、人が日々の暮らしの中で過ごしてゆく月日を指し、「送る月日に関守なし」は、その時間を引き止めることはできないという意味になります。
このことわざにつながる古い表現は、作者不詳の能『松山鏡』に出てきます。『松山鏡』は、越後国松の山を舞台とし、亡くなった母の形見である鏡に映る自分の姿を、母の姿だと思って慕う娘を描いた作品です。
母の三回忌を迎えた場面で、娘は「月日の道に関守なければ」と述べ、母と別れてから、すでに三年が過ぎたことを悲しみます。ここでは、月日が道を進んでゆくものにたとえられ、その道には時間を止める番人がいないため、悲しみの中でも、年月だけは容赦なく過ぎてしまうことを表しています。
この一節は、単に「時間は早い」と述べるだけのものではありません。大切な人を失った娘が、もう三年も過ぎてしまったことに気づく場面に置かれることで、過ぎた月日は二度と呼び戻せず、人の願いでは止められないという意味を深く印象づけています。
江戸時代初期の写本や、元禄3年、すなわち1690年の刊本には、「月日の道に関守なけれは」という形が書かれています。一方、明和2年、すなわち1765年の改訂された本文では、「うつゝなや月日の道に関もなければ」となっており、「関守」が「関」に変わっています。
このように、細かな言い回しには違いがありますが、「月日の進む道には、その歩みを妨げる関所も番人もいない」というたとえは受け継がれました。やがて、もとの文章を短く言い切った「月日に関守なし」という形で、年月が滞りなく過ぎることを表すことわざとして用いられるようになりました。
現在は、「月日に関守なし」のほか、「送る月日に関守なし」ともいいます。「送る」を加えた形では、人が日々を過ごしている間にも、月日は待つことなく進み続けるという意味が、いっそう分かりやすく表れています。
「送る月日に関守なし」の使い方




「送る月日に関守なし」の例文
- 入学した日のことを昨日のように覚えているのに、もう卒業を迎えるとは、送る月日に関守なしだ。
- 幼かった弟が中学生になった姿を見て、送る月日に関守なしと母は目を細めた。
- 十年ぶりに友人と再会し、互いの白髪に気づいて、送る月日に関守なしだと語り合った。
- 毎年楽しみにしている祭りも、終わってしまえば、送る月日に関守なしと思うほど次の一年が早く過ぎる。
- 入社から二十年を迎えた社員は、送る月日に関守なしと、これまでの仕事を静かに振り返った。
- 古い駅舎が建て替えられ、町の姿まで変わったことに、住民は送る月日に関守なしと年月の早さを思った。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・公益財団法人日本漢字能力検定協会編『漢検 漢字辞典 第二版』日本漢字能力検定協会、2014年。
・佐成謙太郎『謡曲大観 第五巻』明治書院、1931年。
・高橋悠介「享保期の江戸城西丸への謡本献上と謡曲改訂(四)」『斯道文庫論集』第57号、慶應義塾大学附属研究所斯道文庫、2023年。
・Cambridge University Press & Assessment『Cambridge Advanced Learner’s Dictionary & Thesaurus』。























