【ことわざ】
親と子供は銭金で買われぬ
【読み方】
おやとこどもはぜにかねでかわれぬ
【意味】
親にとって子供は、子供にとって親は、金銭では手に入れられないほど大切で、かけがえのない存在だということ。


【英語】
・You can’t put a price on family(家族の価値には値段を付けられない)
【類義語】
・子に過ぎたる宝なし(こにすぎたるたからなし)
【対義語】
・銭金は親子でも他人(ぜにかねはおやこでもたにん)
「親と子供は銭金で買われぬ」の語源・由来
「親と子供は銭金で買われぬ」は、「銭金で買う」という売買の言い方を、売買の対象にはならない親子の間柄に重ねたことわざです。「買われぬ」は「買うことができない」という意味で、親にとっての子供も、子供にとっての親も、いくら金銭を積んでも手に入れたり、取り替えたりできない存在だと表しています。
「銭金」は、「銭と金」という成り立ちをもつ、貨幣や金銭を表す古くからの言葉です。単に現金を指すだけでなく、「銭金の問題ではない」のように、金銭上の損得という意味でも使われます。
「銭金」の古い用例は、『玉塵抄(ぎょくじんしょう)』(1563年・室町時代後期)にあります。「ぜにかねを以て高い官になりあがった」とあり、金銭の力によって身分の高い官職を得たことを表す文脈で使われています。
さらに、『曾根崎心中(そねざきしんじゅう)』(1703年・江戸時代前期、近松門左衛門著)には、「銭金を湯水のやうに」とあります。ここでは、夜ごと遊里へ通い、金銭を惜しげもなく使う様子を表しており、「銭金」が、江戸時代の暮らしの中でも広く通じる言葉であったことが分かります。
これらは、「親と子供は銭金で買われぬ」ということわざ全体の古い用例ではなく、その一部をなす「銭金」という言葉の歩みを示す例です。ことわざ全体は、特定の人物の逸話を語る形ではなく、日常の売買を表す言葉と、値段を付けられない親子の間柄とを対照させています。
品物であれば、代金を払って手に入れたり、失ったものの代わりを買ったりできます。しかし、一人一人の親や子供には代わりがなく、長い年月の中で育まれる結びつきも、金銭だけで作ることはできません。「買われぬ」という強い否定には、親子を利益や損得だけで扱ってはならないという教えも込められています。
日本語と中国語の金銭に関することわざを比べると、中国語にも、「金があっても実の子は買えぬ」「たとえ黄金千両でも実の子は買えない」という、よく似た発想の表現があります。ただし、同じ考えを表すことわざがあるというだけで、日本語の表現が中国語から生まれたと断定することはできません。
一方、「銭金は親子でも他人」ということわざは、金銭の貸し借りでは、親子の間でもけじめが必要だと戒めます。「親と子供は銭金で買われぬ」が親子のかけがえのなさを説くのに対し、こちらは、親しい間柄を金銭問題で損なわないための心得を説いています。
このように、「親と子供は銭金で買われぬ」は、古くから使われてきた生活語である「銭金」を用い、親子の存在と結びつきは金銭の価値に置き換えられないと教えることわざとして定着しています。
「親と子供は銭金で買われぬ」の使い方




「親と子供は銭金で買われぬ」の例文
- 高価な贈り物をいくつ並べても、育ててくれた母の代わりにはならず、親と子供は銭金で買われぬと実感した。
- 財産を築いた父は、親と子供は銭金で買われぬからこそ、家族と過ごす時間を大切にした。
- 災害のあとに無事を確かめ合った家族は、親と子供は銭金で買われぬという言葉の重みをかみしめた。
- 祖母は、親と子供は銭金で買われぬのだから、忙しくても互いを思いやる心を忘れてはいけないと話した。
- 親と子供は銭金で買われぬとは、親子の価値を財産の多さで測れないことを表すことわざだ。
- 地域の講演会では、親と子供は銭金で買われぬという教えをもとに、家族と向き合う時間の大切さが語られた。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・田中俊明「養育環境における親子の結びつきと対立」『子ども未来学研究』第1号、梅光学院大学子ども学部、2006年。
・銭清・浮田三郎「日本語と中国語における『金銭』に関する諺対照比較研究3」『ニダバ』第39号、西日本言語学会、2010年。
・『玉塵抄』1563年。
・近松門左衛門『曾根崎心中』1703年。
・Cambridge University Press, Cambridge Advanced Learner’s Dictionary & Thesaurus.























