【ことわざ】
負うた子を三年探す
【読み方】
おうたこをさんねんさがす
【意味】
手近にある物に気づかず、長い間あちこちを探し回ることのたとえ。


【英語】
・be right under one’s nose(目の前にあるのに気づかない)
【類義語】
・負うた子を人に尋ねる(おうたこをひとにたずねる)
・背中の子を七日尋ねる(せなかのこをなのかたずねる)
・牛に乗りて牛を求む(うしにのりてうしをもとむ)
「負うた子を三年探す」の語源・由来
「負うた子を三年探す」は、背中に負ぶっている子どもを忘れ、その子がどこへ行ったのかと長い間探し回る、というこっけいな情景から生まれたことわざです。探しているものが、実は自分のすぐ近くにあるという点に、このことわざの意味の芯があります。
「負う」は、背中に載せる、背負うという意味をもつ言葉です。このことわざの「負うた子」は、背中に背負った子どもを指します。
背中の子どもは、探している本人にとって最も近いところにいます。それなのに、本人は足もとや遠くばかりを見て、背中の存在に気づかないというところに、身近なものほど見落としやすいという教えが込められています。
「三年」は、実際に三年間という期間だけを表すのではありません。いつまでも気づかず、長い時間むだに探し続けることを強めて言うための表現です。
このことわざには、「負うた子を人に尋ねる」「背中の子を七日尋ねる」という、同じ発想の言い方もあります。どちらも、すぐそばにあるものを見落として、よそに答えを求めるおかしさを表しています。
近代のことわざ論でも、「負うた子を人に尋ねる」という形が、むだな骨折りや気づきの悪さを表すことわざの一つとして取り上げられています。柳田国男の『定本柳田国男集 第21巻』(1970年・筑摩書房、柳田国男著)には、「なぞとことわざ」が収められています。
「負うた子を人に尋ねる」は、自分の背中にいる子どもを、わざわざ他人に知らないかと尋ねる形です。「負うた子を三年探す」は、それをさらに長い時間探し回る形にして、見落としの愚かさをいっそう強く表しています。
類義の「牛に乗りて牛を求む」も、牛に乗っていながら牛を探すという、同じ種類のたとえです。どちらも、求めるものが手元にあるのに、外へ外へと探しに行くむだを戒めています。
このことわざは、物を探す場面だけに限られません。答え、手がかり、助けてくれる人、解決の方法などが身近にあるのに気づかないときにも使われます。
現在の使い方では、相手を強く責めるよりも、「まず身近なところをよく見よう」という反省や注意として用いると自然です。遠くを探す前に、手元、足もと、自分の周りをよく確かめる大切さを伝えることわざです。
「負うた子を三年探す」の使い方




「負うた子を三年探す」の例文
- 消しゴムを机の上に置いたまま教室中を探していて、負うた子を三年探すようなことになった。
- 必要な資料はメールに添付されていたのに、別のフォルダーばかり探していたのは負うた子を三年探すだった。
- 祖母は眼鏡を頭にのせたまま、負うた子を三年探すように家中を探し回った。
- 解決の手がかりは最初の記録に書いてあり、会議で遠回りしたのは負うた子を三年探すに近かった。
- 友人に聞く前に自分のかばんを確かめれば、負うた子を三年探すことにはならなかった。
- 負うた子を三年探すというように、答えは案外、自分のすぐ近くにあるものだ。
主な参考文献
・現代言語研究会著『日本語を使いさばく 故事ことわざの辞典』あすとろ出版、2007年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・公益財団法人日本漢字能力検定協会編『漢検 漢字辞典 第二版』日本漢字能力検定協会、2014年。
・柳田国男『定本柳田国男集 第21巻』筑摩書房、1970年。
・Merriam-Webster, Merriam-Webster.com Dictionary, “(right) under someone’s nose.”























