【ことわざ】
親子の仲でも金銭は他人
【読み方】
おやこのなかでもきんせんはたにん
【意味】
血のつながった親子であっても、金銭上のことでは他人同士と同じように、貸し借りや支払いのけじめを明確にすべきだということ。金銭が絡むと、親子でもよそよそしくなりやすいことも表す。


【英語】
・Short reckonings make long friends(貸し借りを早く清算すれば、長くよい関係を保てる)
【類義語】
・貸し借りは他人(かしかりはたにん)
・金銭に親子なし(きんせんにおやこなし)
・銭金は親子でも他人(ぜにかねはおやこでもたにん)
「親子の仲でも金銭は他人」の語源・由来
「親子の仲でも金銭は他人」は、最も身近な間柄である「親子」と、血縁や特別なつながりのない「他人」とを対照させた表現です。親子は深い愛情で結ばれていても、金銭については関係の近さだけに頼らず、他人との取引と同じように明確に扱うべきだと説いています。
このことわざには、二つの意味が重なっています。一つは、金銭が関わると、親子でさえ相手を疑ったり、よそよそしくなったりするという世のならいです。もう一つは、そのような争いを防ぐため、親子の間でも、貸した額、返す期限、費用の分担などをはっきりさせるべきだという戒めです。
この表現の古い用例は、人情本(にんじょうぼん)『孝女二葉錦(こうじょふたばのにしき)』(1829年・江戸時代後期、梅暮里谷峩述)にあります。書名には「孝女両葉錦」という別の表記もあり、文政12年に刊行された作品です。
人情本は、江戸時代後期に、人々の暮らしや人間関係を題材として読まれた作品です。その中にこの言い回しの用例があることから、親子の間であっても金銭を曖昧に扱わないという考えが、当時の生活に根差した教えとして語られていたことが分かります。
後には、「金銭」を日常的な「金」に置き換えた「親子の仲でも金は他人」という形も、広く用いられるようになりました。意味は同じで、金銭が絡めば親子も他人同士と変わらなくなることや、金銭については誰に対しても明確なけじめをつけるべきことを表します。
さらに、「金銭に親子なし」「金銭は他人」「銭金は親子でも他人」などの言い方もあります。「金銭」「金」「銭金」と、用いる言葉やその並び方は異なりますが、親子という近い関係と、他人のような厳しいけじめとを対照させる点は共通しています。
ここでいう「他人」は、親子の情愛を捨てることを意味するものではありません。相手を大切に思うからこそ、金銭の約束を曖昧にせず、貸した側にも借りた側にも不満が残らないようにするという意味です。親しさを理由に約束を軽く扱えば、かえって大切な関係を傷つけることがあります。
英語の「Short reckonings make long friends.」も、借りた金を早く清算することが、長く良い関係を保つことにつながると説いています。親子に限った表現ではありませんが、金銭のけじめによって親しい関係を守るという考えは、このことわざとよく通じています。
このように、「親子の仲でも金銭は他人」は、金銭によって親子が冷たい関係になることを嘆くだけの言葉ではありません。大切な親子関係を守るためにも、金銭については公平な約束を設け、借りたものはきちんと返すべきだと教えることわざです。
「親子の仲でも金銭は他人」の使い方




「親子の仲でも金銭は他人」の例文
- 母から引っ越し費用を借りた兄は、親子の仲でも金銭は他人と考え、毎月の返済額を決めた。
- 父は親子の仲でも金銭は他人だからと、共同で買った車の費用を帳簿に記した。
- 親子の仲でも金銭は他人という教えに従い、娘は借りた学費を約束の日までに返した。
- 店を継いだ息子は、親子の仲でも金銭は他人として、父との取引にも正式な契約書を作った。
- 親子の仲でも金銭は他人なのだから、家族間の貸し借りでも金額と期限を曖昧にしてはならない。
- 遺産をめぐる争いを防ぐため、祖父は親子の仲でも金銭は他人という心構えで財産の分け方を明記した。
主な参考文献
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・Jennifer Speake編『The Oxford Dictionary of Proverbs 第5版』Oxford University Press、2008年。
・梅暮里谷峩『孝女二葉錦』1829年。























