【棚から牡丹餅】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語・対義語・英語)

棚から牡丹餅の漫画

【ことわざ】
棚から牡丹餅

【読み方】
たなからぼたもち

【意味】
思いがけない幸運を得ること。また、苦労せずによいものを得ることのたとえ。

ことわざ博士
棚から牡丹餅は、努力して得た成果ではなく、偶然に幸運が転がり込むことをいうよ。
助手ねこ
ニャルほど! くじを一枚引いただけで大当たりしたら、まさに「棚から牡丹餅」だニャ。オラもそんな幸運が来たらびっくりするニャン!

【英語】
・a stroke of luck(偶然に起こる幸運)
・a windfall(思いがけず手に入る利益・幸運)

【類義語】
・開いた口へ餅(あいたくちへもち)
・開いた口へ牡丹餅(あいたくちへぼたもち)

【対義語】
・蒔かぬ種は生えぬ(まかぬたねははえぬ)

「棚から牡丹餅」の語源・由来

ことわざを深掘り

「棚から牡丹餅」は、棚の上にあった牡丹餅が、思いがけず落ちてきて手に入るという情景から生まれたことわざです。ここでいう牡丹餅は、糯米(もちごめ)と粳米(うるちまい)をまぜて炊き、軽くついて丸め、小豆餡(あずきあん)やきな粉などをまぶした餅菓子を指します。

牡丹餅そのものは、江戸時代初期の俳諧(はいかい)にも出てきます。たとえば『鷹筑波(たかつくば)』(1638年序・1642年刊、江戸時代前期)には、「萩の花ぼた餠の名ぞみぐるし野」という用例があり、牡丹餅という食べ物が早くから身近な菓子として言葉の中に入っていたことが分かります。

現在の意味に近い考え方としては、「開いた口へ餅」という言い方が先にあります。黄表紙(きびょうし:江戸時代の絵入り読み物)『金々先生栄花夢(きんきんせんせいえいがのゆめ)』(1775年、恋川春町作・画)には、「これさいわい福徳の三年目、あいた口へもち、天へもあがるここちして」とあり、何もしないでいたところへ思いがけない幸運が来るという発想が、餅のたとえで表されています。

一方で、「棚から落ちる牡丹餅」という近い形は、はじめから幸運の意味だけで使われたわけではありません。『風狂文艸』(1745年・江戸時代中期)には、「悪女の面影をいはんとて、棚より落ちるぼた餠とは聞くさへつらし」とあり、棚から落ちてつぶれた牡丹餅の形を、みにくい顔のたとえに用いています。つまり、棚から落ちる牡丹餅という絵は早くからありましたが、そこでの意味は、現在の「思いがけない幸運」とは違っていました。

現在のことわざとしての形は、『譬喩尽(たとへづくし)』(1786年序・江戸時代後期、松葉軒東井編)に「棚(タナ)から牡丹餠(ボタモチ)落したやうな」と出てきます。『譬喩尽』は、江戸時代後期のことわざや流行語などを広く集めた書物で、この段階では「思いもかけない幸運」「労せずに幸運を得ること」のたとえとしてまとまっています。

その後、牡丹餅が棚から落ちるという題材は、江戸の読み物にも取り入れられました。黄表紙『旨趣向棚牡丹餅』(1794年・寛政6年、樹下石上作、政よし画)は、題名そのものに「棚牡丹餅」を用いており、この言い回しが江戸の読者に通じる面白い趣向として扱われていたことを示しています。

明治時代には、近い言い方も重なりながら使われました。『日月星享和政談(じつげつせいきょうわせいだん)』(1878年・明治11年初演、河竹黙阿弥作)には、「棚から落ちた胡麻の牡丹餠」という形が出てきて、「棚から牡丹餅」と同じ意味の言い方として扱われています。

また、明治初期の『西洋道中膝栗毛』(1870〜1876年、仮名垣魯文著)には「あいたくちへぼたもちのうまいはなし」という用例があります。口を開けていただけで牡丹餅が入るという表現と、棚から牡丹餅が落ちてくるという表現は、どちらも「自分から大きな努力をしないのに幸運が来る」という同じ考え方を支えています。

近代以後には、短く「たなぼた」とも言うようになりました。「棚牡丹」は「棚から牡丹餅」の略で、思いがけなく幸運がころがり込むことを表します。昭和期の用例として「棚ボタ式」という形もあり、今では会話の中で「棚ぼた」と短く言うことも多くなっています。

このように、「棚から牡丹餅」は、身近でうれしい食べ物である牡丹餅と、偶然落ちてくるという思いがけない出来事とが結びついて生まれたことわざです。古い用例では、棚から落ちる牡丹餅が別の意味にも使われましたが、江戸時代後期には、労せずに幸運を得るという現在の意味がはっきり整い、さらに「開いた口へ餅」「開いた口へ牡丹餅」「たなぼた」などの近い言い方とともに広がっていきました。

「棚から牡丹餅」の使い方

健太
商店街の福引き券を一枚だけもらったんだけど、三等の図書カードが当たったよ!
ともこ
一枚で当たるなんてすごいね。まさに棚から牡丹餅じゃない?
健太
うん。買い物について行っただけなのに、思いがけないごほうびになったよ。
ともこ
せっかくだから、その図書カードで前から読みたかった本を買うといいね!

「棚から牡丹餅」の例文

棚から牡丹餅
  • 応募したことさえ忘れていた懸賞の当選品が届き、棚から牡丹餅のような喜びを味わった。
  • 相手チームの都合で試合に出られなくなり、思いがけず決勝へ進めたのは棚から牡丹餅だった。
  • 祖父の知り合いから古い自転車を譲ってもらい、兄にとっては棚から牡丹餅の出来事となった。
  • 急に空席が出て人気の講演会に入れたのは、まさに棚から牡丹餅だった。
  • 何気なく買った一枚のくじが当たり、棚から牡丹餅とはこのことだと思った。
  • 会社の抽選で旅行券が当たり、同僚たちは棚から牡丹餅の幸運だと笑った。

主な参考文献

・松村明監修、小学館国語辞典編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・松葉軒東井編、宗政五十緒校訂『たとへづくし 譬喩尽』同朋舎、1979年。
・恋川春町『金々先生栄花夢』1775年。
・樹下石上作、政よし画『旨趣向棚牡丹餅』西宮新六、1794年。
・A. S. Hornby『Oxford Advanced Learner’s Dictionary 10th edition』Oxford University Press、2020年。




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