【ことわざ】
鶯の早く鳴く年は豊年
【読み方】
うぐいすのはやくなくとしはほうねん
【意味】
鶯が例年より早く鳴き始める年は、穀物がよく実り、豊作になるという言い伝え。


【類義語】
・雪は豊年の瑞(ゆきはほうねんのしるし)
「鶯の早く鳴く年は豊年」の語源・由来
「鶯の早く鳴く年は豊年」は、鳥の鳴き始めから季節の進み方を読み取り、その年の作物の出来を占ったことわざです。「鶯が早く鳴く」という春の出来事と、「豊年」という秋の実りとを結びつけています。
ウグイスは、日本では一年を通して見られる地域も多く、秋から冬には「チャッ、チャッ」という声を出します。春になると、雄が「ホーホケキョ」とさえずり始めるため、この声は昔から春の訪れを知らせるものとして親しまれてきました。
その年や季節に初めて聞く鳥の声を「初音(はつね)」といい、特に鶯の最初の鳴き声を指すことが多い言葉です。したがって、このことわざの「早く鳴く」は、冬の地鳴きではなく、例年より早く春のさえずりが聞こえることを表します。
鶯の声を春のしるしとする考えは、古くからありました。『古今和歌集(こきんわかしゅう)』(905年ごろ成立、平安時代前期、紀友則・紀貫之・凡河内躬恒・壬生忠岑撰)の春の歌にも、鶯が鳴かなければ春が来たとは思えないという趣旨の歌が収められています。
同じ歌集には、谷から聞こえる鶯の声によって春の到来を知るという歌もあります。この段階では豊作の予告ではありませんが、鶯の鳴き声を季節の移り変わりを知る合図とする見方が、和歌の中にすでにはっきりと表れています。
鶯は「春告鳥(はるつげどり)」とも呼ばれます。この異名は、春に早く現れて美しい声で鳴くことに由来し、『梵燈庵主袖下集(ぼんとうあんしゅそでのしたしゅう)』(1384年ごろ・南北朝時代)にも「春つけ鳥」という形が出てきます。
昔の農村では、暦や気象予報だけでなく、鳥の鳴き声、草木の芽吹き、虫の動きなども、季節や天候を判断する手がかりになりました。現在でも、鶯の初鳴日は、季節の遅れや進みを示す記録の一つとして、長年にわたり観測資料に残されています。
埼玉県北本市で地域の古老から集められた天気の言い伝えには、「ウグイスが早く鳴く年は豊年」という形が記録されています。その直後には、「ウグイスの鳴き声を聞いて春の近きを知る」という言い伝えも並び、鶯の声と春の訪れとが結びついていたことが分かります。
このことわざでは、鶯の初音が早ければ、春の訪れも早く、作物が育つ季節も順調に始まると受け取っています。そこから、暖かな春の先には豊かな収穫が待っているという期待を込め、「豊年」へと結びつけています。
「豊年」は、穀物がよく実って収穫が多いこと、またはそのような年を指します。このことわざでも、単に運のよい一年という意味ではなく、稲や麦などが豊かに実る年を表しています。
伝承の形には、「鶯の早く鳴く年は豊年」と「ウグイスが早く鳴く年は豊年」という違いがあります。「鶯の」と「ウグイスが」は、文の組み立てこそ異なりますが、早い初音を豊作の前触れとする意味は同じです。
この言い伝えは、早い初音が必ず豊作をもたらすと保証するものではありません。自然の小さな変化に注意を払い、春の訪れを喜びながら秋の実りを願った、農村の暮らしの知恵を伝えることわざです。
「鶯の早く鳴く年は豊年」の使い方




「鶯の早く鳴く年は豊年」の例文
- 農家の祖父は、二月のうちに初音を聞き、鶯の早く鳴く年は豊年と喜んだ。
- 鶯の早く鳴く年は豊年という言い伝えを思い出し、村人たちは秋の実りに期待を寄せた。
- 今年は山里で初音を聞くのが早く、鶯の早く鳴く年は豊年となることを願って田植えを始めた。
- 祖母は鶯の声に耳を澄ませながら、鶯の早く鳴く年は豊年と孫に教えた。
- 地域の農業体験では、鶯の早く鳴く年は豊年という昔の言い伝えが紹介された。
- 春先から鶯の声が響いたため、父は鶯の早く鳴く年は豊年になるかもしれないと稲の成長を楽しみにした。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・加藤周一編『改訂新版 世界大百科事典』平凡社、2007年。
・北本市教育委員会社会教育課編『北本市史 第三巻上 自然・原始資料編』北本市教育委員会、1990年。
・紀友則・紀貫之・凡河内躬恒・壬生忠岑撰『古今和歌集』905年ごろ。























