【兎死すれば狐これを悲しむ】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・対義語・英語)

兎死すれば狐これを悲しむ

【故事成語】
兎死すれば狐これを悲しむ

【読み方】
うさぎしすればきつねこれをかなしむ

【意味】
同じ立場や仲間にある者の不幸を、次は自分の身にも及ぶかもしれないと考えて悲しむことのたとえ。

ことわざ博士
兎の死を狐が悲しむ姿に、同じ境遇の者どうしが不幸を他人事にできない心を重ねた表現だよ。
助手ねこ
仲間の失敗・処罰・衰退などを見て、同情とともに自分の行く末を案じる場面に用いるニャン。

【英語】
・When the hare dies, the fox mourns(兎が死ぬと狐が悲しむ)

【類義語】
・狐死兎泣(こしときゅう)

【対義語】
・幸災楽禍(こうさいらくか)

「兎死すれば狐これを悲しむ」の故事

故事成語を深掘り

この表現の「同類」は、兎と狐が動物として同じ種類だという意味ではありません。同じ立場にある者や、共通の危険にさらされている仲間を指し、一方の不幸に同情するとともに、「次は自分かもしれない」と案じる心を表します。

古い形は、敦煌(とんこう)に伝わった唐から五代ごろの民間の語り物にさかのぼります。『鷰子賦』には、つばめが作った巣を雀の一家が奪い、つばめを打ちすえたために、鳥たちの裁判が開かれる話が出てきます。

裁判官役の鳳凰は雀を罰し、喜んだつばめは、雀を厳しくののしります。すると、雀の兄弟が「狐死兔悲、物傷其類」と言い、自分も兄の振る舞いを恥じてはいるが、同じ仲間が不幸に遭えば悲しむものだから、これ以上悪く言わないでほしいと訴えます。

この段階では、狐が死んで兎が悲しむ「狐死兔悲」という順序です。物語の要点は、善悪の判断とは別に、同じ仲間の不幸を自分と無関係とは思えないことにあり、この言い方から、のちに動物の順序を入れ替えた「兔死狐悲」が生まれました。

別の古い形として、「狐死兔泣」もあります。『宋史(そうし)』(1345年完成・元代、脱脱ら編)巻四百七十七「李全伝下」では、李氏が滅びれば、同じ立場にある夏氏も無事ではいられないと説く場面で、この言葉が使われています。

ここでは、単に仲間の死を悲しむだけでなく、一方の滅亡が、もう一方の危機を知らせるものとして受け止められています。現在の「仲間の不幸を見て、自分の行く末を案じる」という意味に、いっそう近い用法です。

元代になると、汪元亨の曲や、無名氏の戯曲『賺蒯通』に、現在の中国語と同じ語順の「兔死狐悲」が現れます。その後も小説や戯曲に用いられ、同類の不幸を悲しむことを表す言い方として、広く定着していきました。

『玉笑零音(ぎょくしょうれいおん)』(明代、田藝蘅著)には、「兔死則狐悲」とあります。「兎が死ねば、そのとき狐が悲しむ」という形であり、日本語の「兎死すれば狐これを悲しむ」と、語の並びや文の組み立てがよく対応しています。

日本では、浄瑠璃『曾我会稽山(そがかいけいさん)』(1718年・江戸時代中期、近松門左衛門著)に、「兎しすれば狐是を悲しむとは、同じ類に禍の来らんことをいたむゆへ」とあります。同じ仲間に災いが及ぶことを心配するという説明が添えられており、この時点で、現在とほぼ同じ意味で使われていたことが分かります。

このように、初めは「狐死兔悲」という形で仲間への同情を表し、のちに「狐死兔泣」「兔死狐悲」「兔死則狐悲」などの形を経て、日本語の「兎死すれば狐これを悲しむ」へとつながりました。同情だけでなく、同じ不幸が自分にも迫っているのではないかという不安を含むところに、この故事成語の大切な意味があります。

「兎死すれば狐これを悲しむ」の使い方

健太
隣のクラスのサッカーチーム、ずっとライバルとして競い合ってきたけれど、今回の大会は人数が足りなくて出場を辞退することになったんだって。
ともこ
えっ、そうなの?あんなに一生懸命練習していたのに、試合にも出られないなんて本当に気の毒だね。
健太
うん、僕たちのチームも決して他人事じゃないし、兎死すれば狐これを悲しむという言葉の通り、胸が痛くて悲しい気持ちになるよ。
ともこ
そうだね……明日は我が身だと思って、私たちもメンバーを大切にしながら、彼らの分まで全力で頑張ろう!

「兎死すれば狐これを悲しむ」の例文

例文
  • 同業の店が次々と閉店する知らせに、商店街の人々は兎死すれば狐これを悲しむ思いを抱いた。
  • 隣の部署が大幅に縮小され、社員たちは兎死すれば狐これを悲しむ心境になった。
  • 同じ資格を目指す友人が試験に落ちたと聞き、彼は兎死すれば狐これを悲しむ思いで結果発表を待った。
  • 一校が大会への出場停止となり、規則違反を見過ごしていた他校も兎死すれば狐これを悲しむ思いを強くした。
  • 近くの農家が害獣の被害を受け、周囲の農家も兎死すれば狐これを悲しむ思いで対策を急いだ。
  • 仲間の会社が不正会計で信用を失い、同じ業界の経営者たちは兎死すれば狐これを悲しむ思いを隠せなかった。

主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・教育部『成語典 2020』。
・潘重規編『敦煌変文集新書』文津出版社。
・脱脱等『宋史』1345年。
・田藝蘅『玉笑零音』1629年刊本。
・近松門左衛門『曾我会稽山』1718年。




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