【ことわざ】
馬持たずに馬貸すな
【読み方】
うまもたずにうまかすな
【意味】
物の扱い方を知らない人に、物を貸してはいけないという戒め。


【英語】
・Never lend valuables to someone who does not know how to handle them(扱い方を知らない人に大切な物を貸すな)
【類義語】
・子無しに子を呉れるな(こなしにこをくれるな)
「馬持たずに馬貸すな」の語源・由来
「馬持たずに馬貸すな」は、馬を持ったことのない人には馬を貸すな、という具体的な戒めから生まれたことわざです。「馬持たず」は、馬を持っていない人を指します。
このことわざでは、馬を「ただ乗るための動物」としてではなく、世話や扱いに知識を要する大切な財産として見ています。馬を持った経験がない人は、その苦労や注意点を知らないため、馬を粗末に扱うかもしれない、という考えがもとになっています。
「馬持ち」という言葉には、馬の持ち主、馬を貸して貸し料を取る人、馬の取り扱い方や世話といった意味があります。つまり、馬を「持つ」ことは、単なる所有だけでなく、世話をし、扱い方を知ることとも深く結びついていました。
古い用例では、16世紀後半の狂歌に「馬もち」が馬の持ち主の意味で出てきます。また、近松門左衛門作の浄瑠璃『鑓の権三重帷子』(やりのごんざかさねかたびら、1717年・江戸時代中期)には、「馬持が好いゆへに」という形で、馬の扱い方・世話を表す用例が出てきます。
馬を貸す行為そのものも、古くから実際の生活に関わるものでした。「貸馬」は、使用料を取って貸す馬を指し、『談林十百韻』(だんりんとっぴゃくいん、1675年・江戸時代前期、田代松意編)には「門外にかし馬引よせゆらりと乗」という用例があります。
また、「借馬屋」は、料金を取って馬を貸す商売の家、またその商売をする人を指します。国木田独歩の『画の悲み』(明治35年)には「借馬屋」という用例があり、近代にも馬を借りる場が言葉として残っていました。
日本では、牛や馬が役畜として飼われ、耕耘や運搬などに用いられました。江戸時代には、信州地方の中馬(ちゅうま)のように、馬の背を利用して物資を運ぶしくみも発達し、馬は暮らしや仕事を支える大切な存在でした。
この背景をふまえると、「馬を持たない人」は、馬の力を借りる便利さだけを見て、世話の手間や扱いの難しさを知らない人として考えられます。大切な馬をそのような人に貸せば、無理に走らせたり、十分に世話をしなかったりして、馬を傷めるおそれがあるという発想です。
そこから意味が広がり、現在では馬に限らず、物の価値や扱い方を知らない人には、大切な物を貸してはいけないという教訓として使われます。道具、車、本、機械、楽器など、扱いを誤ると壊れたり傷んだりする物を貸す場面によく当てはまります。
「馬持たずに馬貸すな」は、貸す相手を疑えというより、物を大切に扱えるかを見きわめよという戒めです。大切な物ほど、相手がその価値と扱い方を理解しているかを考えてから任せるべきだ、という生活の知恵を表しています。
「馬持たずに馬貸すな」の使い方




「馬持たずに馬貸すな」の例文
- 馬持たずに馬貸すなというから、カメラの扱いを知らない人に高価なレンズは貸せない。
- 父は、工具を乱暴に使う人には貸さず、馬持たずに馬貸すなを守っている。
- 馬持たずに馬貸すなと思い、操作に慣れていない友人に新しい自転車を貸すのはやめた。
- 会社の機械を新人に任せる前に、馬持たずに馬貸すなと考えて、まず使い方を丁寧に教えた。
- 姉は大切な本を折って読む人には貸さず、馬持たずに馬貸すなを実感している。
- 馬持たずに馬貸すなという教えは、物を貸す相手の経験や扱い方を見る大切さを示している。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・田代松意編『談林十百韻』1675年。
・近松門左衛門『鑓の権三重帷子』1717年。























