【ことわざ】
兎の罠に狐がかかる
【読み方】
うさぎのわなにきつねがかかる
【意味】
予想していた以上の収穫や、思いがけない幸運を得ることのたとえ。


【英語】
・an unexpected windfall(思いがけず得た利益や幸運)
【類義語】
・鰯網で鯨を捕る(いわしあみでくじらをとる)
【対義語】
・骨折り損のくたびれ儲け(ほねおりぞんのくたびれもうけ)
「兎の罠に狐がかかる」の語源・由来
「兎の罠に狐がかかる」は、兎を捕らえるために仕掛けた罠に、思いがけず狐がかかるという狩猟の情景から生まれたことわざです。予定していた獲物とは異なるものを得た驚きを、人が予想以上の収穫や幸運を手にすることに重ねています。
日本では、兎は古くから身近な小動物であると同時に、食用などのために捕らえる狩猟の対象でもありました。『古事記』の因幡の白兎や『鳥獣戯画』、昔話の「かちかち山」などにも登場し、人の暮らしと深い関わりをもつ動物として親しまれてきました。
野生の兎は、くくり罠のような比較的簡単な仕掛けでも捕らえられる動物でした。兎が通る道や現れやすい場所を見定め、そこに罠を置いて待つという方法は、このことわざの情景を理解するうえで大切な背景となります。
罠を仕掛けた人が期待しているのは、あくまでも兎です。ところが、罠を確かめてみると、そこには予定していなかった狐がかかっているという意外な結果になります。
この意外性が、ことわざの意味の核となっています。単に幸運が何の前触れもなく訪れるのではなく、ある目的のために行動していたところ、予想を上回る成果が偶然ついてきたという場面を表します。
そのため、「兎の罠に狐がかかる」は、狐が自分で仕掛けた罠に落ちることや、人を陥れようとした者が自滅することを意味する表現ではありません。罠を仕掛けた側が、ねらっていたものとは別の、思いがけない収穫を得ることを表します。
このことわざには、中国の歴史上の人物や事件をもとにした話は伝わっていません。日本の狩猟生活に結び付くことわざとして扱われ、兎が「捕らえる獲物」であることに注目した表現の一つに数えられています。
昭和後期には、「兎の罠に狐がかかる」という現在と同じ形で辞典に収められ、「意外な収穫や幸運を得ることのたとえ」として整理されていました。のちのことわざ研究でも、同じ意味をもつ日本の表現として取り上げられています。
平成11年の大学図書館報にも、このことわざが、兎にまつわる表現の一つとして掲げられています。そこでは、中国語で「捕兔得狐、意外収獲」と添えられ、兎を捕らえようとして狐を得る、すなわち予想外の収穫という意味が示されています。
よく似た発想をもつことわざに、「鰯網で鯨を捕る」があります。これは、鰯を捕るための網で、思いもよらず鯨を捕らえるというたとえで、浄瑠璃『国性爺合戦(こくせんやかっせん)』(1715年・江戸時代中期、近松門左衛門著)に、「思ひもよらぬひろひ物、いわし網で鯨を取るとは此のこと」とあります。
一方、「海老で鯛を釣る」は、小さな元手や贈り物によって、それ以上に大きな利益や返礼を得ることを表します。「兎の罠に狐がかかる」が偶然の意外な収穫に重点を置くのに対し、「海老で鯛を釣る」は、小さなものを用いて大きなものを得るという釣り合いに重点があります。
このように、「兎の罠に狐がかかる」は、兎を目的として罠を仕掛けたところ、予想していなかった狐まで手に入ったという情景を、思いがけない成功や大きな収穫に重ねたことわざです。期待していた結果を越える幸運が舞い込んだときに用いる表現として定着しています。
「兎の罠に狐がかかる」の使い方




「兎の罠に狐がかかる」の例文
- 地域の祭りに出すつもりで作った菓子が全国大会で入賞し、兎の罠に狐がかかる結果となった。
- 小さな注文を期待して商談に出向いたところ、大口の契約が決まり、まさに兎の罠に狐がかかる幸運だった。
- 図書館で一冊の資料を探しているうちに、研究に欠かせない未発表の記録まで見つかり、兎の罠に狐がかかる思いをした。
- 庭の片隅を片づけていた父は、なくした鍵だけでなく古い記念硬貨まで見つけ、兎の罠に狐がかかると喜んだ。
- 町内だけで使う予定だった案内図が観光客に評判となり、兎の罠に狐がかかる形で店の売り上げも伸びた。
- 練習のつもりで応募した作品が出版されることになり、彼女にとって兎の罠に狐がかかる出来事となった。
主な参考文献
・尚学図書編『故事・俗信ことわざ大辞典』小学館、1982年。
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・馬場俊臣「『兎』に関することわざ―兎をどう捉えてきたか―」『札幌国語研究』第17号、2012年。
・近松門左衛門『国性爺合戦』1715年。























