【ことわざ】
馬を得て鞭を失う
【読み方】
うまをえてむちをうしなう
【意味】
一方を得たかわりに、もう一方を失うことのたとえ。また、目的の物は手に入れたが、それを活用する手段がなくなること。


【英語】
・a trade-off(一方を得るかわりに、もう一方をあきらめること)
【類義語】
・馬を得て鞍を失う(うまをえてくらをうしなう)
「馬を得て鞭を失う」の語源・由来
「馬を得て鞭を失う」は、馬を手に入れても、その馬を進ませるための鞭を失ってしまえば、十分に活用できないという具体的な姿から生まれたことわざです。馬そのものは目的の物であり、鞭はその目的を生かすための手段を表しています。
鞭は、馬や牛などを打って進ませるための道具です。そこで、馬を得ることは一つの大きな利益ですが、同時に鞭を失えば、その利益を思うように使えなくなる、という筋立てになります。
このことわざの中心には、「得る」と「失う」が同時に起こるという見方があります。何かを手に入れた喜びだけでなく、その代わりに失ったものが本当に小さいものだったのかを考えさせる表現です。
また、このことわざは、単に損得が半分ずつになるという意味にとどまりません。目的の物を得ても、それを使うための手段を失ってしまえば、目的そのものの価値まで十分に発揮できなくなる、という点を含んでいます。
馬は、古くから人間の生活に近い動物でした。荷を運ぶことや人が乗ることに関わるため、「馬」を含むことわざは多く、特に飼育や乗馬に関わる表現が数多く作られてきました。
その中で、「鞍(くら)」や「鞭(むち)」は、馬を用いる場面に欠かせない道具として考えられました。「馬を得て鞍を失う」と「馬を得て鞭を失う」は並んで扱われ、一方を得たかわりに一方を失うこと、また目的の物は得たものの、それを活用する手段がなくなることを表します。
「鞍」を失う形では、馬に乗るための備えがなくなることが強く意識されます。一方、「鞭」を失う形では、馬を走らせたり、思う方向へ進ませたりするための手段が失われることが、分かりやすく表れています。
この表現が現在の意味で使われるとき、実際の馬や鞭を指す必要はありません。たとえば、新しい道具を手に入れたのに使い方を学ぶ時間を失う、仕事を得たのに健康をそこなう、といった場面にも当てはまります。
似た形の「馬を得て鞍を失う」は、同じ発想を別の馬具で表した言い方です。どちらも、目的の物だけでなく、それを役立てるための条件までそろって初めて意味がある、という考えを伝えています。
したがって、「馬を得て鞭を失う」は、何かを得ることだけに気を取られず、その後に必要な手段や準備を失っていないかを省みることわざです。得たものを生かすためには、周りの条件も大切にしなければならない、という教えを含んでいます。
「馬を得て鞭を失う」の使い方




「馬を得て鞭を失う」の例文
- 新しい自転車を買ったのに鍵をなくして乗れず、馬を得て鞭を失う結果になった。
- 高性能のパソコンを手に入れても、充電器を忘れては馬を得て鞭を失うようなものだ。
- 大会に出る資格を得たのに、練習場所を失ったのでは馬を得て鞭を失うことになる。
- 大きな契約を取ったが、担当できる人員が足りず、馬を得て鞭を失う形になった。
- 便利なアプリを入れても、使い方を学ばなければ馬を得て鞭を失うに近い。
- 家を建てる土地を得たものの、資金計画が崩れてしまい、馬を得て鞭を失う思いをした。
主な参考文献
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・馬場俊臣「『馬』に関することわざ:「馬」をどう捉えてきたか」『札幌国語研究』第20号、北海道教育大学国語国文学会・札幌、2015年。
・Merriam-Webster.com Dictionary, “trade-off.”























