【ことわざ】
鬼の首を取ったよう
【読み方】
おにのくびをとったよう
【意味】
さほどでもないことを、大きな手柄を立てたかのように喜び、得意げに振る舞うさま。


【英語】
・behave as if one had accomplished a great feat(大きな手柄を立てたかのように振る舞う)
【類義語】
・得意満面(とくいまんめん)
・勝ち誇る(かちほこる)
・したり顔(したりがお)
「鬼の首を取ったよう」の語源・由来
「鬼の首を取ったよう」は、昔の戦で敵の首を討ち取り、大きな戦功を立てた者が得意になる姿をもとにした言い方です。討ち取った敵の首は、戦功を示す証拠となり、後日の論功行賞(ろんこうこうしょう)に用いられました。特に、名の知られた武将の首を取ることは、大きな恩賞につながるほどの手柄でした。
討ち取った首が誰のものか、また、誰がどのように討ち取ったのかを確かめる儀式を、首実検(くびじっけん)といいます。敵の首を戦功の証とする慣行は古く、平安時代の記録にも、討ち取った者の首を都へ運んだことが書かれています。
このような武士の慣行に、「鬼」という想像上の強敵が重ねられました。普通の人間よりもはるかに強く恐ろしい鬼を倒し、その首まで取ることができれば、これ以上ないほどの大手柄となるはずです。そのため、「鬼の首を取る」は、並外れて重大な功績を立てることのたとえとなりました。
現在の表現につながる初出例は、浮世草子(うきよぞうし)『傾城禁短気(けいせいきんたんき)』(1711年・江戸時代、八文字自笑作、江島其磧代作)の第二巻にあります。この作品は、宝永8年に京都で刊行された全六巻の読み物です。
作中では、ある人物の勢いを「鬼の首も取たやう成勢ひ」と表しています。現代の言い方に直せば、「鬼の首でも取ったかのような勢い」という意味で、実際に大手柄を立てたわけではないのに、ひどく得意になっている様子を描いています。
この古い用例では、現在の「鬼の首を取ったよう」とは少し異なり、助詞に「も」を用い、「取ったよう」を「取たやう」と書いています。しかし、鬼の首を取るほどの大功を成し遂げた人物になぞらえて、得意げな態度を表す仕組みは、すでに現在と同じです。
近代になると、「鬼の首でも取ったよう」という形も広く使われました。武者小路実篤の小説『友情』(1919年・大正8年)には、わずかな会話から知りたかった事実を聞き出した人物について、「鬼の首でもとったように嬉しかった」とあります。ここでは、大きな成果とはいえない出来事を、本人だけが大手柄のように喜ぶ様子を表しています。
このように、もとは戦場での大きな手柄を思わせる表現でしたが、実際の用法では、その大げささを逆に利用しています。現在では、正当に誇るべき大功を立てた人よりも、ささいな成果を必要以上に誇る人を、軽く批判したり、からかったりするときに用いることわざです。
「鬼の首を取ったよう」の使い方




「鬼の首を取ったよう」の例文
- 弟の計算間違いを一つ見つけただけで、兄は鬼の首を取ったように得意になった。
- 母の言い間違いを指摘した父は、鬼の首を取ったような顔をしていた。
- 練習試合で一度勝っただけなのに、彼は鬼の首を取ったように喜んでいる。
- 同僚の小さな入力ミスを見つけた彼は、鬼の首を取ったように上司へ報告した。
- 議論の相手が言葉に詰まると、彼女は鬼の首を取ったように勝ち誇った。
- 町内会の書類に誤字を一つ見つけ、彼は鬼の首を取ったような口ぶりで皆に知らせた。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』全3巻、小学館、2005〜2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・近藤いね子・高野フミ編集主幹『プログレッシブ和英中辞典 第4版』小学館、2011年。
・八文字自笑作、江島其磧代作『傾城禁短気』1711年。
・武者小路実篤『友情』1919年。























