【ことわざ】
牛追い牛に追わる
【読み方】
うしおいうしにおわる
【意味】
物事がさかさまになり、本来の立場や役目が逆になることのたとえ。主客転倒。


【英語】
・the tables are turned(立場が逆転する)
【類義語】
・主客転倒(しゅかくてんとう)
・石が流れて木の葉が沈む(いしがながれてこのはがしずむ)
・車は海へ船は山へ(くるまはうみへふねはやまへ)
【対義語】
・順当(じゅんとう)
「牛追い牛に追わる」の語源・由来
「牛追い牛に追わる」は、牛を追って歩かせる立場の人が、反対に牛から追われる姿をもとにしたことわざです。「牛追い」は、牛を追って歩かせること、またはその人を指す言葉です。
本来の情景では、人は牛を動かす側にいます。ところが、このことわざではその関係がひっくり返り、牛を追うべき人のほうが、牛に追い立てられます。
「追う」には、先に進むものに追いつこうとして後から行く、追いかけるという意味があります。そのため、「牛を追う」は人が牛の後ろから動かす向きを表し、「牛に追わる」は牛のほうが人を追う向きを表します。
このことわざの面白さは、「追う」と「追わる」が、同じ動きの向きを逆にしているところにあります。前半では人が動かす側、後半では人が動かされる側となり、一つの短い表現の中で、主と従の関係が入れ替わります。
表記には、「牛追牛に追わる」という形もあります。送り仮名を添えて「牛追い牛に追わる」と書いても、意味は同じで、物事がさかさまになることを表します。
この「さかさま」は、単に上下や前後が逆になることだけではありません。人の立場、役割、力関係、物事の軽重などが逆になることも含みます。
近い考え方に「主客転倒」があります。これは、主人と客の立場が逆になることから広がり、人の立場・順序・軽重などが逆になることを表します。
また、「石が流れて木の葉が沈む」は、重い石が流れ、軽い木の葉が沈むという、道理と逆のありさまをたとえた言い方です。「牛追い牛に追わる」と同じく、普通ならそうならないはずの逆転を表します。
「車は海へ船は山へ」も、車は陸、船は水という本来の働きに反して、物事が逆さまになることを表します。これらの類義語と比べると、「牛追い牛に追わる」は、特に人の立場や役目が逆転する場面に使いやすい表現です。
現在の使い方では、教える側が教えられる側になる、管理する側が管理される側になる、指示する人が相手に動かされる、といった場面に当てはまります。牛を追うはずの人が牛に追われる姿が、そのまま「本来の関係が反対になること」の分かりやすいたとえになっています。
「牛追い牛に追わる」の使い方




「牛追い牛に追わる」の例文
- 新人に手順を教えるつもりだった先輩が、逆に新しい機械の使い方を教わり、牛追い牛に追わる形になった。
- 弟の宿題を見ていた兄が、計算ミスを弟に直され、牛追い牛に追わることとなった。
- 司会役が会議を進めるはずだったのに、参加者に次々と段取りを指示され、牛追い牛に追わる状態になった。
- チームをまとめるつもりの部長が部員に動かされてばかりでは、牛追い牛に追わると言われても仕方がない。
- 子どもに片づけ方を教えるつもりの親が、整理のこつを子どもから教わり、牛追い牛に追わるようだった。
- 観光客を案内するはずの係員が地元の小学生に近道を教えられ、牛追い牛に追わる場面になった。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・HarperCollins Publishers『Collins COBUILD Advanced Learner’s Dictionary』HarperCollins Publishers。























