【ことわざ】
馬も買わずに鞍を買う
【読み方】
うまもかわずにくらをかう
【意味】
物事の順序や段取りが反対になっていることのたとえ。大事なものをまだ整えないうちに、先に付属するものを用意してしまうこと。


【英語】
・put the cart before the horse(物事を間違った順序で行う)
【類義語】
・本末転倒(ほんまつてんとう)
・主客転倒(しゅかくてんとう)
「馬も買わずに鞍を買う」の語源・由来
「馬も買わずに鞍を買う」は、まだ馬を手に入れていないのに、先に鞍を買ってしまうところから生まれたことわざです。馬があってこそ鞍が必要になるため、順序が逆になっていることを分かりやすく表しています。
「鞍(くら)」は、馬に乗るための装置を広く指す言葉です。古くは馬具全体を指すこともあり、馬の背に置いて人が乗るための大切な道具でした。
『古事記』(712年・奈良時代、太安万侶撰録)にも、「片御手は御馬の鞍に繋け、片御足は其の御鐙に蹈み入れて」という鞍の用例が出てきます。ここでは、馬に乗る場面の中で、鞍と鐙が人の体を支える道具として出てきます。
日本列島で馬の使用と乗馬が広がったのは、古墳時代の中ごろ、5世紀ごろからといわれます。馬は戦いの手段として用いられ始め、のちに交通、運搬、農耕などにも用いられるようになりました。
馬を使う暮らしでは、馬そのものと、馬を扱うための馬具とは切り離せない関係にありました。古墳から出土する馬具も、当時の乗馬や馬の利用を知る大切な手がかりになっています。
鞍は、乗る人の体を安定させるだけでなく、馬の背を傷つけないようにする役目も持ちます。鞍と敷物を組み合わせ、腹帯でしっかり締めることで、馬が動いても鞍がずれにくくなります。
そのため、本来は馬の大きさや背の形、使い道に合うように鞍を選ぶ必要があります。馬がまだ決まっていないうちに鞍を買うというたとえは、道具を先に用意しても、肝心の相手や目的に合わなければ役に立たないことを示しています。
このことわざには、「馬も買わずに鞍買う」という形もあります。「を」を入れた「馬も買わずに鞍を買う」は、現代の文として意味を取りやすい形であり、どちらも物事の順序が逆であることを表します。
馬に関することわざは数が多く、乗馬や飼育に関わるものも少なくありません。馬が交通、運搬、農耕、軍事などに関わる身近な動物であったため、馬をめぐる道具や扱い方も、たとえとして用いられやすかったのです。
「馬も買わずに鞍を買う」は、特定の人物の逸話をもとにした言葉ではなく、馬と鞍の実際の関係から生まれた生活上のたとえです。中心となるものを後回しにして、先に細部だけを整えようとする失敗を、馬と鞍の順序でやさしく戒める表現です。
「馬も買わずに鞍を買う」の使い方




「馬も買わずに鞍を買う」の例文
- 新しい部活動を作る許可も取らずにユニフォームだけ注文するのは、馬も買わずに鞍を買うようなものだ。
- 旅行の日程が決まっていないのに土産袋を先に買うのは、馬も買わずに鞍を買うに近い。
- 事業の内容を固める前に会社のロゴだけ作るのは、馬も買わずに鞍を買う考え方だ。
- 大会への出場が決まっていない段階で応援グッズを大量に用意するのは、馬も買わずに鞍を買うことになる。
- 家を建てる土地も決まっていないのに家具をそろえるとは、馬も買わずに鞍を買う話だ。
- 研究のテーマを決める前に表紙のデザインだけ考えるのは、馬も買わずに鞍を買うようで順序が悪い。
主な参考文献
・故事ことわざ辞典編集部『故事ことわざ辞典』。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・旺文社編『旺文社日本史事典 三訂版』旺文社、2000年。
・岡山県古代吉備文化財センター『乗馬の風習』岡山県、2004年掲載、2019年更新。
・京都国立博物館『博物館ディクショナリー245号 古墳時代の馬と馬具』京都国立博物館、2025年。
・公益社団法人中央畜産会『畜産ZOO鑑』中央畜産会。
・Cambridge University Press『Cambridge Advanced Learner’s Dictionary & Thesaurus』Cambridge University Press。























