【ことわざ】
親しき仲にも礼儀あり
【読み方】
したしきなかにもれいぎあり
【意味】
どんなに親しい間柄でも、相手を思いやる礼儀や節度を忘れてはいけないという教え。


【英語】
・Familiarity breeds contempt.(親しすぎるとかえって軽んじる気持ちが生まれる)
・Good fences make good neighbors.(よい境目がよい隣人関係をつくる)
【類義語】
・親しき仲に垣をせよ(したしきなかにかきをせよ)
・心安いは不和の基(こころやすいはふわのもと)
・よい仲も笠を脱げ(よいなかもかさをぬげ)
「親しき仲にも礼儀あり」の語源・由来
「親しき仲にも礼儀あり」は、中国の古い出来事をもとにした故事成語ではなく、人づきあいの経験から生まれたことわざです。中心にあるのは、親しさが深まるほど遠慮が薄れやすいので、かえって礼儀を大切にしなければならない、という考えです。
ここでいう「礼儀」は、堅苦しい作法だけを指す言葉ではありません。社会のきまりに合った交際上の動作や作法、あいさつのしかたなどを含む言葉で、相手を一人の人として大切に扱うふるまいにつながっています。
このことわざに近い古い形として、「親しき中に垣をせよ」があります。「親しき中に垣をせよ」は、親しい間柄でも礼儀を守らなければならず、親しさが過ぎてなれなれしくなると不和になる、という戒めを表します。古い用例として『北条氏直時代諺留』(1599年ごろ)に出てくる形が知られています。
「垣」は、家や土地の境目に立てる囲いです。この言い方では、実際の囲いではなく、人と人とのあいだに必要なけじめや節度を表しています。親しいからといって相手の領分に入り込みすぎないことが、よい関係を保つために大切だという発想です。
同じ考えは、「思う仲には垣をせよ」という形にも出ています。御伽草子(おとぎぞうし)『隠れ里』には、「おもふ中には、かきをせよといふ事あり、あまりちかきは、くぜつあり、とをきは花のかといへり」という古い用例があり、親しすぎると口げんかが起こりやすく、少し距離があるほうがよい、という考えが示されています。
さらに、俳諧の『世話尽』(1656年)には、「よき中には垣をする」という形が出てきます。ここでも「よい仲」「親しい仲」にこそ垣、つまりけじめが必要だという発想が受け継がれています。
これらの「垣をせよ」という言い方は、のちに「礼儀あり」という、より直接的で分かりやすい表現とも結びつきました。「親しき中に垣をせよ」の見出しには「礼儀あり」「礼あり」という形も並べられており、「垣」が表していたけじめが、「礼儀」という言葉で言い表されるようになったことが分かります。
現在は「中」ではなく「仲」と書く形が広く使われます。「仲」は人と人との間柄を表すため、現代の読者には意味を取りやすい表記です。一方で、古い形には「中」の表記も残っており、ことわざの形が時代とともに少しずつ整えられてきたことを示しています。
このことわざは、親しさを否定する言葉ではありません。むしろ、親しい関係を長く大切にするために、相手を尊び、敬い合う気持ちを忘れないようにする言葉です。現代の用例でも、礼は型どおりの作法だけでなく、相手を尊び敬い合うこととして説明されています。
「親しき仲にも礼儀あり」の使い方




「親しき仲にも礼儀あり」の例文
- 親友だからといって約束の時間に遅れてばかりいるのは、親しき仲にも礼儀ありに反する。
- 家族であっても相手の部屋に入る前には声をかけるべきで、親しき仲にも礼儀ありという考えが大切だ。
- 幼なじみに強い言葉を投げてしまい、親しき仲にも礼儀ありを忘れていたと反省した。
- 同じ班の友人に仕事を任せきりにせず、親しき仲にも礼儀ありを心に留めて感謝を伝えた。
- 長くつきあっている相手ほど、親しき仲にも礼儀ありを忘れないことが信頼を守る。
- 兄弟でゲームを借りるときも、親しき仲にも礼儀ありで、ひと言断ってから使うべきだ。
主な参考文献
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。























