みなさんは、「馬子にも衣装」という言葉をご存じでしょうか。
この言葉は、「まごにもいしょう」と読みます。
自分の孫はどんな服を着ても世界一かわいい、孫を目に入れても痛くない親ばかならぬ爺ばか,婆ばかを表現した言葉ではありません。
七五三で着飾ったお子さんのおばあさんに、
「あら。今日は七五三なの?きれいに着飾ってもらってよかったわね。馬子にも衣装だわ。」
なんて言ったら、激怒されることでしょう。
「馬子にも衣装」は他人や仲が良くない人に対して使う誉め言葉ではないのです。
多くの人が間違えている「馬子にも衣装」。
口にしてしまってから、相手に失礼な言葉だったと気が付いても遅いので、なぜ失礼に当たるのかを知るためにも本当の意味を調べてみましょう。
「馬子にも衣装」の正しい意味
「馬子にも衣装」とは、誰でも外面を飾れば立派に見える。
という意味です。
なんだか誉め言葉じゃなさそうですよね。
そして、孫に服を買い与える、孫は何を着てもかわいいという意味ではないですね。
「馬子」とは、「孫」でないなら何なんだ?
と疑問に思う方が多いことでしょう。
「馬子」とは、馬をひいて人や荷物を運ぶことを業とする人。うまおい。うまかた。
という意味です。
車社会の現代では存在しない仕事ですが、馬子は、身分が低い人が務める仕事と考えられていました。
そんな身分が低い馬子でも、高級な服を着て、身なりを着飾れば立派にみえるものだという意味になるのです。
「馬子にも衣装」の使い方
「馬子にも衣装」を誉め言葉に使うと失礼に当たることがわかりました。
「馬子にも衣装」は、褒められた際に、謙遜するために使ったり、身内や気が置けない仲間に、冗談として使うといいようです。
夫婦同士の会話で、
と使ったり、仲のいい友人同士で
という風に謙遜するときに使ったりします。
それから、冗談が通じる仲がいい人に対して、
と言ったり、
とい風に言ったりします。仲のいい人が着飾っている姿を見て、素直に褒めることができない時、冗談でからかう時に使います。
「馬子にも衣装」の類義語
「馬子にも衣装」の類義語はたくさんあります。
・鬼瓦にも化粧(おにがわらにもけしょう)
・木株にも物着せよ(きかぶにもものきせよ)
・着物が人をつくる(きものがひとをつくる)
・切株にも衣装(きりかぶにもいしょう)
・杭にも笠(くいにもかさ)
・猿にも衣装(さるにもいしょう)
・姿は作り物(すがたはつくりもの)
・木偶も髪かたち(でくもかみかたち)
・人形にも衣装(にんぎょうにもいしょう)
などです。
「鬼瓦にも化粧」は、どんな怖い顔の女性でも化粧できれいになることができるという意味です。
誰かのすっぴんの顔を見て、化粧ってすごいって思った経験のある方は、この言葉の意味を深く理解できていることでしょう。
例えるものが異なっても、ここで紹介した類義語は同じような意味で、着飾ったら立派に見えるという意味です。
「馬子にも衣装」の対義語
理解を深めるために、「馬子にも衣装」の対義語も紹介します。
・君着飾らざれば臣敬わず(きみきかざらざればしんうやまわず)
どんなに身分の高い人でも、着ているものが粗末であれば下品に見えること。
・公卿にも襤褸(くげにもつづれ)
高貴な人も粗末な衣服をまとっていれば下品に見えるということ。
・衣ばかりで和尚はできぬ(ころもばかりでおしょうはできぬ)
形だけ整っていても中身が伴わなければものの役には立たないというたとえ。
対義語には、馬子とは逆に、身分が高い人が卑しい服装をしていたら、それなりの身分にしか見えないという意味、外面だけよくしてもだめだという意味があります。
まとめ
「馬子にも衣装」の意味や使い方について紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
今まで間違えて覚えていたよという方は、正しい意味を理解することができましたか?
「馬子にも衣装」という言葉は、相手との距離感によっては、失礼な言葉になりえます。
とても危険なので、距離感が微妙な相手には使わないようにしたほうが良いかもしれませんね。
仲が良くない人に、「馬子にも衣装」と言われてショックを受けたあなたは、相手が「馬子にも衣装」の意味を知らなかっただけなんだと安心してください。きっと褒めるつもりで言ったんだと前向きに考えましょう。
「馬子にも衣装」と言われて嫌な気分になり、敬遠していたけれども、「馬子にも衣装」の正しい意味を教えてあげることで、二人の距離感が近くなったという様に、好転するかもしれませんよね。
間違えやすい言葉、「馬子にも衣装」。
誤った使い方で誰かが傷つくことが無いよう、正しい意味を知って使ってみましょう。