【ことわざ】
嘘を言えば地獄へ行く
【読み方】
うそをいえばじごくへゆく
【意味】
嘘をつくことは、とても悪いことだとして戒める言葉。嘘をつくと地獄へ行くという言い伝えをもとに、正直であることの大切さを教える。


【英語】
・Don’t tell lies(嘘をついてはいけない)
【類義語】
・嘘をつくと閻魔様に舌を抜かれる(うそをつくとえんまさまにしたをぬかれる)
・嘘つきは泥棒の始まり(うそつきはどろぼうのはじまり)
【対義語】
・嘘も方便(うそもほうべん)
「嘘を言えば地獄へ行く」の語源・由来
「嘘を言えば地獄へ行く」は、嘘をつくことを、死後に地獄へ落ちるほど重い悪い行いとして戒めることわざです。子どもにも分かりやすいように、目に見えない道徳を、地獄という恐ろしい世界の想像に結びつけて表しています。
「嘘をつく」とは、事実でないことを言うことです。「嘘を吐く」という言い方は古くからあり、『玉塵抄(ぎょくじんしょう)』(1563年・室町時代後期)には、「口にまかせてうそをついて」という用例が出てきます。
仏教では、地獄は、悪い行いをした者が死後に苦しみを受ける世界として説かれてきました。地獄では、閻魔大王が生前の罪を裁き、鬼が罰を加えると考えられていました。
嘘に当たる仏教語には「妄語(もうご)」があります。妄語は、五悪・十悪の一つで、うそをつくこと、また、その言葉を指します。
また、「妄語戒(もうごかい)」は、五戒・十戒の一つで、真実でないことを言って他人をあざむいてはいけないという戒めです。嘘を悪い行いとして強く戒める考えは、このような仏教の道徳と深く結びついています。
仏教の地獄観では、八熱地獄(はちねつじごく)という八種の恐ろしい地獄が説かれました。そこには、殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄語などを行った者が、死後におもむくとあります。
日本で地獄のありさまを広く思い描かせた書物に、源信の『往生要集(おうじょうようしゅう)』(985年・平安時代中期成立)があります。この書物は、地獄や極楽を説き、日本の浄土教、文学、美術に大きな影響を与えました。
『往生要集』には、地獄の鬼が熱い鉄の道具で罪人の舌を抜き、抜かれた舌がまた生えると再び抜く、という恐ろしい描写が出てきます。嘘と舌の罰とが結びつく背景には、このような地獄描写がありました。
閻魔(えんま)は、インドの神ヤマが仏教に取り入れられ、中国を経て日本に伝わった存在です。日本では、死者の生前の行いを裁く地獄の王として知られ、恐ろしい姿で罪を裁く存在として語られてきました。
閻魔については、うそつきの舌を抜き取るという俗説も広まりました。そのため、嘘をついた者が地獄で罰を受けるという考えは、「閻魔様に舌を抜かれる」という分かりやすい言い方でも親しまれるようになりました。
近い形のことわざとして、「嘘をつくと閻魔様に舌を抜かれる」があります。この表現には、嘘をいう者は死後の世界で地獄に落ち、閻魔大王に舌を引き抜かれるという民間説話にもとづく戒めという意味があります。
この近い表現の古い出典として、浮世草子『熊谷女編笠(くまがえおんなあみがさ)』(1706年・江戸時代前期、錦文流著)が挙げられます。『熊谷女編笠』は、実際の事件を扱った長編の浮世草子で、江戸時代の読み物の中にも、嘘と閻魔の罰を結びつける戒めが出ていたことを示しています。
「嘘を言えば地獄へ行く」は、この地獄や閻魔の言い伝えを、さらに短くした形です。舌を抜かれるという細かな罰の描写よりも、「地獄へ行く」という大きな恐ろしさを前面に出して、嘘をついてはいけないという教えを強く伝えます。
現在では、このことわざを文字どおりの地獄の説明として使うよりも、嘘をつくことの悪さを子どもにも分かりやすく教える言葉として使います。恐ろしい言い方ではありますが、その奥には、正直に話す心を大切にしようという教えがあります。
「嘘を言えば地獄へ行く」の使い方




「嘘を言えば地獄へ行く」の例文
- 祖母は、嘘を言えば地獄へ行くと孫に言い聞かせた。
- 財布を拾ったことを隠そうとした弟は、嘘を言えば地獄へ行くという言葉を思い出した。
- 嘘を言えば地獄へ行くと聞かされ、子どもたちは正直に話す大切さを学んだ。
- 母は、嘘を言えば地獄へ行くと脅すだけでなく、なぜ嘘が人を困らせるのかを説明した。
- 友人の失敗をごまかそうとしたが、嘘を言えば地獄へ行くと思い直して本当のことを話した。
- 嘘を言えば地獄へ行くということわざは、嘘を軽く見ないための戒めとして伝わっている。
主な参考文献
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・平凡社編『改訂新版 世界大百科事典』平凡社、2007年。
・源信『往生要集』985年。
・錦文流『熊谷女編笠』1706年。























