【ことわざ】
草腐しの雨は七日続く
【読み方】
くさくたしのあめはなのかつづく
【意味】
秋雨が、草を腐らせるほど何日も長く降り続くこと。


「草腐しの雨は七日続く」の語源・由来
「草腐し」は、草を腐らせるもの、つまり、草が傷むほど長く降る雨を表す言い方です。「腐し」のもとになった「くたす」は、「朽ちさせる」「腐らせる」という意味をもつ古い動詞です。
「くたし」は、「くたす」の連用形(れんようけい)が、名詞のように用いられた形です。同じ組み立てをもつ言葉に「卯花腐(うのはなくたし)」があり、卯の花を腐らせるほど降り続く雨を表します。
「くたす」という動詞そのものは、『万葉集(まんようしゅう)』(8世紀後半成立、奈良時代)にも使われています。また、卯の花を傷める雨を表す言い方は、謡曲『歌占(うたうら)』(1432年ごろ・室町時代前期)や、俳諧(はいかい)の作法書『御傘』(1651年・江戸時代前期)にも出てきます。ただし、「草腐しの雨は七日続く」ということわざそのものが、これらの古典に記されているわけではありません。
このことわざがいう雨は、秋に降る長雨です。夏から秋へと季節が移るころには、日本付近に秋雨前線(あきさめぜんせん)が現れ、前線が停滞すると、曇りや雨の日が続きやすくなります。そのため、秋雨は古くから「秋の長雨」とも呼ばれてきました。
雨が長く続けば、野の草は十分に乾かず、ぬれた状態が重なります。「草腐し」という言葉は、その様子を、草まで腐ってしまうほどの雨として、目に浮かぶ形で表しています。
「七日」は、この長雨の印象を具体的な日数で示したものです。古い辞典でも、意味を「秋雨の長びく」とまとめており、毎回必ず七日間降るという予報ではなく、秋雨が長く続きやすいことを強く印象づける言い方となっています。
書物に記された古い例として、『諺語大辞典(げんごだいじてん)』(明治43年、藤井乙男編)があります。そこには「草腐シノ雨ハ七日續ク」と掲げ、続けて「秋雨の長びくをいふ。」とあります。
この明治時代の表記では、助詞や送り仮名に片仮名を用い、「続」を旧字体の「續」で書いています。現在は「草腐しの雨は七日続く」と表記しますが、言葉の形と、秋雨が長引くという意味の中核は変わっていません。
「七日」は、このことわざでは「なのか」と読みます。一般の言葉としては「なぬか」と読む形も認められていますが、現代の書誌では、「くさくたしのあめはなのかつづく」という読みが示されています。
その後も、この言い方はことわざ辞典に収められ、秋の長雨を表すことわざとして伝えられています。草が傷むほど降り続くという身近な景色と、「七日」という覚えやすい日数を結び付けることで、秋雨の特徴を短く、印象的に伝えているのです。
「草腐しの雨は七日続く」の使い方




「草腐しの雨は七日続く」の例文
- 草腐しの雨は七日続くということわざを思わせる秋雨が、週の初めから降り続いた。
- 草腐しの雨は七日続くといわれる時季なので、遠足には雨天の場合の計画も用意した。
- 農家は草腐しの雨は七日続くを引き合いに出し、畑の排水路を早めに整えた。
- 草腐しの雨は七日続くというように、秋の長雨で庭の草はすっかり湿っていた。
- 商店街の催しは、草腐しの雨は七日続くという長雨に備え、屋内でも開けるよう準備された。
- 草腐しの雨は七日続くを思わせる天候のため、建設現場では作業日程が見直された。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・藤井乙男編『諺語大辞典』有朋堂書店、1910年。























