【ことわざ】
雷が鳴ると梅雨が明ける
【読み方】
かみなりがなるとつゆがあける
【意味】
梅雨の終わりごろに雷が鳴ると、やがて梅雨が明けて本格的な夏になることが多いという天気の言い伝え。


「雷が鳴ると梅雨が明ける」の語源・由来
「雷が鳴ると梅雨が明ける」は、空の変化から季節の移り変わりを読み取った言い伝えです。雷そのものが梅雨を終わらせるのではなく、梅雨の終盤には雷が起こりやすいという経験を、原因と結果のような短い言葉にまとめています。
この考えに通じる古い記録が、『多聞院日記(たもんいんにっき)』(1478〜1618年の記事を収める、興福寺多聞院の僧らによる日記)にあります。この日記は、奈良の興福寺にあった多聞院で書き継がれ、英俊の日記を主な内容としています。
天正11年(1583年・安土桃山時代)五月十八日条には、「今日雷なる、つゆあかると見たり」とあります。これは、今日雷が鳴り、梅雨が明けたように思われた、という意味です。
この記述は、現在のことわざと同じ形ではありません。しかし、雷を聞いて梅雨明けを判断する発想が、すでに16世紀後半に記録されていたことを示しています。
現在の「雷が鳴ると梅雨が明ける」という形では、「雷が鳴る」という目に見える前触れと、「梅雨が明ける」という季節の変化とが、条件と結果の形で結び付けられています。複雑な天候の移り変わりを、覚えやすく言い表したものです。
梅雨の後半になると、太平洋高気圧の勢力が次第に強まり、梅雨前線を北へ押し上げます。このとき、高気圧の縁を回る暖かく湿った空気が前線へ流れ込み、前線の活動が活発になることがあります。
梅雨前線の近くに暖かく湿った空気が流れ込み続けたり、上空へ冷たい空気が入ったりすると、大気の状態が不安定になり、積乱雲(せきらんうん)が発達しやすくなります。発達した積乱雲は、激しい雨とともに雷を起こします。
やがて太平洋高気圧がさらに勢力を強め、梅雨前線がその地域より北へ移ると、夏の高気圧に覆われ、晴天が続きやすくなります。このため、梅雨末期の雷が、本格的な夏の近づく合図として受け止められてきました。
ただし、雷は梅雨の終わりだけに鳴るものではありません。梅雨前線が停滞している最中でも、暖かく湿った空気や上空の寒気によって積乱雲が発達し、雷を伴う大雨になることがあります。
そのため、「雷が鳴れば必ず梅雨が明ける」という決まりとして受け取るのは適切ではありません。「梅雨明けには雷を伴うことが多い」という経験を表した言葉として、理解する必要があります。
このように、「雷が鳴ると梅雨が明ける」は、梅雨末期の雷雨と、その後に訪れる盛夏との結び付きを、長年の観察から言い表したことわざです。天気を正確に予報する決まりではなく、夏の訪れを感じ取るための、昔からの目安です。
「雷が鳴ると梅雨が明ける」の使い方




「雷が鳴ると梅雨が明ける」の例文
- 祖父は雷が鳴ると梅雨が明けるという言い伝えを思い出し、夏用のすだれを出した。
- 雷が鳴ると梅雨が明けると聞いて、子どもたちは青空の広がる日を待ち望んだ。
- 農家では、雷が鳴ると梅雨が明けるという昔の知恵を、夏仕事を始める目安の一つにしてきた。
- 雷が鳴ると梅雨が明けるとはいうものの、梅雨明けの判断には週間予報も確かめる必要がある。
- 梅雨末期の激しい雷雨を見て、母は雷が鳴ると梅雨が明けるという言葉を口にした。
- 雷が鳴ると梅雨が明けるということわざには、空を観察して季節を知ろうとした人々の知恵が表れている。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・小学館編『日本大百科全書』小学館、1984〜1994年。
・大後美保編『天気予知ことわざ辞典』東京堂出版、1984年。
・英俊ほか著、辻善之助編『多聞院日記』三教書院、1935〜1939年。























