【首振り三年ころ八年】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語・英語)

首振り三年ころ八年

【ことわざ】
首振り三年ころ八年

【読み方】
くびふりさんねんころはちねん

【意味】
尺八では、首やあごを動かして音を調節する技術を身につけるのに三年、コロコロという高度な奏法を身につけるのに八年かかるということ。転じて、芸や技術の習得には長い修練が必要であることのたとえ。

ことわざ博士
三年と八年は、基礎を覚えた後にも長い修練が続くことを印象深く表す年数だよ。
助手ねこ
尺八に限らず、芸事、スポーツ、仕事などの技術が短期間では身につかないことを説く場面で用いるニャン。

【英語】
・Practice makes perfect.(練習を重ねれば上達する)

【類義語】
・顎振り三年(あごふりさんねん)
・桃栗三年柿八年(ももくりさんねんかきはちねん)

「首振り三年ころ八年」の語源・由来

ことわざを深掘り

「首振り三年ころ八年」は、尺八(しゃくはち)の演奏技術を身につける難しさから生まれた言葉です。尺八は、管の上端にある歌口(うたぐち)へ息を吹き当て、指孔(ゆびあな)の押さえ方だけでなく、息の強さや唇、あごの角度を細かく調節して音を作る楽器です。

現在、一般に尺八と呼ばれるものは、主に普化尺八(ふけしゃくはち)の系統です。江戸時代には、普化宗(ふけしゅう)の虚無僧(こむそう)が法器として吹き、読経に代わる宗教的な曲から、しだいに芸術的な曲まで演奏するようになりました。

「首振り」とは、ただ大きく首を左右に振ることではありません。尺八には、あごを動かして音を揺らす「ユリ」や、指孔の押さえ方とあごの角度によって音を高くする「カリ」、低くする「メリ」などの奏法があり、わずかな動きによって音程や音色が変化します。こうした繊細な首やあごの使い方を習得するには長い練習が必要なため、「首振り三年」といいます。

「ころ」は、尺八の「コロコロ」という奏法を指します。一孔(いっこう)と二孔(にこう)の指を交互に素早く動かし、鳥や鹿などの鳴き声を思わせる連続した音を生み出す技法です。細かな指の動きを正確に保ちながら、美しい音色を響かせるのは難しく、その技を十分に身につけるには八年かかるという意味で、「ころ八年」と続きます。

三年と八年を組み合わせる形は、「桃栗三年柿八年」を尺八の修練へ応用したものと考えられます。比較的早い段階で身につく技を三年、さらに高度で時間を要する技を八年として並べることで、芸の道には段階があり、一つの技を覚えただけでは極めたことにならないと表しています。

「首振り三年」のほかに、「顎振り三年」という短い形もあります。「顎振り三年」は、尺八であごを振ることだけでも三年を要するという意味から、何事も身につけるには年月がかかることを表します。首とあごのどちらを言葉の表面に出すかは異なりますが、いずれも尺八の身体的な奏法をもとにした言い方です。

評論『脱出と回帰』(昭和26年、中井正一著)にも、「尺八で首ふり三年ということがある」とあります。ここでは、芸を始めたばかりの人が練習そのものを楽しむ時期を論じるために使われており、昭和中期には、「首ふり三年」という短い形が、芸の習得に時間がかかることを表す言葉として知られていました。

やがて、その意味は尺八の世界を越え、さまざまな芸や技術について、一人前になるには地道な鍛錬を積み重ねなければならないという教えに広がりました。「首振り三年ころ八年」は、上達を急ぐのではなく、基礎から順に学び、長い時間をかけて技を磨くことの大切さを伝えることわざです。

「首振り三年ころ八年」の使い方

健太
尺八クラブに入って二週間だけど、まだ音がかすれてしまうんだ。きれいな音を出すのは難しいね……。
ともこ
尺八は、息の当て方やあごの動かし方も大切だから、すぐに上手にならなくても不思議じゃないよ。
健太
先生も、首振り三年ころ八年というから、焦らず毎日少しずつ練習しようって言っていたよ。
ともこ
うん!まずは一つの音を丁寧に出すところから続ければ、少しずつ自分らしい音色になるね。

「首振り三年ころ八年」の例文

例文
  • 尺八の師匠は、首振り三年ころ八年という言葉を示し、毎日の基礎練習を怠らないよう弟子に教えた。
  • 書道を始めた妹に、祖父は首振り三年ころ八年だから、すぐに上手な字が書けなくても焦る必要はないと励ました。
  • 首振り三年ころ八年というように、熟練した職人の技は、短い研修だけで身につくものではない。
  • 少年は首振り三年ころ八年を胸に、試合に出られない時期も黙々と素振りを続けた。
  • 首振り三年ころ八年の覚悟で料理の修業を重ねた彼は、ようやく店の大切な一品を任された。
  • 研究者は、首振り三年ころ八年という言葉のとおり、長年の試行錯誤を経て新しい技術を完成させた。

主な参考文献

・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・独立行政法人日本芸術文化振興会『文化デジタルライブラリー 日本の伝統音楽 楽器編』2023年。
・中井正一「脱出と回帰」『思想』第326号、岩波書店、1951年。
・Cambridge University Press, 『Cambridge Dictionary.』




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