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【愚公山を移す】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・対義語・英語)

愚公山を移す

【故事成語】
愚公山を移す

【読み方】
ぐこうやまをうつす

【意味】
どんなに困難なことでも、怠らず努力を続ければ、やがて成し遂げられるというたとえ。

ことわざ博士
一人の力では終えられないほど大きな仕事も、根気よく努力を積み重ねれば達成できるという教えだよ。
助手ねこ
長い年月を要する目標に向かい、困難に負けず取り組み続ける場面に用いるニャン。

【英語】
・Where there’s a will, there’s a way.(強い意志があれば、困難なことにも道は開ける)

【類義語】
・雨垂れ石を穿つ(あまだれいしをうがつ)
・虚仮の一心(こけのいっしん)

【対義語】
・三日坊主(みっかぼうず)

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「愚公山を移す」の故事

故事成語を深掘り

「愚公山を移す」は、中国の道家の書『列子(れっし)』「湯問(とうもん)」篇に収められた寓話(ぐうわ)に由来します。『列子』は、戦国時代の思想家、列禦寇の著作と伝わりますが、現行の八編は、前漢末から晋代にかけて形づくられたと考えられています。

物語には、太行山(たいこうざん)と王屋山(おうおくざん)という二つの巨大な山が登場します。その山の北側には、九十歳になろうとする北山の愚公という老人が住んでいましたが、山に行く手をふさがれていたため、外へ出るたびに遠くを回らなければなりませんでした。

愚公は家族を集め、力を合わせて山を削り、南へまっすぐ通じる道を開こうと提案しました。妻は、愚公の力では小さな丘さえ崩せないのに、この二つの大山をどうするのか、また、掘り出した土や石をどこへ捨てるのかと疑問を示しました。

家族は、土や石を渤海(ぼっかい)のほとりまで運ぶことに決めました。愚公は、子や孫たちと岩を砕き、土を掘り、かごで遠くまで運び始めます。近所に住む未亡人の幼い子どもまで喜んで手伝いましたが、季節が一巡して、ようやく一度帰ってこられるほど、時間のかかる仕事でした。

その様子を見た河曲(かきょく)の智叟(ちそう)は、年老いた愚公のわずかな力では、山の草一本さえ取り除けないとして、愚かな企てだと笑いました。「智叟」は、知恵のある老人という意味をもつ名ですが、物語では、この人物が目先の困難だけを見て、愚公の長い見通しを理解できない役割を担っています。

愚公は深く息をつき、たとえ自分が死んでも子が残り、子は孫を生み、その先にも、子孫は絶えることなく続くと答えました。それに対して、山はこれ以上高くなりません。原文には、「子子孫孫、無窮匱也,而山不加増」とあり、子孫は限りなく続くが、山は大きくならないのだから、いつか必ず平らにできるという意味です。智叟は、返す言葉を失いました。

山を守る神は、愚公がいつまでも作業をやめないことを恐れ、その決意を天帝(てんてい)に伝えました。天帝は、愚公の誠実な志に心を動かされ、力の強い神の子二人に命じて、太行山と王屋山を別の場所へ運ばせます。それ以来、その土地には、人々の行き来を妨げる山がなくなったと結ばれています。

この物語では、一見すると無謀に思える仕事を始めた「愚公」が、遠い将来まで見通す知恵と、揺るがない意志を示します。一方、賢いはずの「智叟」は、すぐには成果が出ないという理由だけで、不可能だと決めつけました。名前の上での「愚」と「智」が、物語の結末では逆転しているところにも、この寓話の大切な意味があります。

『列子』の本文には、現在の故事成語が見出しのように置かれているのではなく、愚公が山を削ろうとする一連の物語が記されています。後に、その内容が「愚公移山」という四字にまとめられ、努力を続けて目標を達成することのたとえとして定着しました。

北宋(ほくそう)の詩人、張耒の「山海」には、「愚公移山寧不智」とあります。愚公が山を移そうとしたことは、どうして知恵のない行いといえようか、という意味であり、この時代には、「愚公移山」というまとまった形で、困難に屈しない意志を表すようになっていました。

日本では、『玉塵抄(ぎょくじんしょう)』(1563年・室町時代、惟高妙安著)に、「愚公と云者山にうちむいて」とあり、山に行く手をふさがれた愚公の物語が説かれています。これは、「愚公山を移す」という現在の形そのものではありませんが、室町時代には、この故事が日本でも漢籍の講釈を通して受け入れられていたことを示しています。

昭和初期の佐藤紅緑『一直線』(1930〜1931年)には、「愚公だよ、愚公は愚公らしく根気よく勉強するほうがいい」とあります。ここでは「愚公」が、利口に近道を探すよりも、根気よく努力を重ねる人物の象徴として用いられています。

こうして「愚公山を移す」は、一人の生涯では完成しないほどの大事業であっても、志を受け継ぎ、努力を積み重ねれば実現できるという教えを表すようになりました。ただ願うだけではなく、実際に石を砕き、土を運び続けた愚公の行動に、この故事成語の核心があります。

「愚公山を移す」の使い方

健太
校庭の花壇を、チョウが集まる花壇にしたいんだ。でも土は固いし、雑草もたくさん生えているよ……。
ともこ
一日では無理でも、毎週少しずつ土を耕して、花の種をまけばいいよ。愚公山を移すの気持ちで続けよう!
健太
そうだね。まず今日は、二人で花壇の端から雑草を抜いていこう。
ともこ
(三か月後)ずいぶんきれいになったね!春に花が咲くまで、これからも続けよう。
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「愚公山を移す」の例文

例文
  • 愚公山を移すの精神で研究を続け、ついに長年の課題を解決した。
  • 毎日少しずつ練習を重ねる姿は、まさに愚公山を移すという言葉にふさわしい。
  • 荒れた山に木を植え続けた住民たちは、愚公山を移すような努力で森をよみがえらせた。
  • 祖父は愚公山を移すの心構えで、何十年もかけて郷土の歴史を一冊の本にまとめた。
  • 難しい病気の治療法を見つけるには、愚公山を移すほどの根気が必要だ。
  • 町の人々は愚公山を移す覚悟で、何年もかけて古い水路を修復した。

主な参考文献

・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・鎌田正・米山寅太郎著『故事成語名言大辞典』大修館書店、1988年。
・小林信明著『新釈漢文大系22 列子』明治書院、1967年。
・惟高妙安『玉塵抄』1563年。
・張耒「山海」北宋。
・佐藤紅緑『一直線』1930〜1931年。
・Cambridge University Press & Assessment, 『Cambridge Advanced Learner’s Dictionary & Thesaurus.』





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