【ことわざ】
商いは門門
【読み方】
あきないはかどかど
【意味】
客をよく見て、それぞれの相手に合った品物や売り方を考えるのが商売のこつだということ。相手ごとの違いを見分ける大切さをいう。


【英語】
・Different men, different ways.(人それぞれ、合うやり方は違う)
・Different strokes for different folks.(人によって好みや合うやり方は違う)
・Better leave it to a specialist.(その道のことは専門家に任せるのがよい)
【類義語】
・餅は餅屋(もちはもちや)
・芸は道によって賢し(げいはみちによってかしこし)
・商売は道によって賢し(しょうばいはみちによってかしこし)
【対義語】
・十把一絡げ(じっぱひとからげ)
・画一(かくいつ)
・一律(いちりつ)
「商いは門門」の語源・由来
「商い」は売り買いのこと、「門門」は「かどかど」と読んで、家々の門や門口を表す古い言葉である。したがって、このことわざは、文字どおりには一つ一つの門ごとに向き合う商い、という形をしている。
「門門」という語そのものは、ことわざになる前から古く使われていた。1603〜1604年(慶長8〜9年・江戸時代初期)に刊行された『日葡辞書(にっぽじしょ)』には、大きな家屋敷のそれぞれの戸口や門を指す語として「かどかど」が載っている。
さらに、1691年(元禄4年・江戸時代前期)の咄本『軽口露がはなし(かるくちつゆがはなし)』には、「門かどかどをありく」という例が出てくる。ここでは、家々の門口を回って歩くことが、生きた言い方として使われていた。
この二つの古い例は、まだそのまま「商いは門門」という形ではない。けれども、「かどかど」が一軒一軒の門口、転じて家ごと・相手ごと、という感じをもつ言葉だったことは、そこからよく伝わってくる。
そこに「商い」が結びつくと、売り手が客をひとまとめにせず、それぞれの家、それぞれの人に合わせて応じる、という意味合いが自然に立ち上がる。門を次々くぐって客に向き合う姿を思い浮かべると、このことわざの言わんとするところが分かりやすい。
実際にこのことわざは、客をよく見て、その客に合った品物を売るのが商売のこつだ、という意味で受け継がれている。大切なのは、品物をただ並べることではなく、相手の年齢、使い道、好み、困りごとに合わせて、見せ方や説明のしかたまで変えることである。
商人の教えには、辛抱強く続けることを説くものや、元手の大切さを説くものも多い。たとえば「商いは牛の涎」は気長さを、「商い三年」は辛抱を教えるが、「商いは門門」はそれらとは少し違って、目の前の相手を見る力に重心を置いている。
近い言い方には「餅は餅屋」「芸は道によって賢し」「商売は道によって賢し」などがある。これらは専門の者がその道に強い、という点を教える言葉であり、「商いは門門」はそこにもう一歩進んで、同じ専門の中でも客ごとの違いに応じる細やかさを前に出している。
そのため、このことわざは昔の店先だけの話では終わらない。今でも、相手に合わせて説明を変える接客、必要に合った提案を組み立てる営業、利用者ごとに案内を工夫するサービスなどを考えるときに、そのまま通じる。
つまり「商いは門門」は、ただ売ることのうまさをいう言葉ではない。相手をよく見て、相手に合う形で応じることこそが商いの要である、と教えるところに、このことわざのいちばん大事な意味がある。
「商いは門門」の使い方




「商いは門門」の例文
- 学芸会の売店では、低学年向けの品と保護者向けの品を分けて並べるのが、まさに商いは門門であった。
- 八百屋の主人は、料理の相談に来た客には献立に合う野菜をすすめ、商いは門門を実践していた。
- 同じ文房具でも、受験生には書きやすさ、小さな子には持ちやすさを伝えるのが商いは門門である。
- 観光地の店で、遠方から来た客には持ち帰りやすい品を選んで勧めるのは、商いは門門の考え方に近い。
- 営業担当者が相手の業種ごとに提案書の内容を変えるのは、商いは門門の姿勢といえる。
- だれにでも同じ売り文句を繰り返すだけでは、商いは門門とはいえない。























