【ことわざ】
危ない所に登らねば熟柿は食えぬ
【読み方】
あぶないところにのぼらねばじゅくしはくえぬ
【意味】
危険を恐れていては、満足のいく結果や大きな利益は得られない、というたとえ。


【英語】
・Nothing ventured, nothing gained(思い切って試みなければ、何も得られない)
【類義語】
・虎穴に入らずんば虎子を得ず(こけつにいらずんばこじをえず)
・枝先に行かねば熟柿は食えぬ(えださきにいかねばじゅくしはくえぬ)
【対義語】
・君子危うきに近寄らず(くんしあやうきにちかよらず)
・危ない事は怪我の内(あぶないことはけがのうち)
「危ない所に登らねば熟柿は食えぬ」の語源・由来
「危ない所に登らねば熟柿は食えぬ」は、熟した柿を手に入れる場面から生まれたことわざです。熟柿(じゅくし)は、よく熟して柔らかくなった柿の実を指す言葉で、古くから秋の実りを表す語として使われてきました。
このことわざのもとには、熟した柿は木の上のほうにあり、そこまで登らなければ取れないという具体的な情景があります。しかも、柿の枝は柔らかく、実のある所まで近づくには落ちたり枝を折ったりする危険が伴います。
近い形に「枝先に行かねば熟柿は食えぬ」があります。こちらは、柿が枝先のほうから熟していくため、枝先へ行かなければよく熟した実を得られない、という見立てをよりはっきり示しています。
柿の木に登る危険は、単なる言葉の飾りではありません。果樹としてのカキは、枝先や新しい枝に被害が出やすく、材質が脆いため枝が折れたり垂れ下がったりすることがあります。また、収穫や管理をしやすくするために、樹高を低く仕立てて脚立を不要にする栽培法も示されています。高い所の実を取る作業には、それだけ危なさや手間があったことが分かります。
この具体的な柿取りの場面が、やがて「危険を避けているだけでは、よいものは手に入らない」という人生や仕事の教訓へ広がりました。熟した柿は、ただ待っているだけでは口に入らない価値あるものを表し、木に登る危なさは、その価値を得るために引き受ける困難や危険を表します。
ただし、このことわざは、むやみに危険なことをせよという意味ではありません。手に入れたいものが大きいときには、それに見合う努力や覚悟が必要だということを、柿の実という身近なものにたとえて教える言葉です。だから、無謀な行動をほめるよりも、必要な危険を見きわめて挑戦する場面にふさわしいことわざといえます。
「危ない所に登らねば熟柿は食えぬ」の使い方




「危ない所に登らねば熟柿は食えぬ」の例文
- 新しい店を出すには不安もあるが、危ない所に登らねば熟柿は食えぬと思って、父は準備を始めた。
- 難しい研究発表に挑むのは大変だが、危ない所に登らねば熟柿は食えぬという気持ちで資料を集めた。
- 海外で働く決心には勇気が要るが、危ない所に登らねば熟柿は食えぬと考えて、兄は語学の勉強を続けた。
- 強い相手との試合を避けていては成長できないので、危ない所に登らねば熟柿は食えぬと監督は選手を励ました。
- 新しい企画には失敗の心配もあるが、危ない所に登らねば熟柿は食えぬと、社員たちは試作品づくりに取り組んだ。
- ただ安全な方法を選ぶだけでは夢に近づけないと知り、危ない所に登らねば熟柿は食えぬという言葉を思い出した。
主な参考文献
・小学館『デジタル大辞泉』小学館。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹茶業研究部門『果樹の災害対策集』。























