【ことわざ】
麻殻に目鼻をつけたよう
【読み方】
あさがらにめはなをつけたよう
【意味】
ひどくやせて、骨と皮ばかりのように見える男性のさま。


【英語】
・as thin as a rake(ひどくやせている)
・skin and bones(骨と皮ばかりの姿)
・gaunt(病気や飢えのためにやせ細った)
【類義語】
・箸に目鼻(はしにめはな)
・骨と皮(ほねとかわ)
・末成りの瓢箪(うらなりのひょうたん)
・青瓢箪(あおびょうたん)
【対義語】
・卵に目鼻(たまごにめはな)
・ふくよか(ふくよか)
・恰幅がいい(かっぷくがいい)
「麻殻に目鼻をつけたよう」の語源・由来
このことわざの土台になっている麻殻は、麻の皮をはいだあとの茎です。別におがらともいい、細く、軽く、燃えやすいものとして昔の暮らしの中でよく知られていました。
麻殻は、お盆の迎え火や送り火に使う材としても親しまれてきました。1689年(元禄2年・江戸時代前期)刊の『曠野(あらの)』に苧殻売の句があり、町で売り歩かれるほど身近な品だったことが伝わります。
こうした身近さに加えて、麻殻には、細くてもろいという見た目の特色がありました。そのため、人の体つきをたとえる材料として使いやすく、弱々しい感じまでいっしょに思い浮かべさせる力がありました。
実際、同じ材料は「餓鬼に苧殻」ということわざにも出てきます。こちらは、折れやすい苧殻をふりまわしても何の役にも立たないというたとえで、麻殻が頼りなさや力の弱さを連想させるものだったことが分かります。
日本語には、身近な物に「目鼻」をつけて人の顔立ちや姿をたとえる言い方が古くからあります。色白で丸い顔をいう「卵に目鼻」や、色黒で目鼻立ちのはっきりしない顔をいう「炭団に目鼻」は、その代表的な例です。
やせた姿を表す流れでは、「箸に目鼻」という言い方も早くから知られていました。1708年(宝永5年・江戸時代前期)ごろ初演の浄瑠璃『傾城反魂香(けいせいはんごんこう)』に関わる語として「箸に目鼻の餓鬼阿弥」が伝わっており、ひどくやせ衰えた男の姿を思わせます。
さらに、1786年(天明6年・江戸時代後期)の諺語辞典『譬喩尽(たとえづくし)』には、「ところてんに目鼻付けたような者」が出てきます。細長い物に目鼻をつけて男のありさまを言う型が、このころにはすでに広く通じていたのです。
また、1787年(天明7年・江戸時代後期)ごろの狂文集『四方のあか(よものあか)』には、「卵に目鼻」の例がのこっています。丸い物、黒い物、細い物などを借りて顔や姿を言い表す言い方が、江戸のことば遊びと日常表現の両方で育っていたことがうかがえます。
その流れの中で生まれたのが、「麻殻に目鼻をつけたよう」という言い方と考えるのが自然です。麻殻は、箸やところてんよりも、乾いていて細く、しかも折れやすい感じが強いため、ただ細いだけでなく、骨ばって頼りなく見える印象まで一息に伝えられます。
ここで大事なのは、このことわざが単に細身の人をいうのではない点です。意味は、やせ方が目立ち、骨と皮ばかりのように見える男性の姿まで含めた、かなり強いたとえにあります。
なお、材料の名は日常語としては「おがら」と読むことも多いのですが、このことわざ自体は「あさがらに目鼻をつけたよう」という形で言いならされてきました。日本の暮らしの中で身近だった麻殻の姿と、江戸時代から続く「目鼻をつける」比喩の言い回しとが重なって、このことわざは定着したのです。
「麻殻に目鼻をつけたよう」の使い方




「麻殻に目鼻をつけたよう」の例文
- 長い入院のあとで退院した伯父は、麻殻に目鼻をつけたような姿になっていた。
- その小説の浪人は、麻殻に目鼻をつけたような体つきで、古びた羽織を揺らしていた。
- 飢饉を語る古い記録には、麻殻に目鼻をつけたような男たちが町をさまよったとある。
- 徹夜続きの青年は、麻殻に目鼻をつけたような顔で会議室に入ってきた。
- 舞台のやつれ役をした俳優は、衣装と化粧で麻殻に目鼻をつけたような人物に見えた。
- 祖父は若いころの写真を指して、麻殻に目鼻をつけたような時分もあったと笑った。























