【ことわざ】
大取りより小取り
【読み方】
おおとりよりことり
【意味】
一度に大きな利益を得ようとするよりも、小さな利益を少しずつ確実に積み重ねるほうがよいということ。


【類義語】
・大摑みより小摑み(おおづかみよりこづかみ)
「大取りより小取り」の語源・由来
「大取りより小取り」は、大きな利益を一度に手に入れることと、小さな利益を何度も得ることとを比べたことわざです。「大」と「小」を対照させることで、目立つ大もうけよりも、少額でも確実な利益を重ねるほうが、結果として安定した成果につながると教えています。
現在のことわざにつながる古い用例は、『郭中掃除雑編』(1777年・江戸時代中期、福輪道人著)に出てきます。この作品には、「大取より小取といふたとへのごとく」とあり、物事を軽くして、客の数が多くなるよう工夫することが第一だと続きます。
ここでいう「物事を軽くする」とは、一人の客から一度に大きな利益を得ようとせず、客が利用しやすいようにして、多くの客から少しずつ利益を得るという考え方を指しています。すでに江戸時代には、「大取より小取」が、商売を長く続けるための実際的な知恵として用いられていたのです。
この古い用例では、「大取より小取」という短い形が使われています。一方、同じ教えを、よりはっきりと命令の形で表した「大取するより小取をせよ」も伝わっており、一度に多く取るよりも、少しずつ取るほうがよい結果を得られるという意味です。
『諺語大辞典(げんごだいじてん)』(1910年・明治時代後期、藤井乙男編)には、「大取リセウヨリ小取リシロ」と「大取リヨリ小取リ」という二つの形が収められています。前者は、一度に大きな利益を得ようとせず、小さな利益を積み重ねるようにという意味で、後者は、その項目を参照する形になっています。
「大取リセウヨリ小取リシロ」は、「大取りをしようとするより、小取りをしろ」という呼びかけをそのまま表した形です。それに対して、「大取リヨリ小取リ」は、命令の部分を省き、大きな利益よりも小さな利益を選ぶという対比だけを残した簡潔な形です。
やがて、名詞に送り仮名を添えた「大取りより小取り」という表記が一般に用いられるようになりました。また、「大取りするより小取りしろ」という形も伝わっており、いずれも、少額の利益を着実に重ねる大切さを表します。
類義語の「大摑みより小摑み」も、一度に大きくもうけようとするよりも、少しずつ確実にもうけるほうが、最終的には成功しやすいという意味です。「取る」と「摑む」という言葉は異なりますが、大きな利益を一度に求めず、小さな利益を重ねるという教えは共通しています。
このことわざは、大きな目標をもつこと自体を否定するものではありません。一度の大成功だけを当てにするのではなく、小さな成果を確実に積み重ねることが、安定した成功へとつながるという、商売や仕事の堅実な進め方を伝えています。
「大取りより小取り」の使い方




「大取りより小取り」の例文
- 学級の募金活動では、大取りより小取りの考えで、一人に多額を求めず、少額の協力を広く呼びかけた。
- 商店主は大取りより小取りを守り、薄い利益でも常連客との取引を積み重ねた。
- 一度の大口注文に頼らず、小さな注文を確実に受ける姿勢は、大取りより小取りそのものだった。
- 農家は高値を待って収穫物を抱え込まず、大取りより小取りで少しずつ出荷した。
- 営業部は大取りより小取りを方針とし、少額の契約を着実に増やした。
- 派手な一発勝負を避けて毎月少しずつ利益を残す経営は、大取りより小取りの教えにかなう。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・藤井乙男編『諺語大辞典』有朋堂、1910年。
・福輪道人『郭中掃除雑編』1777年。























