【ことわざ】
大鳥取るとて小鳥も取り損なう
【読み方】
おおとりとるとてことりもとりそこなう
【意味】
欲張って大きな利益を得ようと無理をしたため、確実に得られたはずの小さな利益まで失うこと。


【英語】
・Grasp all, lose all(すべてをつかもうとすれば、すべてを失う)
【類義語】
・大欲は無欲に似たり(たいよくはむよくににたり)
・二兎を追う者は一兎をも得ず(にとをおうものはいっとをもえず)
「大鳥取るとて小鳥も取り損なう」の語源・由来
「大鳥取るとて小鳥も取り損なう」は、捕まえやすい小鳥がいるのに、欲を出して大きな鳥を狙った結果、どちらにも逃げられてしまう場面をたとえにしたことわざです。「とて」は、「……と言って」「……と思って」という意味を表す古い言い方なので、全体では「大鳥を取ろうと思って、小鳥まで取り損なう」という内容になります。
この表現では、「大鳥」が大きな利益や目立った成果を、「小鳥」が手近にあり、比較的確実に得られる小さな利益を表します。単に大きな目標に挑戦して失敗することではなく、欲張って無理な目標へ手を伸ばしたために、もともと手に入りそうだったものまで失う点が大切です。
鳥を捕らえる場面そのものが分かりやすいため、特定の人物の逸話を知らなくても意味が伝わります。獲物を前にした人が、目の前の小鳥を確実に捕らえるよりも、さらに価値がありそうな大鳥へ狙いを移すという筋立てによって、欲の深さと判断の誤りが一続きに表されています。
欲張らず、小さな利益を確実に積み重ねるべきだという近い発想は、江戸時代の言葉にもあります。『郭中掃除雑編』(1777年・江戸時代中期)には、「大取より小取」というたとえを用い、一度に大きな利益を得ようとするよりも、少しずつ得るよう工夫することが述べられています。
この「大取」は多く取ること、「小取」は少し取ることを指します。「大鳥取るとて小鳥も取り損なう」の直接の出所を示すものではありませんが、大きな利益を一度に求めるよりも、確かな小さな利益を重んじるという、共通した生活の知恵を表しています。鳥の大小を用いる現在の形では、その教訓が、目に浮かぶ失敗の場面として、いっそう印象深く示されています。
さらに、『徒然草』(1331年ごろ成立、鎌倉時代末期、兼好法師著)第二百十七段には、「大欲は無欲に似たり」とあります。財産を増やすことばかり考えて、持っている財産を使わず、願いもかなえない者は、結局、財産のない者と変わらないという文脈です。欲があまりに大きいと、かえって何も得られない結果に行き着くという点で、「大鳥取るとて小鳥も取り損なう」と通じています。
明治時代には、西洋に由来する「二兎を追う者は一兎をも得ず」も広まりました。日本語の古い実例としては、巖谷小波の『暑中休暇』(1892年・明治25年)に、「二兎を追ふ者は一兎を得ず」と出てきます。このことわざも、欲張って二つを求めれば、結局どちらも手に入らないという教訓を表します。
ただし、二つのことわざには、少し違いがあります。「二兎を追う者は一兎をも得ず」は、二つの目標を同時に追う失敗を主に表します。一方、「大鳥取るとて小鳥も取り損なう」は、確実に得られそうな小さなものを後回しにし、欲張って大きなものを狙ったために、元の小さなものまで失う失敗に重点があります。
このように、「大鳥取るとて小鳥も取り損なう」は、野心や挑戦そのものを戒める言葉ではありません。目の前にある確かな成果を軽く見て、欲に任せて無理をすると、最後には何も残らないことがあると教えることわざです。
「大鳥取るとて小鳥も取り損なう」の使い方




「大鳥取るとて小鳥も取り損なう」の例文
- 難問で満点を取ろうと時間を使い果たし、解ける問題まで空欄にしたのでは、大鳥取るとて小鳥も取り損なうとなる。
- 商店は大口の契約だけを狙って常連客からの注文を断ったが、契約にも失敗し、大鳥取るとて小鳥も取り損なう結果になった。
- 高級旅館の直前割引を待って手頃な宿の予約を取り消したところ、どちらにも泊まれず、大鳥取るとて小鳥も取り損なうことになった。
- 一社から巨額の協賛金を得ようとして地元企業の支援を断り、大鳥取るとて小鳥も取り損なう失敗を招いた。
- 安定した商品をすべて売って投機的な商品につぎ込むのは、大鳥取るとて小鳥も取り損なう危険がある。
- 海外での大成功ばかりを求めて国内の得意先を失った経営者は、大鳥取るとて小鳥も取り損なうという言葉を思い知った。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・近藤いね子・高野フミ編『小学館 プログレッシブ和英中辞典 第4版』小学館、2011年。
・『郭中掃除雑編』1777年。
・兼好法師『徒然草』1331年ごろ。























