【ことわざ】
踵で頭痛を病む
【読み方】
かかとでずつうをやむ
【意味】
見当違いの心配をすることのたとえ。心配すべき場所や問題の中心を取り違えていることを表す。


【英語】
・beside the point.(問題の本筋から外れている)
・wide of the mark.(見当違いである)
【類義語】
・人の疝気を頭痛に病む(ひとのせんきをずつうにやむ)
・隣の疝気を頭痛に病む(となりのせんきをずつうにやむ)
【対義語】
・的を射る(まとをいる)
「踵で頭痛を病む」の語源・由来
「踵で頭痛を病む」は、体の場所の取り違えを使って、心配の方向がずれていることを表すことわざです。「踵」は、足の裏の後部で、足首の下にあたる部分を指し、「かかと」と読みます。
「頭痛」は、もとは頭が痛むこと、またはその痛みを指す言葉です。さらに、悩んで頭を痛めること、苦労や心配事という意味でも用いられてきました。
「病む」は、病気にかかる、気分が悪くなるという意味のほか、精神的に苦しむ、心に悩むという意味ももっています。そのため、「頭痛を病む」は、文字どおり頭の痛みに苦しむことだけでなく、心配して悩むことを表す言い方にもなります。
このことわざの面白さは、痛む場所と心配する場所が合っていないところにあります。かかとの問題を、頭痛として心配しているように言うことで、心配の向け方そのものが的外れであることを分かりやすく表しています。
似た組み立てをもつ言い方に、「人の疝気を頭痛に病む」があります。「疝気(せんき)」は腹部の痛みをいう古い病名で、この言い方は、自分に関係のないことについて余計な心配をすることを表します。
「人の疝気を頭痛に病む」の古い用例としては、『桜河微言』(1777年・江戸時代中期、洒落本)の跋に「いらざる他人の疝気を頭痛にすることなかれ」という形が出てきます。これは、他人の腹の病を自分の頭痛のように心配するな、という意味で、余計な心配を戒める表現です。
また、「隣の疝気を頭痛に病む」という言い方もあります。こちらも、隣家の人の疝気を自分の頭痛のように心配することから、自分に関係のないことを心配するたとえとして用いられます。
これらの言い方では、「腹の病」と「頭痛」という、別の場所の病をあえて結びつけています。体の場所がずれていることを使い、心配する対象や方向がずれていることを、少しおかしみのある形で言い表しているのです。
「踵で頭痛を病む」も、同じ発想の上に成り立っています。ただし、ここでは「他人の病」ではなく、「かかと」と「頭痛」という、自分の体の中でも遠く離れた場所を対比させています。
かかとは足の後ろの部分であり、頭痛は頭に感じる痛みです。離れた二つの場所を組み合わせることで、本来見るべきところを見ず、別のところを気にしている様子がよりはっきり伝わります。
このことわざは、単に「心配しすぎる」というだけではありません。心配の量が多いことよりも、心配の向きが間違っていることに重点があります。
そのため、友人の失敗の原因を見誤るとき、仕事で本当の問題を取り違えるとき、家庭で別のことばかり気にして肝心な点を見落とすときなどに用いると、意味がよく合います。
現在の使い方では、的外れな心配や、問題の中心から外れた対応を戒める表現として働きます。かかとを気にすべきところで頭痛を心配するようなずれを示し、まず原因や本筋を正しく見ることの大切さを教えることわざです。
「踵で頭痛を病む」の使い方




「踵で頭痛を病む」の例文
- 資料の数字が誤っているのに表紙の色だけを気にするのは、踵で頭痛を病むようなものだ。
- 部員の練習不足を見ずにユニフォームの柄ばかり心配するのは、踵で頭痛を病む対応だ。
- 原因が連絡の遅れにあるのに会場の飾りつけだけを直しても、踵で頭痛を病むことになる。
- 友人が困っている理由を聞かずにおみやげの包装を心配するのは、踵で頭痛を病むに近い。
- 会社の売上が落ちた原因を調べずに受付の花だけを替えるのは、踵で頭痛を病む判断だ。
- 家族会議では、踵で頭痛を病むことのないように、まず家計が苦しい本当の理由を整理した。
主な参考文献
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・日本漢字能力検定協会編『漢検漢字辞典 第二版』日本漢字能力検定協会、2014年。
・Cambridge University Press, Cambridge Dictionary.
・HarperCollins, Collins COBUILD Advanced Learner’s Dictionary.























