【ことわざ】
海賊が山賊の罪をあげる
【読み方】
かいぞくがさんぞくのつみをあげる
【意味】
自分の悪い行いを棚に上げて、同じような悪い行いをした相手を非難すること。また、似た立場の者どうしでも、利害が合わなければ敵対すること。


【英語】
・the pot calling the kettle black(自分にも同じ欠点があるのに相手を責める)
【類義語】
・目糞鼻糞を笑う(めくそはなくそをわらう)
・猿の尻笑い(さるのしりわらい)
【対義語】
・人のふり見て我がふり直せ(ひとのふりみてわがふりなおせ)
「海賊が山賊の罪をあげる」の語源・由来
「海賊が山賊の罪をあげる」は、海で人の物を奪う海賊が、山で人の物を奪う山賊の罪を取り上げて責める、という形で成り立つことわざです。「賊である」という点では同じなのに、片方が片方を非難するところに、このことわざのおかしさと皮肉があります。
このことわざの「罪をあげる」は、相手の罪を取り上げて非難する、という意味で使われています。「責める」には、人の過失や罪などをとがめる意味があるため、このことわざでは、海賊が山賊の悪事を数え立てて責めるようすを表します。
古い形としては、「海賊が山賊の罪をあげる」のほか、「海賊が山賊の罪を数う」という形も伝わっています。「数う」は「数える」の古い言い方で、罪を一つ一つ数え上げるように責める表現につながります。
また、語順を入れ替えた「山賊の罪を海賊があげる」という形もあります。どちらの形でも、同じように悪い立場の者が、相手だけを悪者にして責めるという意味は変わりません。
このことわざは、中国の古い人物や事件に由来する故事をもとにした表現ではなく、海賊と山賊という分かりやすい対比から生まれた言い方です。海と山という場所は違っても、どちらも「盗みをはたらく者」として並べられるため、読者や聞き手は「人のことを責める前に、自分の悪さを見よ」という意味をすぐに受け取ることができます。
さらに、このことわざには、ただの自己中心的な非難だけでなく、同類であっても利害が合わなければ対立する、という意味もあります。海賊と山賊は、どちらも盗賊という点では同類ですが、仲間とは限りません。自分の利益を守るためなら、似た者どうしでも相手の罪を責めて敵に回る、という人間関係の皮肉も含んでいます。
近い発想のことわざに、「目糞鼻糞を笑う」や「猿の尻笑い」があります。これらも、自分の欠点に気づかず、他人の欠点を笑ったり責めたりする愚かさを表します。ただし、「海賊が山賊の罪をあげる」は、笑うよりも「罪を責める」という面が強く、さらに「似た者どうしの対立」という意味まで含むところに特徴があります。
現在の使い方では、友人どうしの小さな注意から、社会や仕事での批判まで、幅広く用いることができます。たとえば、約束を破った人が、別の人の遅刻だけを強く責めるような場面に当てはまります。相手を責める言葉であると同時に、自分自身も同じことをしていないかを振り返らせることわざです。
「海賊が山賊の罪をあげる」の使い方




「海賊が山賊の罪をあげる」の例文
- 自分も宿題を忘れたのに友人の忘れ物を責めるのは、海賊が山賊の罪をあげるようなものだ。
- 規則を守っていない委員が他の班の違反だけを強く言う姿は、海賊が山賊の罪をあげるに近い。
- 遅刻の多い人が一度遅れた新人を責め立て、海賊が山賊の罪をあげるような印象を与えた。
- 兄は自分の部屋を片づけないのに弟の机の散らかりを注意し、海賊が山賊の罪をあげる結果になった。
- 不正をした会社が他社の小さな違反を非難しても、海賊が山賊の罪をあげると受け取られかねない。
- 相手を責める前に自分の行いを見直さなければ、海賊が山賊の罪をあげることになる。
主な参考文献
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・現代言語研究会著『日本語を使いさばく 故事ことわざの辞典』あすとろ出版、2007年。
・学研辞典編集部編『用例でわかる故事ことわざ辞典』学研、2005年。























