【故事成語】
頭を懸け股を刺す
【読み方】
こうべをかけももをさす
【意味】
苦労して勉学に励むこと。眠気やつらさに負けず、強い意志で学問を続けることのたとえ。


【英語】
・burn the midnight oil.(夜遅くまで勉強や仕事をする)
【類義語】
・蛍雪の功(けいせつのこう)
・円木警枕(えんぼくけいちん)
・懸梁刺股(けんりょうしこ)
【対義語】
・不学(ふがく)
「頭を懸け股を刺す」の故事
「頭を懸け股を刺す」は、中国に伝わる二つの苦学の故事を合わせた故事成語です。「頭を懸ける」は孫敬(そんけい)の話、「股を刺す」は蘇秦(そしん)の話に基づきます。
「頭を懸ける」のもとになった孫敬は、文宝(ぶんぽう)という字をもつ学者として伝わります。『蒙求』(唐代、李瀚著)には「匡衡鑿壁,孫敬閉戶」とあり、孫敬が戸を閉ざして学問に励んだ人物として取り上げられています。
この「孫敬閉戸」という言い方は、家にこもって熱心に読書した孫敬の姿を表しています。後の注釈では、孫敬が眠気を防ぐために縄を頭や首にかけ、その縄を梁(はり)につないで読書した話として伝えられます。
中国で初学者向けに広く読まれた『三字経』にも、「頭懸梁 錐刺股 彼不教 自勤苦」とあります。これは「頭を梁に懸け、錐で股を刺す。彼らは人から教えられなくても、自らつとめ苦しんだ」という意味です。
『三字経』のこの箇所では、孫敬と蘇秦の二人を、学問に向かう強い意志の例として並べています。大切なのは、苦しさそのものではなく、人に強いられず、自分から努力した点です。
「股を刺す」のもとになった蘇秦は、中国の戦国時代に活躍した遊説家です。秦(しん)に自分の策を用いてもらえず、失意のうちに帰郷したあと、家族からも冷たくされ、ふたたび学問と弁論の研究に打ち込みます。
『戦国策』(前漢末、劉向編)「秦策」には、蘇秦が夜に書物を出し、太公の陰符の謀を得て、伏して読み、揣摩(しま:相手の心を推し量って説く術)を学んだことが記されています。
同じ場面には、「讀書欲睡,引錐自刺其股,血流至足」とあります。蘇秦は読書中に眠くなると、錐(きり)を取って自分の股を刺し、血が足まで流れるほどであったという、非常に激しい苦学の姿を示す記述です。
このあと蘇秦は、揣摩の術を身につけ、当世の君主を説けると考えるまでになります。やがて趙王に説を述べて喜ばれ、武安君に封じられ、六国を結びつけて強い秦に対抗する合従策で知られる人物となります。
つまり、孫敬の話は「眠らずに読書し続ける工夫」を、蘇秦の話は「失敗のあとに奮起して学び抜く姿」を表しています。この二つが結びつき、「頭を懸け股を刺す」は、身を削るほど熱心に学問へ打ち込むことのたとえになりました。
ただし、現在この故事成語を使うときは、実際に体を傷つけることをすすめる意味ではありません。昔の極端な故事を借りて、眠気や困難に負けないほどの努力を比喩的に表します。
したがって、この言葉は、遊びたい気持ちや眠気をこらえ、目標のために学び続ける強い姿勢を表すときに用います。厳しい表現ではありますが、学問に向かう覚悟と勤勉さを伝える故事成語です。
「頭を懸け股を刺す」の使い方




「頭を懸け股を刺す」の例文
- 兄は医師を目指し、頭を懸け股を刺す思いで受験勉強に励んだ。
- 彼女は留学試験に合格するため、頭を懸け股を刺すように英語を学んだ。
- 研究者たちは新しい発見を求め、頭を懸け股を刺す努力を重ねた。
- 苦手な数学を克服するため、彼は頭を懸け股を刺す覚悟で毎日机に向かった。
- 昔の学者には、頭を懸け股を刺すほど学問に打ち込んだ人々がいた。
- 頭を懸け股を刺すような勉強ぶりが実り、彼は難しい資格試験に合格した。
主な参考文献
・北京・商務印書館・小学館編『中日辞典 第3版』小学館、2016年。
・劉向編『戦国策』前漢末。
・李瀚『蒙求』唐代。
・『三字経』。























