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【食わず貧楽高枕】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語・英語)

食わず貧楽高枕

【ことわざ】
食わず貧楽高枕

【読み方】
くわずひんらくたかまくら

【意味】
名誉や利益をむやみに求めず、生活は貧しくても、心安らかに暮らすことのたとえ。

ことわざ博士
「食わず」は食べ物にも不自由するほどの貧しさ、「貧楽」は貧しい中に楽しみを見いだすこと、「高枕」は心配なく眠ることを表すよ。
助手ねこ
物やお金が少なくても、欲に振り回されず、穏やかに生活している人を表す場面に用いるニャン。

【英語】
・A contented mind is a continual feast.(満ち足りた心は絶えないごちそうである)

【類義語】
・貧にして楽しむ(ひんにしてたのしむ)
・一箪の食一瓢の飲(いったんのしいっぴょうのいん)

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「食わず貧楽高枕」の語源・由来

ことわざを深掘り

「食わず貧楽高枕」は、「食わず貧楽」という言い方に、心配なく眠ることを表す「高枕」を重ねたことわざです。食事にも不自由するほど貧しくても、名誉や利益を追い求めず、今ある暮らしの中に楽しみを見つければ、夜は安心して眠れるという境地を表します。

このことわざの中核となる「貧楽(ひんらく)」は、貧しいためにかえって気楽であること、または、貧しい境遇にあっても楽しみを失わないことを指します。その背景には、『論語(ろんご)』(中国・春秋時代から戦国時代初期、孔子と弟子たちの言行を記した書物)の「学而(がくじ)」に述べられた「貧にして楽しみ、富みて礼を好む」という考え方があります。

『論語』では、弟子の子貢(しこう)が、貧しくても人にへつらわず、富んでもおごらない人物について、孔子に尋ねます。孔子は、その生き方を認めながらも、さらに上の境地として、貧しい中でも正しい生き方を楽しみ、富んでも礼を大切にする人物を挙げました。貧しさをただ耐えるのではなく、財産の多さに左右されず、自分の生き方に喜びを見いだすことを重んじた言葉です。

日本で「食わず貧楽」の形が使われた古い例は、『後撰夷曲集(ごせんいきょくしゅう)』(1672年・江戸時代前期、生白堂行風編)に出てきます。この書物は、全十巻からなる狂歌集で、『古今夷曲集』のあとを継ぐ作品として刊行されました。

『後撰夷曲集』巻三には、「あばらやに独ねながらもち月を見あかす人やくはすひんらく」とあります。傷んだ粗末な家で一人寝をしながらも、満月を眺めて夜を明かす人こそ「食わず貧楽」だ、と詠んだ歌です。食べ物や立派な住まいには恵まれていなくても、美しい月を楽しむ心までは失っていない人物の姿を表しています。

この古い用例では、「食わず」を歴史的仮名遣いで「くはす」と書き、「高枕」はまだ続いていません。それでも、粗末な家で独り暮らしをしながら、月を眺めて心豊かに過ごすという内容には、現在のことわざと同じ考え方が、すでに表れています。

一方の「高枕(たかまくら)」は、もともと高く作った枕、または、枕を高くして寝ることを表す言葉です。『今昔物語集(こんじゃくものがたりしゅう)』(1120年ごろ成立、平安時代後期)には、「高枕して寝ぬ」という用例があり、のちには、心配事がなく、安心して眠ることのたとえとして広く使われるようになりました。

「食わず貧楽」に「高枕」を続けることで、貧しい中にも楽しみを見つける心と、悩みに追われず、安心して眠る姿とが一続きになります。「食わず」は、まったく食事を取らないという意味ではなく、食べ物に不自由するほど質素な暮らしを強く表した言い方です。

このことわざは、貧しさそのものを無条件にほめたり、必要な食事まで我慢するよう勧めたりするものではありません。富や名声を得ることだけを人生の目的にせず、暮らしが質素であっても、身近な喜びを大切にし、心穏やかに生きる姿を表します。

つまり、「食わず貧楽高枕」は、持っている物の多さと心の安らかさとは、必ずしも同じではないことを教えることわざです。物質的には恵まれなくても、欲張らず、自分の暮らしに満足している人は、心配に追い立てられず、安心して眠ることができるという意味へつながっています。

「食わず貧楽高枕」の使い方

健太
うちのおじいちゃん、ぜいたくな物は持っていないのに、毎朝とても楽しそうなんだ。
ともこ
庭の野菜を食べて、好きな本を読んで、夜はぐっすり眠るのが幸せなんだって!
健太
食わず貧楽高枕ということだね。物が少なくても、心は豊かに暮らせるんだ。
ともこ
私も、ほしい物ばかり数えず、今ある楽しみを大切にしたいな!
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「食わず貧楽高枕」の例文

例文
  • 食わず貧楽高枕というように、祖父は質素な食事と読書を楽しみ、毎日を穏やかに暮らしている。
  • 財産はなくても家族と笑って過ごせる彼の生活は、まさに食わず貧楽高枕だ。
  • 食わず貧楽高枕の心境で、彼女は名誉を求めず、小さな畑を耕しながら静かに暮らした。
  • 収入が減っても身近な楽しみを失わない両親を見て、食わず貧楽高枕という言葉を思い出した。
  • 食わず貧楽高枕を信条とする店主は、店を大きくすることより、客との温かな交流を大切にしている。
  • 物の豊かさだけを追い求めず、食わず貧楽高枕のような心安らかな生活にも目を向けたい。

主な参考文献

・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・生白堂行風編『後撰夷曲集』1672年。
・『論語』。
・『今昔物語集』1120年ごろ成立。





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