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【黒犬に嚙まれて灰汁の垂れ滓に怖じる】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語・対義語・英語)

黒犬に嚙まれて灰汁の垂れ滓に怖じる

【ことわざ】
黒犬に嚙まれて灰汁の垂れ滓に怖じる

【読み方】
くろいぬにかまれてあくのたれかすにおじる

【意味】
一度ひどい目に遭うと、それに似た物や出来事まで、すべて怖く思うようになることのたとえ。

ことわざ博士
黒犬にかまれた人が、灰汁を取ったあとの滓まで黒犬と思って怖がる様子を表すんだよ。
助手ねこ
過去の恐ろしい経験にとらわれ、危険ではない似た物にまでおびえる場面に用いるニャン。

【英語】
・A burnt child dreads the fire.(火傷をした子どもは火を怖がる)

【類義語】
・蛇に噛まれて朽ち縄に怖じる(へびにかまれてくちなわにおじる)
・羹に懲りて膾を吹く(あつものにこりてなますをふく)

【対義語】
・火傷火に懲りず(やけどひにこりず)

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「黒犬に嚙まれて灰汁の垂れ滓に怖じる」の語源・由来

ことわざを深掘り

このことわざは、黒犬にかまれた人が、その後、灰汁(あく)の滓を見ただけでも黒犬だと思い、怖がる様子から生まれました。「灰汁」は、植物を焼いた灰を水に浸して取る上澄みの液で、古くは洗剤や漂白、染色などに使われました。「垂れ滓」は、その液を漉したあとに残るかすを指します。

地面などに残った灰汁の垂れ滓は、遠目には黒いかたまりに見えます。一度黒犬に襲われた人が、そのような物まで犬と見間違えておびえるという、少し大げさで印象の強い場面をたとえにしています。

古い用例は、『毛吹草(けふきぐさ)』(1638年序・1645年刊、江戸時代前期、松江重頼編)の巻二に出てきます。『毛吹草』は、七巻五冊からなる俳諧(はいかい)の書物で、句を作るための言葉や作法、発句、付句、世間に伝わる言い回し、各地の名物などを集めています。

『毛吹草』には、「くろいぬにくはれてあくのたれかすにおづる」とあります。現在の「嚙まれて」に当たる部分は「くはれて」、「怖じる」に当たる部分は「おづる」と書かれており、江戸時代前期の仮名遣いと言い回しをそのまま伝えています。

この用例では、「黒犬に食われて」という強い言い方によって、黒犬にかみつかれる恐ろしさを表しています。「食う」には、動物がかみつくという意味もあるため、のちに、内容を分かりやすく表す「嚙まれて」の形が用いられるようになりました。また、「おづる」は、恐れたり、ひるんだりすることを表す古い言い方で、現在は「怖じる」と書き表します。

『毛吹草』がこの言葉を収めたころには、長い説明を添えなくても意味が通じる、世間の言い回しとして扱われていました。特定の人物にまつわる物語から生まれたものではなく、灰汁を作る暮らしや、犬が身近にいた生活の中から形づくられたたとえです。

「灰汁の垂れ滓」は、現代ではなじみの薄い物ですが、当時は灰汁が洗濯や染色などに用いられていたため、そのかすも身近なものでした。黒犬と黒っぽい滓という、色や姿の似たものを並べることで、恐ろしい記憶があると、害のない物まで危険に思えてしまう人の心を、目に浮かぶ形で表しています。

このことわざが表すのは、経験を生かして慎重になることだけではありません。過去の恐怖に引きずられ、実際には危険でない似た物にまで、必要以上におびえてしまう状態です。そのため、「蛇に噛まれて朽ち縄に怖じる」や「羹に懲りて膾を吹く」と同じく、用心が度を越していることを表す場合に用いられます。

「黒犬に嚙まれて灰汁の垂れ滓に怖じる」の使い方

健太
校門のそばの黒い袋を見て、急に後ずさりしたけれど、どうしたの?
ともこ
去年、黒い犬に追いかけられてから、黒い物が動くと犬に見えて怖くなるの……。
健太
黒犬に嚙まれて灰汁の垂れ滓に怖じるだね。でも、あれは落ち葉を入れた袋だよ。
ともこ
本当だ!怖がる前に、何なのかよく確かめるようにするね。
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「黒犬に嚙まれて灰汁の垂れ滓に怖じる」の例文

例文
  • 以前、自転車で転んだ弟は、緩やかな坂まで避けるようになり、黒犬に嚙まれて灰汁の垂れ滓に怖じるの状態だ。
  • 一度試合で大きな失敗をしてから練習にも参加できないとは、黒犬に嚙まれて灰汁の垂れ滓に怖じるようなものだ。
  • 黒犬に嚙まれて灰汁の垂れ滓に怖じるで、彼女は前の店で嫌な思いをして以来、似た雰囲気の店にも入ろうとしない。
  • 過去に投資で損をした父は、安全性の高い貯蓄まで疑っており、黒犬に嚙まれて灰汁の垂れ滓に怖じるという言葉が当てはまる。
  • 一人の友人に秘密を漏らされただけで、誰にも相談しなくなったのは、黒犬に嚙まれて灰汁の垂れ滓に怖じると言える。
  • 黒犬に嚙まれて灰汁の垂れ滓に怖じることのないよう、前の失敗と今回の状況を分けて考える必要がある。

主な参考文献

・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・松江重頼編『毛吹草』1638年序、1645年刊。





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