【ことわざ】
上には上がある
【読み方】
うえにはうえがある
【意味】
最高にすぐれていると思っても、さらにすぐれたものがあるということ。うぬぼれや欲望を戒める言葉。


【英語】
・There is always someone better than you(自分よりすぐれた人は必ずいる)
・There’s always a bigger fish(さらに大きな魚がいる、つまり上には上がある)
【類義語】
・上を見れば方図がない(うえをみればほうずがない)
【対義語】
・天下無双(てんかむそう)
・天下一(てんかいち)
「上には上がある」の語源・由来
「上には上がある」の「上」は、位置が高いことだけでなく、程度が高いこと、よいこと、すぐれていることも表します。その「上」を二度重ねることで、すぐれていると思ったもののさらに先に、もっと高い水準のものがあるという考えを、短く分かりやすく示しています。
このことわざは、特定の人物や一つの事件から生まれたというより、「上下」という日常的な見方を、能力や価値の高さに移した表現です。目に見える高さの上下から、腕前・身分・評価・出来ばえなどの優劣を表す方向へ意味が広がり、その考えが「上には上がある」という言い方にまとまっています。
古くから、近い発想を表す言い方に「上を見れば方図がない」があります。「方図(ほうず)」は、物事の限り、きり、際限を表す言葉です。つまり「上を見れば方図がない」は、よりよいもの、より高いものを求めていけば限りがない、という意味になります。
この「上を見れば方図がない」は、『博多小女郎波枕(はかたこじょろうなみまくら)』(1718年・江戸時代中期、近松門左衛門作)に古い用例があります。そこには「上を見ればほうずがない。我より下を手本として」とあり、上ばかり見れば際限がなくなるので、ほどよいところで心を落ち着けるという文脈で使われています。
『博多小女郎波枕』は、享保3年(1718)に大坂竹本座で初演された浄瑠璃で、近松門左衛門が、禁制の密貿易に関係した事件をもとに脚色した世話物です。この作品の中に、現在の「上には上がある」とよく似た発想が出てくることから、江戸時代には、上を求めれば限りがないという考えが、すでに身近な言い回しとして受け取られていたことが分かります。
現在の形に近い「上には上がある」という言い方には、落語「素人茶道」(1893年・明治時代、三代目春風亭柳枝)に用例があります。そこには「ヘヱー上には上が有るもんだなァ」とあり、ある話を聞いて、さらに上のものがあることに驚く言い方として使われています。
この用例では、「上には上が有る」という表記になっています。漢字の「有る」を用いていますが、意味は現在の「上には上がある」と同じで、すぐれていると思ったもののさらに先に、もっとすぐれたものがあるという受け止め方を表しています。
また、このことわざには「上には上」という短い形もあります。言い切りの形を縮めても、「さらに高いものがある」という意味の芯は変わらず、驚きや感心をこめて使うことも、うぬぼれを戒める意味で使うこともあります。
「上には上がある」は、人だけに限らず、物事や作品にも使えます。すぐれた選手、絵、文章、技術、成績など、評価が高いものについて、さらにすぐれたものに出会ったときに用いられるため、「いる」ではなく「ある」という形で定着しています。
このことわざは、自分より上の存在を見て落ち込むためだけの言葉ではありません。むしろ、すぐれたものに出会ったときに世の中の広さを知り、謙虚に学び続けるきっかけを与える言葉です。
反対に、「天下無双」や「天下一」は、並ぶものがないほどすぐれていることを表します。「上には上がある」は、そのように最高だと思えるものにも、さらに上があり得るという見方を示すため、努力や評価を考える場面で、今も広く使われています。
「上には上がある」の使い方




「上には上がある」の例文
- 校内で一番の成績を取っても、全国模試を見ると上には上があると分かる。
- 新人賞を受けた作品のあとに名作を読んで、上には上があることを思い知った。
- 地区大会で優勝したチームは、県大会で上には上があると実感した。
- 職人として腕に自信をもっていたが、名人の仕事を見て上には上があると感じた。
- 研究発表で高く評価されても、世界の水準を知れば上には上がある。
- 上には上があると知ったことで、彼は慢心せずに練習を続けた。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『デジタル大辞泉』小学館。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・ブリタニカ・ジャパン『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ブリタニカ・ジャパン。
・公益財団法人日本漢字能力検定協会『漢検漢字ペディア』。
・近松門左衛門『博多小女郎波枕』1718年。
・三代目春風亭柳枝「素人茶道」1893年。























