【ことわざ】
鬼も十八番茶も出花
【読み方】
おにもじゅうはちばんちゃもでばな
【意味】
容姿がよくないと見られていた女性でも、年頃になるとそれなりの魅力が出てくるというたとえ。また、どんなものにも、そのよさが現れる盛りの時期があるということ。


【英語】
・Even a plain girl is attractive when young(目立たない娘でも、若い時には魅力がある)
【類義語】
・鬼も十七茨も花(おにもじゅうしちいばらもはな)
・薊の花も一盛り(あざみのはなもひとさかり)
「鬼も十八番茶も出花」の語源・由来
「鬼も十八番茶も出花」は、「鬼も十八」と「番茶も出花」という二つの言い回しを重ねたことわざです。「鬼」は、ここでは容姿や振る舞いが美しくない者のたとえであり、そのような者でも十八歳ほどの年頃になれば、若さによる魅力が現れるという意味を表します。
後半の「番茶」は、上等ではない日常向きの茶を指します。「出花(でばな)」は、茶に湯を注いだばかりの、香りや味がよい状態のことです。粗末な番茶にもおいしい一時があるように、人にもそれぞれ美しさの盛りがあるという、似た趣旨を繰り返しています。
「十八」は、もともと数え年の十八歳を指しますが、厳密に十八歳だけをいうものではありません。古くは「十七」とする形も少なくなく、十七、八歳ほどの若い年頃を広く表していました。また、現在は主に女性について用いますが、江戸時代には、男性に向けて使う例もありました。
ことわざの前半に当たる「鬼も十八」は、『醒睡笑(せいすいしょう)』(1623年成立・江戸時代前期、安楽庵策伝著)に、早くも出てきます。この書物は、安楽庵策伝が見聞した笑い話を集めたもので、1628年に京都所司代の板倉重宗へ献じられました。
その巻五には、「鬼がいふ、『ここな人は昼なるに』と。鬼も十八といふ事あれば、おくゆかしや」とあります。鬼が昼間の無遠慮な振る舞いをたしなめるという笑いの中で、「鬼にも年頃らしい慎みがある」という意味を掛けたもので、江戸時代初期には、「鬼も十八」がすでに人々に通じる言い方だったことが分かります。
このころの言い方は、必ずしも現在と同じ形に固定されていませんでした。「鬼も十八」のあとには、「番茶も出花」のほか、「山茶も煮端」や「蛇も二十」などを続ける形があり、前半と同じ意味を別のものにたとえて繰り返すことで、調子のよさと軽いおかしみを添えていました。
太田全斎の『諺苑(げんえん)』(1797年・江戸時代後期)には、「鬼も十七山茶も煮端」という形があります。「山茶」は、山野に自生する茶の木から採った粗末な茶であり、「煮端」は、煮出したばかりの味のよい時を表します。「十八」が「十七」、「番茶」が「山茶」、「出花」が「煮端」となっていますが、ことわざの組み立てと意味は、現在の形とほぼ同じです。
曲亭馬琴の『化競丑満鐘(ばけくらべうしみつのかね)』(1800年・江戸時代後期、曲亭馬琴著)には、「鬼も十七茨も花」という異形が出てきます。とげのある茨も、時期が来れば花を咲かせるというたとえで、番茶ではなく、植物の開花によって年頃の魅力を表しています。
さらに、為永春水の人情本『花筐』(1841年・江戸時代後期、為永春水著)には、「妹娘のお鶴といふは、鬼も十七山茶も飪(ニバナ)と、俚言(ことわざ)にいふ年齢(としばへ)なれど」とあります。ここでは、お鶴という若い娘の年齢を表すために用いられ、十七歳ほどが娘盛りと考えられていた当時の使い方が、よく表れています。
一方、「番茶も出花」だけを用いた例も、雑俳(ざっぱい)の『冠付五百題』(1857年・江戸時代後期)に、「番茶も出花・供仕てる方もだんないナア」とあります。こうして、前半と後半は、それぞれ単独でも使われながら、やがて「鬼も十八番茶も出花」という、まとまりのよい形に整えられました。
このことわざは、もともと、若者の容姿や男女の情を理解する年頃を、鬼と番茶の取り合わせによって少しおかしく表したものです。現在では、主に女性が娘盛りになって魅力を増すことのたとえとして使われますが、人の容姿を「鬼」にたとえる言い方でもあるため、相手を傷つけないよう、用いる場面には注意が必要です。
「鬼も十八番茶も出花」の使い方




「鬼も十八番茶も出花」の例文
- 幼いころはおてんばだった娘も、年頃になると見違えるほど魅力を増し、鬼も十八番茶も出花と言われた。
- 物語の主人公が美しい若者へ成長する場面を読み、鬼も十八番茶も出花という言葉を思い出した。
- 子どものころの写真と成人式の写真を見比べた祖母は、鬼も十八番茶も出花だと目を細めた。
- 若い役者が舞台衣装を着ると見事に映え、鬼も十八番茶も出花とはこのことだと思った。
- 昔は目立たなかった彼女も娘盛りを迎えて魅力が増し、周囲から鬼も十八番茶も出花と評された。
- 古い小説では、年頃になった娘の美しさを鬼も十八番茶も出花と表す場面がある。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・安楽庵策伝『醒睡笑』1623年成立。
・太田全斎『諺苑』1797年。
・曲亭馬琴『化競丑満鐘』1800年。
・為永春水『花筐』1841年。
・『冠付五百題』1857年。























