【ことわざ】
埋もれ木に花が咲く
【読み方】
うもれぎにはながさく
【意味】
長い間、不遇や逆境にあった人に、思いがけない幸運が訪れることのたとえ。


【英語】
・Every dog has its day(誰にでも成功や幸運の時が訪れる)
【類義語】
・枯れ木に花(かれきにはな)
・老い木に花(おいきにはな)
・煎り豆に花が咲く(いりまめにはながさく)
【対義語】
・弱り目に祟り目(よわりめにたたりめ)
「埋もれ木に花が咲く」の語源・由来
「埋もれ木に花が咲く」は、土の中や水の中に長く埋もれていた木に、思いがけず花が咲くという、ふつうは起こりにくい情景をもとにしたことわざです。そこから、長く不遇だった人に幸運が訪れることを表すようになりました。
「埋もれ木」は、もとは樹木が長い年月、水中または土中にあって炭化した木を指します。また、世間から見捨てられ、顧みられない境遇の人を表すたとえとしても使われてきました。
この言葉の土台には、「埋もれた木」は地上で枝葉を広げる木とは違い、花を咲かせることがない、という見方があります。そのため、「埋もれ木」は、才能や望みを持ちながらも世に出られない人、あるいは不遇のまま過ごす人の姿に重ねられました。
「埋木」という言葉そのものは、古くから和歌の中にも出てきます。『万葉集』(8世紀後半成立、奈良時代)には、川原の埋木を詠んだ例があり、『古今和歌集』(905〜914年成立、平安時代前期)にも、名取川の埋木を詠む歌が伝わっています。
また、人の境遇のたとえとしての「埋木」は、『貫之集』(945年ごろ、平安時代中期、紀貫之の家集)にも出てきます。ここでは、奥山の埋木に身を重ねる形で、世に知られず、思いを抱えたままの身の上が表されています。
ことわざに近い古い用例は、『平家物語』(13世紀前半ごろ成立、鎌倉時代、作者未詳)巻四に出てくる源頼政の歌に見られます。『平家物語』は、治承・寿永の動乱を、平家一門の興亡を中心に描いた軍記物語です。
源頼政は、1104年に生まれ、1180年に没した平安時代後期の武将です。平家政権のもとで源氏として生き残り、のちに以仁王を立てて挙兵しましたが、敗れて宇治の平等院で自害しました。
『平家物語』には、頼政の歌として「埋木の花さく事もなかりしに身のなるはてぞかなしかりける」とあります。これは、埋もれ木に花が咲かないように、自分の身にも華やかな時がなかったのに、こうして最期を迎えるのが悲しい、という心を表した歌です。
この古い用例では、「埋木」は、花を咲かせることのない不遇の身を表しています。ところが、後のことわざでは、その埋もれ木に「花が咲く」といい、見捨てられていた人に思いがけない幸運が訪れることを表す形になりました。
つまり、このことわざは、古くからある「埋もれ木」という比喩を受け継ぎながら、不遇のまま終わる悲しみではなく、不遇の後に光が差す喜びを表す言い方として定着しました。現在では、人の才能が遅れて認められる場合や、長い苦労の末に幸運が訪れる場合に使います。
「埋もれ木に花が咲く」の使い方




「埋もれ木に花が咲く」の例文
- 長い下積みを続けた俳優が大きな賞を受け、埋もれ木に花が咲く思いだった。
- 無名だった研究者の発見が認められ、埋もれ木に花が咲くように注目を集めた。
- 何年も売れなかった店が評判になり、埋もれ木に花が咲く結果となった。
- けがで苦しんだ選手が復帰戦で活躍し、埋もれ木に花が咲くような勝利をつかんだ。
- 地味な仕事を続けてきた職人の技が評価され、埋もれ木に花が咲く日を迎えた。
- 祖母の古い手芸作品が展覧会で話題となり、埋もれ木に花が咲く出来事になった。
主な参考文献
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・『平家物語』13世紀前半ごろ成立。
・『万葉集』8世紀後半成立。
・紀貫之『貫之集』945年ごろ。
・Cambridge University Press『Cambridge English Dictionary』。























