【ことわざ】
売り言葉に買い言葉
【読み方】
うりことばにかいことば
【意味】
相手の挑発的な言葉や暴言に対して、こちらも負けずに同じような強い調子で言い返すこと。


【英語】
・tit for tat(相手にされたことを同じようにやり返すこと)
【類義語】
・売る言葉に買う言葉(うることばにかうことば)
【対義語】
・柳に風(やなぎにかぜ)
「売り言葉に買い言葉」の語源・由来
「売り言葉に買い言葉」は、品物を取り引きするときの「売る」と「買う」を、言葉の応酬に置き換えた表現です。相手が挑発する言葉を差し出し、もう一方がそれを買い取るかのように受けて言い返す様子を表しています。
もとは、商いの場で売り手と買い手が交わす、勢いのある言葉のやり取りを指したと考えられています。値段や品物をめぐって互いに強い言葉を返す様子から、しだいに、けんか腰の言葉をぶつけ合う意味へ移っていきました。
「売り言葉」は、相手を怒らせたり、争いを仕掛けたりする言葉です。一方、「買い言葉」は、悪口を言われた人が負けまいとして言い返す言葉を指します。
現在につながる表現の古い用例は、山岡元隣の仮名草子(かなぞうし)『他我身の上(たがみのうえ)』(1657年・江戸時代前期、山岡元隣著)に出てきます。仮名草子は、江戸時代初期に広まった、仮名を中心に書かれた読み物です。
『他我身の上』には、「世話に売言葉に買言葉」とあります。現在と同じく、「売言葉」と「買言葉」を対にした形であり、相手の言葉を受けて言い返すやり取りを表しています。
ここで大切なのは、実際に品物や金銭をやり取りするわけではないことです。「売る」は相手に争いを仕掛けること、「買う」はその仕掛けに応じて争いを引き受けることを、たとえによって表しています。
ただし、「売言葉」という言葉には、もともと「品物を売るための言葉」という文字どおりの意味もあります。『詞林金玉集』(1679年・江戸時代前期)には、商いのために客へ呼び掛ける言葉を指す用例が残っています。
その後、『誹讔三十棒』(1771年・江戸時代中期)には、「申さば売言葉に買ことば」とあります。この用例では、「買言葉」が、悪口を受けて言い返す言葉として、はっきり用いられています。
さらに、『誹風柳多留(はいふうやなぎだる)』第百二編(1828年・江戸時代後期)には、「うり言葉買はぬは元が高いから」という句があります。挑発する言葉を「買わない」ことと、値段が高くて品物を買わないことを重ねたしゃれであり、「売り言葉」と「買う」というたとえが広く理解されていたことを示しています。
「売り言葉に買い言葉」の「に」は、最初の言葉に対して次の言葉が返される関係を表します。一方が強い言葉を投げると、もう一方も強い言葉を返し、それが再び相手の反発を招くという連鎖を、短くまとめた言い方です。
そのため、相手が暴言を吐いただけで、もう一方が言い返さなかった場合には、ふつう「売り言葉に買い言葉」とはいいません。双方が感情に任せて言葉をぶつけ合い、口論を激しくしたときに用います。
現在では、家庭や友人同士の口論だけでなく、会議や交渉などで、互いの発言が次第に激しくなる場合にも使います。相手の挑発にそのまま応じれば、ささいな争いまで大きくなりかねないことを、取り引きの「売る」「買う」にたとえて表したことわざです。
「売り言葉に買い言葉」の使い方




「売り言葉に買い言葉」の例文
- 兄弟は売り言葉に買い言葉となり、ささいな意見の違いから激しい口論を始めた。
- 友人の挑発に腹を立て、売り言葉に買い言葉で余計なことまで言ってしまった。
- 会議では売り言葉に買い言葉を避け、相手の意見を落ち着いて聞く必要がある。
- 夫婦の言い争いは売り言葉に買い言葉となり、初めの問題とは関係のない不満にまで広がった。
- 交渉の席で売り言葉に買い言葉になれば、まとまる話もまとまらなくなる。
- 二人は売り言葉に買い言葉で互いを傷つけたことを反省し、翌日に謝り合った。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・山岡元隣『他我身の上』1657年。
・『詞林金玉集』1679年。
・『誹讔三十棒』1771年。
・『誹風柳多留』1765〜1838年。























