【ことわざ】
看板に偽りなし
【読み方】
かんばんにいつわりなし
【意味】
看板に書いてあることや公言していることと、実物・実質とが一致していること。外見や評判と中身に違いがないこと。


【英語】
・live up to its name.(名前や評判にふさわしい)
・true to its name.(名前にたがわず実際もその通りである)
【類義語】
・言行一致(げんこういっち)
・名実相伴う(めいじつあいともなう)
【対義語】
・羊頭狗肉(ようとうくにく)
・羊頭を懸けて狗肉を売る(ようとうをかけてくにくをうる)
「看板に偽りなし」の語源・由来
「看板に偽りなし」は、もともと看板に書いてある内容と、実際の商品や出し物とが違わないことを表す言い方です。看板は、商店などが屋号・商品・うたい文句などを書いて人目につく所に掲げるものを指し、劇場では、出し物や俳優名などを知らせるものとしても使われました。
このことわざでは、外に掲げた表示と中の実物が一致していることが、信用できる状態としてとらえられています。そこから、外見や評判、口で言っていることと、実際の中身や行動が合っているという意味へ広がりました。
古い用例として、『大坂独吟集(おおさかどくぎんしゅう)』(1675年・江戸時代前期刊、西山宗因判)に、「芝居のしくみ明日はつらみせ 看板に偽のなき神無月〈西鶴〉」という形が出てきます。『大坂独吟集』は、上方の談林(だんりん)俳諧を伝える俳諧集で、西山宗因の評語を加えたものです。
この句に出てくる「つらみせ」は、江戸時代の歌舞伎で、十一月一日からの興行に新しい一座の役者がそろって客に姿を見せる「面見世」、すなわち顔見世を指します。顔見世は、歌舞伎の年中行事の一つで、役者の顔ぶれを観客に知らせる大切な興行でした。
顔見世の時期には、劇場の正面にさまざまな看板や提灯、飾り物を出し、芝居町全体が華やかな雰囲気になりました。したがって、この古い用例では、芝居の看板に示された内容と、実際の興行や役者の顔ぶれとの関係が背景になっています。
「看板に偽のなき」という古い形は、今の「看板に偽りなし」とほぼ同じ発想をもっています。看板に掲げたことが実際と合っている、という具体的な場面から、言葉と実質が食い違わないことをよしとする意味が生まれました。
後には、店や芝居に限らず、人や物事の評判にも使われるようになりました。たとえば、昭和25年の小説の用例には「看板に偽りなく」という形があり、評判や説明と実際の姿が合っていることを表しています。
このことわざが今も使いやすいのは、「看板」が単なる板ではなく、名前・宣伝・評判・表向きの名目まで広く表す言葉として定着しているためです。看板には、店の信用や主力の商品、人目を引くもの、表向きの名目という意味もあります。
反対に、看板や宣伝は立派でも中身が伴わない場合には、「羊頭狗肉」や「羊頭を懸けて狗肉を売る」という言い方が用いられます。これらは、外見と内容が一致していないことを表すため、「看板に偽りなし」とは反対の発想をもつ表現です。
現在の「看板に偽りなし」は、店の料理が評判どおりにおいしい、宣伝された機能が実際に役立つ、また人が言ったことを行動で示している、といった場面で使われます。表に掲げたものと中身が一致しているという、信用のあり方を分かりやすく言い表すことわざです。
「看板に偽りなし」の使い方




「看板に偽りなし」の例文
- 老舗の和菓子店の味は評判どおりで、看板に偽りなしだった。
- 初心者にも分かりやすいと宣伝していた参考書は、説明が丁寧で看板に偽りなしだった。
- 地域一番の品ぞろえを掲げる文房具店は、本当に種類が多く、看板に偽りなしといえる。
- 安全第一を掲げる会社が点検を徹底しており、看板に偽りなしの姿勢を示した。
- 親切な対応で知られる病院は、受付から診察まで丁寧で、看板に偽りなしだった。
- 努力家だと評判の選手は練習後も自主練を続け、看板に偽りなしの姿を見せた。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2006年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・西山宗因判『大坂独吟集』村上平楽寺、1675年刊。
・式亭三馬『浮世風呂』1809〜1813年刊。
・Merriam-Webster『Merriam-Webster.com Dictionary』Merriam-Webster.
・Dictionary.com『Dictionary.com』Dictionary.com.























