【ことわざ】
ある時はありがあり、ない時は梨もない
【読み方】
あるときはありがあり、ないときはなしもない
【意味】
金や財産は、ある時には十分にあるが、ない時にはまったくないということ。


【類義語】
・ある所にありの実、ない所になしの実(あるところにありのみ、ないところになしのみ)
「ある時はありがあり、ない時は梨もない」の語源・由来
「ある時はありがあり、ない時は梨もない」は、「有る」と「無い」を軸に、「蟻」と「梨」を掛けた言葉遊びを含むことわざです。「あり」は「有り」と同じ音であり、「なし」は「無し」と同じ音です。そのため、金が「有る」時には「蟻」があるほどあり、金が「無い」時には「梨」までもない、という形で、金銭の有無による極端な差をおもしろく表しています。
この表現の土台には、梨を「有りの実」と呼ぶ古い言い方があります。梨は「無し」と音が通じるため、縁起を気にして「有りの実」と言い換えられました。「有りの実」は、梨の実の異名として古くから用いられ、『相模集(さがみしゅう)』(1061年頃か、相模の私家集)にも、梨を「ありのみ」と言う例が伝わっています。
「有りの実」は、梨の別名であるだけでなく、「ある」という意味を引き出すしゃれにもなりました。江戸時代の洒落本『蕩子筌枉解(とうしせんおうかい)』(1770年、茶釜散人著)には、「ありのみ」を「ある」の意味に掛けて使う例があります。梨を「無し」ではなく「有り」に言い換える感覚が、江戸の言葉遊びにも取り入れられていたことが分かります。
昭和3年(1928年)刊行の『金言名句辞典 : 文士必携』には、「有る時は蟻が有り。無い時は梨も無し」という形が出てきます。この段階では、現在の表記に近い形で、金や財産がある時とない時の差を言い表すことわざとして扱われています。
現在よく用いられる「ある時はありがあり、ない時は梨もない」という表記では、「有る」「無い」をかなでやわらかく書き、「梨もない」と結んでいます。もとの言葉遊びは保ちながら、金銭について「ある時に気をゆるめると、ない時には本当に困る」という戒めとして受け取られる表現になっています。
「ある時はありがあり、ない時は梨もない」の使い方




「ある時はありがあり、ない時は梨もない」の例文
- お年玉をすぐ使い切ってしまい、ある時はありがあり、ない時は梨もないを身にしみて感じた。
- 給料日の直後は余裕があっても、月末にはある時はありがあり、ない時は梨もないという状態になりやすい。
- 旅行の予定があるのに貯金をしなければ、ある時はありがあり、ない時は梨もないで困ることになる。
- 臨時収入を全部使ってしまう兄を見て、母はある時はありがあり、ない時は梨もないにならないよう注意した。
- 部活動の道具代が急に必要になり、ある時はありがあり、ない時は梨もないという言葉を思い出した。
- 商売が好調な時ほど、ある時はありがあり、ない時は梨もないを忘れず、備えを残すことが大切だ。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・東京文学院編著『金言名句辞典 : 文士必携』東京文学院、1928年。
・相模『相模集』1061年頃か。
・茶釜散人著『蕩子筌枉解』京屋吉兵衛、1770年。























