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【敢えて主とならずして客となる】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・対義語・英語)

敢えて主とならずして客となる

【故事成語】
敢えて主とならずして客となる

【読み方】
あえてしゅとならずしてきゃくとなる

【意味】
自分から先に事を起こして主導権を取ろうとせず、相手に応じて控えめに振る舞うこと。とくに争いごとでは、むやみに前へ出ず、慎重に構えるたとえ。

ことわざ博士
この故事成語は、自分が先頭に立って押し進めるより、まず相手の動きや事情を見て、落ち着いて応じる態度を表すよ。けんかや言い争いで先に強く出ないほうがよい、と伝えたいときにも使われるんだ。
助手ねこ
ただの弱気ではなく、むだな争いを広げないための慎み深さを含む言い方ニャン。

【英語】
・I dare not act as host but rather as guest.(自分から主導せず、相手に応じて構える)
・I would rather be a guest than a host.(先に仕掛けず、受け身に回る)
・Rather retreat a foot than advance an inch.(少し進むより大きく退いて慎重に構える)

【類義語】
・敢えて寸を進まずして尺を退く(あえてすんをすすまずしてしゃくをしりぞく)
・敢えて天下の先とならず(あえててんかのさきとならず)

【対義語】
・先んずれば人を制す(せんずればひとをせいす)
・先手必勝(せんてひっしょう)
・攻撃は最大の防御(こうげきはさいだいのぼうぎょ)

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「敢えて主とならずして客となる」の故事

故事成語を深掘り

この故事成語は、中国の古典『老子(ろうし)』第六十九章にある言葉です。『老子』は『道徳経(どうとくきょう)』とも呼ばれ、無理に争わず、押し通しすぎない生き方を説く書物として長く読まれてきました。

この章には、「用兵有言、吾不敢為主而為客、不敢進寸而退尺」という一節が出てきます。やさしく言えば、戦いについての古い言い伝えとして、先に仕掛ける立場を取らず、少し進むより大きく退いて慎重に構えよ、という意味です。

ここでいう「主」と「客」は、ふつうの主人と客人をそのまま指す言葉ではありません。争いの場で、自分から前へ出て事を動かす側と、相手に応じて動く側の違いをたとえていると考えると、意味がつかみやすくなります。

第六十九章は、勇ましく攻め立てることをほめる章ではありません。むしろ、相手を軽く見て先に動くことの危うさと、争いそのものを重く受け止める心の大切さを語っています。

そのため、「敢えて主とならずして客となる」も、ただおくびょうでいろという教えではありません。先に争いを起こさず、むやみに前へ出ず、身を低くして事に当たるほうが、かえって大きな失敗を避けられるという知恵がこめられています。

この言葉の背景には、古くから伝わる老子の話があります。伝説では、老子が西へ去ろうとしたとき、関所の役人であった尹喜(いんき)に求められて、自分の考えを書き残したとされています。

この伝承は、司馬遷(しばせん)の『史記(しき)』の老子伝とも結びついて、広く知られるようになりました。ただし、『老子』そのものは一人の人物が一度に書いた本と決めきれず、長い時期にわたって思想がまとめられた書物と考えられています。

そうした事情はあっても、「敢えて主とならずして客となる」という句そのものは、『老子』第六十九章の本文に確かに残っています。しかもすぐ後ろには「敢えて寸を進まずして尺を退く」と続き、前に出すぎない姿勢が重ねて強められています。

この章のおもしろいところは、用兵の話から始まりながら、ただ戦場の作戦だけで終わらないところです。争いに向かう心のあり方や、ふだんの身の処し方にまで話が広がり、人どうしの関係にも通じる教えとして読まれてきました。

日本でも、中国の古典に親しむ学びの中で、こうした句は長く受け継がれました。その中でこの言葉も、戦いの話に限らず、処世や人間関係を語るときの表現として理解されるようになりました。

今では、言い争いで先にけんかを売らないこと、話し合いでいきなり主導権を奪おうとしないこと、相手の事情を見てから動くことを表す故事成語として使われます。積極性をすべて否定する言葉ではなく、必要のない衝突を避けるための慎重さを教える言葉として受け取るのが自然です。

だからこの故事成語は、何もしないで引っこんでいるという意味ではありません。前へ出るべき時を見誤らず、それまでは落ち着いて構える――そんな静かな強さを、短い言葉で伝えているのです。

「敢えて主とならずして客となる」の使い方

健太
明日の学級会で、運動会のリレーの走る順番を決めるんだ。足の速い子どうしが一走をやりたいって言っていて、ぼくが先に順番を決めてしまおうか迷ってるんだよ。
ともこ
そんなときは、敢えて主とならずして客となるが合いそうだよ。いきなり案を押し出すより、まず二人がどの区間を走りたいのか、理由を聞いてからまとめたほうが、けんかになりにくいよ。
健太
なるほど……じゃあ、ぼくの考えを先に言うのはやめて、直線が得意か、バトン渡しが得意かを一人ずつ聞いてみるよ。みんなの話を受けてから順番を考えることにする。
ともこ
うん、そのほうがみんなも納得しやすいね! 先に押し切るより、話を聞いてから動くほうが、落ち着いて決まりそうだよ。
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「敢えて主とならずして客となる」の例文

例文
  1. 運動会の走順でもめそうだったので、学級委員は敢えて主とならずして客となる気持ちで、まず全員の希望と得意な区間を聞いた。
  2. 祖父の介護の分担を話し合う席では、父は敢えて主とならずして客となる姿勢をとり、家族それぞれの事情を先に確かめた。
  3. 友人どうしの行き違いを仲裁するとき、片方の肩だけを持たず、敢えて主とならずして客となる態度が役に立つ。
  4. 文化祭の展示場所をめぐって意見が割れたとき、担当の生徒は敢えて主とならずして客となるように話を聞き、対立を広げなかった。
  5. 新しい取引先との商談で、初日から条件を押しつけず、敢えて主とならずして客となる構えで相手の事情を聞いた。




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