【ことわざ】
江戸は八百八町、大阪は八百八橋
【読み方】
えどははっぴゃくやちょう、おおさかははっぴゃくやばし
【意味】
江戸には町が多く、大阪には川や運河にかかる橋が多く、どちらも広くにぎわった大都市であることをいう言葉。ここでの「八百八」は実数ではなく、数が多いことを表す。


【英語】
・Edo had countless neighborhoods, Osaka countless bridges(江戸には数えきれないほどの町があり、大阪には数えきれないほどの橋があった)
【類義語】
・江戸八百八町(えどはっぴゃくやちょう)
・浪華八百八橋(なにわはっぴゃくやばし)
「江戸は八百八町、大阪は八百八橋」の語源・由来
「江戸は八百八町、大阪は八百八橋」は、江戸と大阪という二つの大都市を、それぞれの特徴で言い分けたことわざです。江戸は町の数が多いこと、大阪は河川や運河に囲まれ、橋が多いことを、対句の形で表しています。
「八百八」は、「八百八町」「八百八橋」など、他の言葉に付いて、物の数が多いことを表す言葉です。したがって、このことわざの「八百八」は、ちょうど八百八という数ではなく、「非常に多い」という意味をもつ数の言い方です。
江戸については、「江戸八百八町」という言い方が古くから使われました。この言葉は、江戸の町の数が多いこと、また江戸市中全域を指す言葉として用いられ、「江戸は八百八町、大坂は八百八橋」などという形でも使われます。
「江戸八百八町」の古い用例として、歌舞伎『助六廓夜桜(すけろくくるわのよざくら)』(1779年・江戸時代中期、桜田治助・笠縫専助作)に、「江戸八百八丁に隠れのねえ」という形が出てきます。これは、江戸中に広く知られているという意味合いで、江戸の町の広がりを強く印象づける言い方です。
ただし、「八百八町」は江戸の実際の町数をそのまま数えたものではありません。明暦3年(1657年)の大火のときの町数に関係づける説もありますが、実数とは考えにくく、多くの町があることを表す慣用的な言い方として理解されます。
江戸の町は、徳川家康が江戸へ入った天正18年(1590年)以後、大がかりな造成や埋め立てによって広がっていきました。慶長から寛永年間には約三百町が生まれ、明暦の大火以後の都市計画や本所・深川の開発などを経て、町奉行支配の町数は正徳3年(1713年)に九百三十三町、延享年間(1744〜1747年)には千六百七十八町に達しました。
一方、大阪については、「八百八橋」という言い方が、河川や運河に囲まれた地形と、多くの橋をもつ町の姿を表します。大阪は水運と商業に支えられた町であり、川や堀を行き来するために、橋が生活や商売に欠かせない存在でした。
大阪は、古く「浪華八百八橋」とも呼ばれました。明治36年(1903年)の『大阪府誌』には、大阪市を「水の都」とし、幹線の街路を貫く川や、左右に分かれる多くの川筋にふれたうえで、橋梁が市内に多くあるため「世に八百八橋の稱あり」と記されています。
江戸時代の大阪の橋には、幕府の費用で架け替えや修理を行う公儀橋と、町人が経費を負担して維持する町橋がありました。大阪では、約二百の橋のうち公儀橋が十二橋で、残りは町橋であったことが、「浪華八百八橋」と呼ばれる背景として述べられています。
このことわざで、古い表記としてよく出る「大坂」は、近世の地名表記です。現在の説明では「大阪」と書くことが多く、対象語のように「江戸は八百八町、大阪は八百八橋」と表す場合もありますが、由来をたどると、江戸時代の町としての「大坂」の橋の多さが背景にあります。
江戸の「町」と大阪の「橋」を並べることで、このことわざは、二つの町の性格の違いも伝えています。江戸は武家と町人の集まる巨大な城下町として、町の広がりで知られ、大阪は川と堀をめぐる商業都市として、橋の多さで知られました。
現在の「江戸は八百八町、大阪は八百八橋」は、江戸と大阪がそれぞれに広く、活気ある大都市であったことを、短く印象的に表すことわざです。数の正確さよりも、町並みの広がりと水の都のにぎわいを思い描かせるところに、この言葉の味わいがあります。
「江戸は八百八町、大阪は八百八橋」の使い方




「江戸は八百八町、大阪は八百八橋」の例文
- 江戸は八百八町、大阪は八百八橋というように、江戸と大阪はそれぞれ違った特色をもつ大都市だった。
- 江戸は八百八町、大阪は八百八橋とは、町の多い江戸と橋の多い大阪を対にしたことわざだ。
- 資料館の展示では、江戸は八百八町、大阪は八百八橋の言葉どおり、都市の広がりと水運の発達が紹介されていた。
- 江戸は八百八町、大阪は八百八橋という表現から、昔の人々が二つの都市をどう見ていたかが分かる。
- 大阪の古い橋を歩いてめぐると、江戸は八百八町、大阪は八百八橋という言葉が実感できる。
- 江戸は八百八町、大阪は八百八橋は、実際の数を示すより、町や橋の多さを印象的に伝えることわざだ。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・桜田治助・笠縫専助『助六廓夜桜』1779年初演。
・『大阪府誌』大阪府、1903年。
・東京都『江戸の発達』東京都、1956年。
・Cambridge University Press『Cambridge Advanced Learner’s Dictionary & Thesaurus』Cambridge University Press。























