【ことわざ】
江戸っ子は宵越しの銭は持たぬ
【読み方】
えどっこはよいごしのぜにはもたぬ
【意味】
江戸っ子は、金をためることをよしとせず、その日に得た金はその日のうちに使ってしまうということ。金離れのよさや気前のよさを誇っていう言葉。


【英語】
・be free with one’s money(お金を惜しまずよく使う)
・spend money like water(湯水のようにお金を使う)
【類義語】
・宵越しの銭は持たない(よいごしのぜにはもたない)
・宵越の銭は使わぬ(よいごしのぜにはつかわぬ)
【対義語】
・備え有れば患い無し(そなえあればうれいなし)
「江戸っ子は宵越しの銭は持たぬ」の語源・由来
このことわざは、「江戸っ子」と「宵越しの銭」という二つの言葉が結びついてできた言い方です。江戸っ子の金離れのよさ、つまり金をためこまず、気前よく使う気質を表します。
「江戸っ子」は、もとは江戸で生まれ育った人、とくに町人を指す言葉です。江戸っ子には、さっぱりした気風、歯切れのよさ、銭遣いのきれいさなどが特徴として結びつけられてきました。
「江戸っ子」という言葉の古い用例は、明和8年(1771年・江戸時代中期)の『川柳評万句合(せんりゅうひょうまんくあわせ)』に出てきます。それ以前には、東男(あずまおとこ)や江戸者という言い方があり、江戸中期の繁栄とともに「江戸っ子」という呼び名が広まっていきました。
「宵越し」とは、前の晩から次の日まで持ち越すことを指します。したがって「宵越しの銭」は、夜を越して翌日まで残った金という意味になり、このことわざでは「翌日まで金を残さない」という発想につながります。
「宵越の銭は使わぬ」という形の古い用例は、江戸後期の滑稽本『浮世床(うきよどこ)』(1813〜1814年刊、式亭三馬著)に出てきます。そこには「宵越の銭を持った事がなし」という形があり、その日に得た金をその日のうちに使い切るという意味で用いられています。
『浮世床』は、髪結い床に集まる江戸庶民の会話を通して、当時の生活を生き生きと描いた作品です。そのような会話の中にこの言い方が出てくることから、金銭に執着しない気風が、江戸の庶民的な言葉として語られていたことが分かります。
「江戸っ子は宵越しの銭は使わぬ」という形は、歌舞伎・浄瑠璃の外題『今文覚助命刺繍(いまもんがく じょめいのほりもの)』(1883年初演、河竹黙阿弥作)にも出てきます。そこでは「宵越しの銭を遣はねえのが、おらっちの持前だ」という形で、江戸っ子らしい気前のよさを自分の持ち前として語っています。
「使わぬ」と「持たぬ」は、表面の言い方は違いますが、どちらも翌日まで金を残さないという意味につながります。「宵越しの銭は使わぬ」は、翌日に持ち越した金など使わないほど、その日のうちに使い切る、という勢いのある言い方です。
このことわざには、江戸っ子の気前のよさをほめる響きがあります。一方で、翌日に備える金まで使ってしまうという意味にもなるため、むやみに浪費することを皮肉る響きで使われることもあります。
現在の「江戸っ子は宵越しの銭は持たぬ」は、金に執着せず、気前よく使う人を表すことわざとして使われます。ただし、生活に必要な備えまで軽んじる意味ではなく、江戸っ子らしいいさぎよさと、金遣いのあっさりした気風を表す言葉として理解するとよいでしょう。
「江戸っ子は宵越しの銭は持たぬ」の使い方




「江戸っ子は宵越しの銭は持たぬ」の例文
- 江戸っ子は宵越しの銭は持たぬという気風で、祖父は臨時収入を家族への土産に使った。
- 商店街の親方は、江戸っ子は宵越しの銭は持たぬとばかりに、祭りの寄付を惜しまなかった。
- 江戸っ子は宵越しの銭は持たぬという言葉は、金銭に執着しない気前のよさを表す。
- 給料を全部使うのは、江戸っ子は宵越しの銭は持たぬと笑って済む話ではない。
- 友人は江戸っ子は宵越しの銭は持たぬをまねて気前よくおごったが、翌日の昼食代に困った。
- 江戸っ子は宵越しの銭は持たぬといっても、必要な支払いまで忘れてよいわけではない。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・野島寿三郎編『歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典』日外アソシエーツ、1990年。
・式亭三馬『浮世床』1813〜1814年。
・河竹黙阿弥『今文覚助命刺繍』1883年初演。
・Cambridge University Press『Cambridge Dictionary』Cambridge University Press。























