目次
「親しき仲にも礼儀あり」とは
読み方・意味
- ことわざ:親しき仲にも礼儀あり
- 読み方:したしきなかにもれいぎあり
- 意味:親しい間柄であっても、最低限の礼儀は守らなくてはならないということ。
「親しき仲にも礼儀あり」 とは、どれだけ親しい関係であっても、最低限の礼儀やマナーは守るべきである という意味のことわざです。
家族や親友、恋人など、気を許せる間柄であっても、相手に対する敬意を忘れてはいけないという教えです。
どんなに仲が良くても、相手を傷つけるような言動や礼儀を欠いた振る舞いをすると、人間関係が壊れてしまうこともあります。
そのため、親しさに甘えず、お互いを大切にするために適度な礼儀を持つことが大切だとされています。
「親しき仲にも礼儀あり」の語源・由来
「親しき仲にも礼儀あり」 の語源や由来について、明確な出典はありませんが、日本の伝統的な価値観や儒教の思想に基づいた考え方が背景にあるとされています。
1. 日本の伝統的な礼儀の考え方
日本には古くから、人と人との関係において「礼儀」を重んじる文化 があります。
特に、家族や親しい間柄でも、無礼な振る舞いを避けることが美徳とされてきました。
例えば、武士の時代には「礼儀作法」が厳しく求められ、どんなに親しい間柄でも、一定の礼節を持つことが重要視されていました。
また、日本のことわざや格言には「礼儀」や「敬意」に関するものが多く、例えば「礼に始まり礼に終わる」(武道の精神)や「敬して遠ざく」(尊敬しつつ適度な距離を保つ)なども同じ考え方に基づいています。
2. 儒教の影響
このことわざの考え方は、中国の儒教(じゅきょう)の教え にも通じるものがあります。
儒教では、「礼(れい)」をとても重要視しており、孔子(こうし)が説いた「礼(れい)」の概念には、「人間関係を円滑にするためには、たとえ親しい関係でも相手を敬う態度が必要である」という考えが含まれています。
儒教の経典『論語(ろんご)』の中には、以下のような教えがあります。
「父母に仕えるには、礼をもってすべし。」(親に対しても礼儀を忘れてはならない)
「朋友(ほうゆう)には信をもってすべし。」(友人には誠実に接するべき)
これらの教えからも、親しい人にこそ礼儀を持つべきだ という思想が、日本に伝わり「親しき仲にも礼儀あり」ということわざの元になったと考えられます。
3. 日本の書物での使用例
江戸時代の書物や武士道の教えにも、類似の考え方が見られます。
例えば、江戸時代の武士道を説いた書物『葉隠(はがくれ)』には、「親しき者ほど礼を尽くすべし」という趣旨の記述があります。
これは、「親しいからこそ、失礼があってはならない」という武士の心得として伝えられていました。
「親しき仲にも礼儀あり」の使い方
「親しき仲にも礼儀あり」の例文
- 「幼なじみの親友だからといって、何でも勝手に借りるのはダメだよ。親しき仲にも礼儀あり、ちゃんと許可を取らないとね。」
- 「どんなに仲のいい家族でも、食事のときに『いただきます』や『ごちそうさま』を言うことは大切だよ。親しき仲にも礼儀あり、だね。」
- 「友達同士だからって、悪口を言ったり、雑に扱ったりしないことが大事だよ。親しき仲にも礼儀ありって言うでしょ?」
- 「恋人同士でも、ありがとうやごめんなさいを忘れちゃダメ。親しき仲にも礼儀あり、が長続きの秘訣だよ。」
- 「職場の先輩とは普段フランクに話せるけど、仕事の場ではきちんと敬語を使うようにしている。親しき仲にも礼儀あり、だからね。」
- 「弟と仲がいいけど、勝手にスマホをいじられるのはちょっと困る…。親しき仲にも礼儀ありってことを教えないと。」
- 「SNSで親友だからといって、無断で写真をアップするのは失礼だよ。親しき仲にも礼儀あり、ちゃんと確認を取るべきだよね。」
「親しき仲にも礼儀あり」の類義語・似たことわざ
「親しき仲にも礼儀あり」の対義語
「親しき仲にも礼儀あり」の完全な対義語はありませんが、考えようによっては反対の意味を表す表現としてご紹介します。
「親しき仲にも礼儀あり」の注意点
- 本当に親しい関係であることが前提
→ あまり親しくない相手に使うと、不自然になる。
(例:✕「昨日知り合ったばかりだけど、親しき仲にも礼儀ありだから気をつけようね!」→ まだ親しい関係ではないので不適切) - 相手との距離感に注意する
→ 必要以上に堅苦しくなると、かえって関係をぎくしゃくさせることがある。
(例:✕「親友だけど、毎回敬語を使わなきゃね。親しき仲にも礼儀ありだから」→ 必要以上の礼儀は逆に不自然)
「親しき仲にも礼儀あり」の英語表現
Good fences make good neighbors.
直訳: よい垣根がよい隣人を作る。
意味: 互いに適切な距離を保つことで、良好な関係を築くことができる、という意味のことわざ。過度に干渉せず、相手のプライバシーを尊重することが大切だという教訓を含んでいる。
例文: Even if you get along well with your neighbors, it’s important to respect their privacy. Good fences make good neighbors.
(たとえ隣人と仲が良くても、お互いのプライバシーを尊重することが大切だよ。よい垣根がよい隣人を作るんだから。)
まとめ
「親しき仲にも礼儀あり」は、日本古来の礼儀作法の考え方と、中国の儒教思想が融合したものと考えられます。
親しい間柄ほど礼儀を大切にすることで、より良い関係を築くことができる、という教訓が込められています。
この価値観は、現代でも人間関係の基本として大切にされています。