【ことわざ】
一念天に通ず
【読み方】
いちねんてんにつうず
【意味】
物事を成し遂げようと一心に思い、真剣に取り組めば、その思いが天に通じて、成功へつながるということ。


【英語】
・Where there’s a will, there’s a way(意志があれば道は開ける)
【類義語】
・一念岩をも徹す(いちねんいわをもとおす)
・思う念力岩をも通す(おもうねんりきいわをもとおす)
・蟻の思いも天に届く(ありのおもいもてんにとどく)
・至誠天に通ず(しせいてんにつうず)
「一念天に通ず」の語源・由来
「一念天に通ず」は、「一念」と「天に通ず」という考え方が結びついたことわざです。「一念」は、ひたすら心に深く思いこむこと、またその心を指します。古くから仏教の言葉としても使われ、非常に短い時間や、一度の念仏、仏を信じる心などを表す意味も重ねて持っていました。
「一念」という言葉そのものは、平安時代の『源氏物語』(1001〜1014年ごろ成立)にも用例があり、のちには井原西鶴『西鶴諸国はなし』(1685年・江戸時代前期、井原西鶴著)にも「一念かけし」という形が出てきます。ここでは、ただ一瞬の思いではなく、深く心をこめて思う力、執心する心の動きとして使われています。
ことわざとしての「一念天に通ず」は、江戸時代中期のことわざ集『本朝俚諺(ほんちょうりげん)』(1715年、井澤長秀がまとめた書物)に古い用例が伝わります。この書物は、正徳5年、つまり1715年に刊行されたことわざ・俗語の集成で、書名の読みも「ホンチョウ リゲン」と示されています。
この段階での意味は、物事に専心すれば、その真心が天に通じ、どのようなことでも成し遂げられるというものです。ここでいう「天」は、空そのものだけでなく、人の力を超えた大きなはたらきや、願いを受け止める存在を表す言い方として受け取ると分かりやすいです。
同じ方向の表現に「至誠天に通ず」があります。「至誠」はきわめて誠実な心を表し、真心をもって事に当たれば好結果がもたらされるという意味です。「一念天に通ず」も、ただ願うだけの言葉ではなく、ひたむきな心と真剣な行動が、やがてよい結果を引き寄せるという考え方を表しています。
また、「一念岩をも徹す」や「石に立つ矢」のように、強い思いが不可能に見えることを可能にするという表現も、近い考えを伝えています。「一念岩をも徹す」は、中国の古い話に由来し、精神を集中していれば不可能なことも可能になるというたとえです。こうした表現と比べると、「一念天に通ず」は、強い心が「天」に届くという、より広く穏やかな言い方で、努力する人を励ますことわざとして定着しました。
現在では、受験、習い事、研究、仕事、競技など、長い努力を必要とする場面で使われます。大切なのは、成功を楽に約束する言葉としてではなく、目標を本気で思い続け、力を尽くす人を支える言葉として受け取ることです。
「一念天に通ず」の使い方




「一念天に通ず」の例文
- 一念天に通ずと信じ、彼は苦手な英語の発音練習を一年間続けた。
- 一念天に通ずという言葉を胸に、母は資格試験の勉強を仕事のあともやめなかった。
- 小さな研究でも、一念天に通ずの思いで観察を重ねれば、新しい発見につながることがある。
- 大会で負けたあとも、選手たちは一念天に通ずと考え、基礎練習からやり直した。
- 店を立て直すため、店主は一念天に通ずの覚悟で毎日客の声を聞き続けた。
- 一念天に通ずというように、強い願いと地道な努力が、やがて大きな結果を生む。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・井澤長秀輯『本朝俚諺』1715年。























