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【一淵には両鮫ならず】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・対義語・英語)

一淵には両鮫ならず

【故事成語】
一淵には両鮫ならず

【読み方】
いちえんにはりょうこうならず

【意味】
一つの場所や組織に、強い実力者や指導者が二人いると、争いが起こりやすく、共存しにくいということ。

ことわざ博士
「一淵には両鮫ならず」は、力の強い者が同じ場で主導権を争うと、物事がまとまりにくくなることを表しているよ。
助手ねこ
組織、集団、勝負の場などで、二人の中心人物が互いに譲らず衝突する場面に用いるニャン。

【英語】
・The boat that has two captains sinks(二人の船長がいる船は沈む、指導者が二人いるとまとまりにくいこと)
・Too many cooks spoil the broth(関わる人・指図する人が多すぎると物事がうまくいかないこと)

【類義語】
・両雄並び立たず(りょうゆうならびたたず)
・国に二君なし(くにににくんなし)
・天に二日無し(てんににじつなし)

【対義語】
・呉越同舟(ごえつどうしゅう)
・和して同ぜず(わしてどうぜず)

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「一淵には両鮫ならず」の故事

故事成語を深掘り

この故事成語のもとには、中国古典に伝わる「一淵不兩蛟」という言い方があります。「淵」は深い水のたまりを指し、「蛟」は水中にすむ竜のような想像上の生き物を指します。水の深い一つの場所に、二匹の強い蛟が同時にすむことはできない、というたとえから、二人の強者は同じ場で並び立ちにくいという意味になりました。

『文子』巻六には、「一淵不兩蛟,一雌不二雄,一即定,兩即爭」とあります。これは、「一つの淵に二匹の蛟はいない。一つであれば定まり、二つであれば争いが起こる」という意味です。ここでは、物事が安定するには中心がむやみに二つに分かれてはならない、という考えが、蛟のたとえによって示されています。

この表現は、前漢(ぜんかん)の思想書『淮南子(えなんじ)』(紀元前139年成立、劉安編)にも関わります。『淮南子』は、淮南王の劉安が多くの学者を集めて編んだ百科全書的な思想書で、政治・自然・人間のあり方を幅広く説く書物です。

『淮南子』「説山訓」には、「一淵不兩蛟,水定則清正」という形で伝わる一節があります。ここでは、一つの淵に二匹の蛟はすまないというたとえと、水が静まれば清く正しくなるという考えが結びついています。力の中心が二つに割れて争うと場が乱れ、中心が定まれば場が落ち着く、という発想がうかがえます。

日本語の表記では、対象語に「鮫」の字が使われています。ただし、この「鮫」は海にいるサメだけを指すものではありません。古い漢字の用法では、「鮫」は「蛟」と通じ、みずち、すなわち竜のような水中の霊的な生き物を表すことがあります。そのため、「両鮫」は「二匹のサメ」というより、「二匹の蛟・水中の竜」の意味を受けた表記として理解するのが自然です。

後の中国のことわざ集『古今諺』にも、「一淵不兩蛟(又曰:“一棲不兩雄。”又曰:“兩雄不並棲。”)」とあります。ここでは、「一つのすみかに二人の雄は並ばない」「二人の雄は同じ所に並びすまない」という別の言い方も添えられています。蛟のたとえが、強い者同士の共存しにくさを表す一般的なことわざとして受け継がれていたことが分かります。

この故事成語は、ただ「指導者は一人でなければならない」とだけ教える言葉ではありません。二人の力ある人物が、同じ権限をもって互いに譲らなければ、周囲はどちらに従えばよいか分からなくなり、集団全体が乱れやすいという経験を述べています。そこには、力の強い者ほど、自分の立場だけでなく場全体の秩序を考える必要がある、という戒めも含まれています。

現在の「一淵には両鮫ならず」は、会社、学校、競技、政治、家族内の役割など、中心になる人物が二人いて衝突する場面に用いられます。古い言い方ではありますが、集団をまとめるときには、力のある人をただ並べるだけでなく、役割と責任をはっきりさせることが大切だという教えとして読むことができます。

「一淵には両鮫ならず」の使い方

健太
学級新聞の係で、編集長をぼくと大翔くんの二人でやることになったけれど、見出しの決め方で毎回意見がぶつかるんだ。
ともこ
二人とも熱心なのはよいけれど、同じ決定権を持つと、周りの人が困ってしまうね。
健太
先生が、一淵には両鮫ならずだから、役割を分けてみようって言ってくれたよ。ぼくは記事の順番、大翔くんは写真の配置を担当することになった。
ともこ
それなら力を争わずに生かせるね!
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「一淵には両鮫ならず」の例文

例文
  • 二人の監督が同時に指示を出したため、選手たちは混乱し、一淵には両鮫ならずの状態になった。
  • 同じ部署に強い権限を持つ部長が二人いると、一淵には両鮫ならずで方針がまとまりにくい。
  • 合唱部では二人の中心人物が選曲をめぐって対立し、一淵には両鮫ならずという言葉が当てはまった。
  • 家族会議でも、父と兄がどちらも決定権を握ろうとすると、一淵には両鮫ならずで話が進まない。
  • 新しい店の運営では、一淵には両鮫ならずを避けるため、経営担当と料理担当をはっきり分けた。
  • 一淵には両鮫ならずというように、実力者が二人いる場合ほど、互いの役割を明確にする必要がある。

主な参考文献
・白川静『字通 普及版』平凡社、2014年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・劉安編『淮南子』紀元前139年。
・『文子』。
・楊慎編『古今諺』。
・Cambridge University Press『Cambridge Dictionary』。





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