【一日作さざれば一日食らわず】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・対義語・英語)

一日作さざれば一日食らわず

【故事成語】
一日作さざれば一日食らわず

【読み方】
いちじつなさざればいちじつくらわず

【意味】
一日働かなかったなら、その日は食べないという自戒の言葉。日々の勤労や務めを、食べることと切り離せない大切な修行として受け止める意味。

【出典】
『五灯会元(五燈會元)』巻三「百丈懐海禅師」。

ことわざ博士
「一日作さざれば一日食らわず」は、他人を責める言葉ではなく、自分の務めを果たそうとする心構えを表しているよ。
助手ねこ
作務や仕事、毎日の役割をおろそかにせず、自分を律したい場面で用いるニャン。

【英語】
・He who does not work shall not eat(働かない者は食べてはならない)

【類義語】
・働かざる者食うべからず(はたらかざるものくうべからず)
・蒔かぬ種は生えぬ(まかぬたねははえぬ)

【対義語】
・濡れ手で粟(ぬれてであわ)
・棚から牡丹餅(たなからぼたもち)

「一日作さざれば一日食らわず」の故事

故事成語を深掘り

この故事成語は、中国唐代の禅僧・百丈懐海(ひゃくじょうえかい)にまつわる言葉です。百丈懐海は福州の人で、馬祖道一の禅を受け、百丈山で禅院を整えた人物として伝わります。生没年については、「720か749-814」という幅のある伝え方と、「749―814」という伝え方があります。

百丈懐海の大きな特色は、禅の修行生活の中に、掃除や農作業などの労働を重く位置づけたことです。禅寺で僧が行う労務は作務(さむ)といい、掃除などの労務も修行の一つとみなします。百丈は、生産労働を肯定し、集団生活の基礎として「普請」と呼び、禅院の規則づくりにも深く関わった人物として伝わります。

この言葉のもととなる話は、『五燈會元(ごとうえげん)』(1252年成立、南宋時代の禅宗史書)巻第三の「百丈懐海禅師」の条に出てきます。そこには、百丈が作務や労働にあたるとき、いつも人々より先に働いたとあります。年老いた師を気づかった係の者が、ひそかに道具をしまい、休ませようとしました。

百丈は道具を探しましたが、見つかりませんでした。原文には「吾無德、爭合勞於人」とあり、自分には徳がないのに、どうして人に働かせてよいだろうか、という意味の言葉が記されています。そして、道具が見つからないまま、食事も忘れるほどであったため、「一日不作、一日不食」という言葉が世に広まったとあります。

この故事の中心は、「働かない者を罰する」という考えではありません。百丈自身が、自分の務めを果たしてこそ食事をいただく資格がある、と自らを律したところに大切な意味があります。そのため、「一日作さざれば一日食らわず」は、人を責める命令ではなく、毎日の行いを自分で正すための言葉として受け取るのが自然です。

日本でも、この言葉は、禅の世界で早くから戒めとして受け取られてきました。たとえば、室町時代の詩文集『旱霖集(かんりんしゅう)』(1422年)には、「毎思二古人一日不レ作、一日不レ食之戒一也而慄々焉」という形で、古人の「一日作さざれば、一日食らわず」という戒めを思い、身の引き締まる思いをする、という趣旨の用例が出ています。

表記としては、漢文の形では「一日不作、一日不食」と書かれ、日本語では「一日作さざれば一日食らわず」「一日作さずんば一日食わず」などの形で言い表されます。「作」は、ここでは物を作るだけでなく、作務をする、務めを果たすという意味に近く働きます。こうしてこの故事成語は、禅寺での作務の重みを伝える言葉から、現在では、日々の仕事、役割、学びをおろそかにしないための自戒の言葉として使われています。

「一日作さざれば一日食らわず」の使い方

健太
今日の畑の水やり当番を忘れていたよ。もう帰りたいけれど、トマトの苗がしおれているね。
ともこ
一日作さざれば一日食らわずの気持ちで、先に水をあげようよ!給食を抜くという意味じゃなくて、務めをすませてから気持ちよく帰ろうということだよ。
健太
そうだね。自分の当番をしないままでは、今日一日をちゃんと過ごした気がしないよ。
ともこ
水やりが終わったら、明日の観察メモも見やすくなるね。

「一日作さざれば一日食らわず」の例文

例文
  • 一日作さざれば一日食らわずという思いで、祖父は毎朝、畑の手入れを欠かさなかった。
  • 掃除当番を人任せにしない態度は、一日作さざれば一日食らわずという言葉に通じる。
  • 一日作さざれば一日食らわずを座右の戒めとして、彼は小さな仕事にも手を抜かなかった。
  • 店の主人は、一日作さざれば一日食らわずの心で、開店前の準備を毎日丁寧に行った。
  • 一日作さざれば一日食らわずという故事成語は、働くことを自分の務めとして受け止める大切さを示す。
  • 部活動の道具を片づけるときも、一日作さざれば一日食らわずの心で、最後まで自分の役割を果たした。

主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・平凡社編『改訂新版 世界大百科事典』平凡社、2007年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・普済撰『五燈會元』1252年。
・夢巌祖応『旱霖集』1422年。
・『新約聖書』「テサロニケの信徒への手紙二」。




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